シャトウ ルージュ

著者:渡辺淳一
出版:文藝春秋
初版:2001.10.30.
紹介:一流大学の医学部を出た「前途有望な青年外科医」の僕と、創業130年の老舗の令嬢。僕たちは傍目からも似合いな理想のカップルだった。しかし妻の想像以上の我が儘と気位の高さで、僕が思い描いていた結婚生活とはほど遠いものだった。
───男が結婚するのは、求めたらいつでも受け入れてくれる妻という安定した性の対象を得るためで、その妻が容易に受け入れてくれないのでは、結婚した意味がないことになる────
だから僕は膨大な金をかけて、彼女を調教してもらうことにしたのだ。彼女が性に目覚めセックスに溺れる淫らな女になり、僕を受け入れてくれる日を夢見て。、
コメント:渡辺淳一は、「失楽園」でちょっとめげて
「遠き落日」で持ち直したんだけど、今回又吹っ飛びました。
どうも、現在の作家の姿が思い浮かんで、それとこの作品がうまくなじまない。あ!でも主人公は医師だからその点、自分自身を客観的な目で見ようとしている記述はおもしろかった。
でもねぇ、何だってこんなに自分勝手な発想を主人公が思いつくのか
そういう男性という性にほとほと呆れる。だから、結末はとっても納得しました。

プラトニック・セックス

著者:飯島 愛
出版:小学館
初版:2000.11.20.
紹介:話題になった飯島愛の暴露本。
一見一家団欒・厳しい父と理想の妻を演じる母は、「できのいい子ども」であることを要求する。家を飛び出した彼女のいく先は・・・。
コメント:先日読んだ〈「家族」という名の孤独〉という本によれば、
飯島愛さんは見事に両親の思い通りの「よい子」の期待から逃げ出す事のできた、勇気ある女の子といえるかもしれない。
確かに彼女のたどった軌跡は、娘を持つ母としてはとんでもないものだ。けれど、彼女なりの基準があり、多分、自分自身と向かい合うことができたのではないだろうか。
両親の思い通りのよい子にはなれなかったけれど・・・
ちなみに、私はけっこう昔からなんとなく愛ちゃんが好きです。あの、イイコぶらないところが(笑)

「家族」という名の孤独

著者:斎藤学
出版:講談社
初版:1995.07.03.
紹介:①「家族する」女性たち②「愛しすぎる」女たち③「殴る」男たちが求めているもの④「健全な家族」という罠⑤母と娘の「危うい関係」⑥「子供を愛せない」親たち⑦「登校拒否すらできない」子どもたち⑧「家族の仮面」がはがれるとき⑨「もう一人の自分」が見えるとき
コメント:読むのにとても時間がかかりました。
行きつ戻りつして、結局なんなんだ?ってかんじでまた最初の3分の1を読み直したりしています。
DVとか、虐待とか・・・そうなりたくないと思ってもまた次の世代に・・・
それだけでなく、そういう相手を選びたくないと思っているのに自然にそういう相手を求めてしまう。どこかでそういう鎖を断ち切ることができないと・・・
イヤ、その鎖を断ち切ることが出きると、信じなくては未来が広がって行かないじゃないか・・。
果たして自分も無自覚に共依存を持っているのではないか?
問題があるのかないのか??「偽りの自己」と「真の自己」
家族って何なのか?
「家族に包まれることは恵みだが、家族の温もりに酔うのは危険である」
「家族の中で人は孤独を知り、他人を求める自己を知る」
母でもあり、妻でもあり、その前に一人の人間である事が大切ということなのだろうか?私も、おんぶお化けにならないように、自分自信と向き合うように心がけよう。

姫君

著者:山田詠美
出版:文藝春秋
初版:2001.06.30.
紹介:*母が首をつったのを見つけた時、ぼくが、まだ五歳だったのは幸せなことだった。ぼくはあの一瞬母に必要とされなかったのだ。ぼくは、自分が一番好き。(MENU)
*一人きりになりたくないから、二人きりにもなりたくない。もし、彼が死ぬようなことがあっても、私が一人きりになったあとでなら平気な気がします。(検温)
*わたしは欲望。だけどわたしの主人は醜女・妄想・純愛、わたしを満たすことはない。永遠に鬱積した感情。独りよがりの愛情は、一瞬のうちに憎しみに変化する。(フェイスタ)
*いつだって操るのはこちら。わたしの玩具は主導権。そう信じていたのに、いつしか立場は逆転し始めて・・・・気づいてはいけなかったこと。わたしはひとところに長くとどまりすぎた。(姫君)
*馬鹿な結婚の結果生まれた私。私は両親の重荷なのか?夢を追いかけていた・・・だけど、大切にするのは最後に残ったものだけじゃないのかな?(シャンプー)
コメント:「姫君」というタイトルに惹かれて手にした本。
一度サラリと読んだだけでは、なかなか???なものも多いのでした。
でも「姫君」は、自分の気持ちに素直になることが怖い人間の感情が表れていて、なかなか興味深い。しかし・・・ラストが悲しすぎるわ。

華胥の幽夢(十二国記)

