彼女について知ることのすべて

著者:佐藤正午
出版:集英社
初版:1995.07.25.
紹介:その夜わたしは人を殺しに車を走らせていた。
小学校の教師である私は、多分結婚するであろう人がいたが
何故か、別の女に心ひかれてしまう。しかし彼女には・・・・
そして8年後。
コメント:ウーム。コメントはないなぁ。
彼女にどうしようもなく惹かれて、でも彼女には逃げ出すことのできない男がいて
結局、なんにも出来ずに、8年の歳月が過ぎてしまう。
頼まれて教え子をあずかり、学校の先生をしてはいるが、その行動も何とも中途半端だし・・・
何とも、決断力に欠けるその場に流されやすい男の姿に、イライラしちゃうわ。
自分の都合のいいように流されているんだもの・・・おい!しっかりしろ。
まあそれに比べれば彼女はしたたかに生きてるなぁ。

個人教授

著者:佐藤正午
出版:角川書店
初版:1988.12.05.
紹介:新聞記者を辞め、病院理事長夫人との契約で僕は部屋を与えられ、月2回の密会をする。教授は本当の教授ではなく、酒場での教授だ。不思議な探偵に後を付けられ、一度しか会ったことのない女が自分の子供を産むという。
転勤してきた街で、ずっとその街で暮らしていく人々と、流れてきたもの。
そして、また街を捨てて戻っていく。
コメント:なんて言ったらいいのでしょう?「個人教授」からイメージしていた内容とは全然違っていた。
男の身勝手さと、甘い欲と、現実から一時逃避したいという、何とも言えない話だと思ったのは私の誤解かしら?結局自分は1つも傷つかないのだし・・・。
まあ、まわりの誰も傷ついてはいないから、それはそれでいいのかもしれないけど、だから余計に都合のいい話だな・・・なんて思ってしまった。

著者:佐藤正午
出版:角川春樹事務所
初版:1998.11.08.
紹介:ある日、知らない男からかかってきた電話。彼は同級生だという。そして、私