著者:小野不由美
出版:講談社文庫
初版:2001.07.15.
紹介:戴国王驍宗の命で漣国へ赴いた泰麒を待っていたのは。「冬栄」
芳国王仲韃への大逆の張本人月渓に慶国王陽子から届けられた親書とは。「乗月」
才国の宝重華胥華朶に託された理想の王国への憧憬の行方は。「華胥」
そして、陽子、楽俊、「書簡」
十二国はいま―――。「帰山」
あなたの心をふるわせ胸を熱くする十二国記珠玉の短編集。(裏表紙より引用)
コメント:今までわからなかった、十二国の様子がわかる短編集。
読んでいるうちに、今の政治や社会情勢とも重なってきて、とても興味深く読めました。

紫のアリス

著者:柴田よしき
出版:廣済堂
初版:1998.07.15.
紹介:退職金で購入したマンションに越してきた紗季。身辺にあらわれる奇妙なアリスの仲間たち・・・幻覚?おせっかいなマンションの住人たち。中学校の劇で演じられた「不思議の国のアリス」プールで死んだ友人。とぎれる記憶。
不思議の国のアリスをモチーフに、記憶の底から浮かび上がる奇妙な人間関係。最後のお茶会に招かれたのは・・・?
コメント:柴田よしきの珍しいジャンルの作品
乃南アサ・加納朋子の作風をちょっと思い浮かべました。
伝奇小説「炎都」「禍都」「遥都」シリーズも異色だったけど、また違う世界が見えて楽しかったです。

フォー・ユア・プレジャー

著者:柴田よしき
出版:講談社
初版:2000.08.25.
紹介:「フォー・ディア・ライフ」の続編
行きずりの入れ墨の男を捜す依頼人。妻に逃げられ、幼い娘を「にこにこ園」に預ける男。姿を消したカンパーニュのマダム。薬のパーティで出会ったストーカー。死体が二つ・・・。命をかけて、大切なものを守る元刑事の私立探偵&園長花咲真一郎の、「走れメロス!」
コメント:ウーン、いいですね。バラバラに思える人々が、思わぬところに接点があり、複雑に絡み合っていく。無認可保育所の子供たちと暴力団という、まったく相反する世界の両方で生きている「ハナ」そのギャップの大きさゆえに、男の優しさが、胸にしみます。
「RIKOシリーズ」にも登場する山内も絶妙のキャラクターで、このつづきが楽しみです。

ぼくとアナン

著者:梓河人
出版:角川書店
初版:2001.12.25.
紹介:「アナン」を書き終わって、たどりついたゴール。とても幸せなのに、何かやり残した感じ・・・それは、子供に伝えたいのに、子供には難しすぎると言うこと。
そこで、子供に伝えるために、アナンを書き直すことにしました。
こんどはねこの「バケツ」といっしょに、心の旅にでました。それは思いのほか長い旅になりました。
コメント:「アナン」は去年私が読んだ本の中の「ぴかいち」だった。それが子供向けに書きなおわされたと聞いて、再びアナンに会えることがとてもうれしかった。
手にした本は、絵本でもなく、童話と言うには立派すぎて、これでも子供向きなの?という印象だったけれど、ねこの「バケツ」の視点からかかれているので、とてもわかりやすいし、ことばもやさしい。
人々の悲しみを吸い取っていくアナン。人々を幸せにする、モザイク。この世に生まれて、やがて旅立っていくタマシイ。アナンに会えて、よかったね。

フォー・ディア・ライフ

著者:柴田よしき
出版:講談社
初版:1998.04.30.
紹介:新宿一丁目にある無認可保育園の園長は子供たちの父親代わりの元刑事だった。
経営難が続く保育園の影で、私立探偵の裏家業。家出人の捜索から暴力団がらみの依頼までこなす。家を飛び出した中学生、姿を消した探偵、暴力団に追われるチンピラ。一件無関係そうに見えるものがその裏で何本もの糸が交錯しながらつながっている。思いがけない彼らの接点は?それぞれの胸に秘めた思いが、複雑にからみつく、その中に埋もれた真実は・・・?
偽善といわれようとも、保育園はつぶさない
「早く戻ってね。そう、俺は必要とされている。そして俺にも、子供たちが必要だった。」
コメント:「RIKO」シリーズと微妙に重なる。
暴力団と警察・・・そして元刑事と、役者はそろった。それぞれの立場と利害。
女性が書いたとは思えないけど、細かい心の動きや目の付け所がやっぱり、柴田よしきだなと感じさせる。ただ事件を追う推理小説じゃない、元刑事の生き様が、まるでそこに息づいているように描かれている。
そこには、もう一度読み返したいと思うほど、気になる世界が広がっていた。

ジークⅡ

著者:斉藤洋
出版:偕成社
初版:2001.03.
紹介:金の瞳、銀の瞳を持つジークは、故郷ジルバニア国を離れ、
親友バルやサランと共に海をわたり、ゴルドニア国へと向かう。
隣国ブラウニアに攻めこまれ、ゴルドニアは窮地におちていっていた。(表紙扉より引用)
コメント:「ジーク」を読んでから久しく、内容をうろ覚えなので、まず再読の後「ジークⅡ」を読んだ。
金と銀の目を持つ混血のジーク。同じような境遇のものたちはどちらの国に入っても、異国人扱いをされがちだ。その様子は、今の日本における同じような境遇の人々にも重なるところがあり、自ら望んで「スパイ」行為をするものも多い。
目の色、言葉だけではどちらの見方なのかわからず、お互いが疑心暗鬼になっていく。
人の心の中にある、憎しみが魔物を導くのかもしれない。
魔物・・・理解できないからと言って、それが存在しないわけではないのだ。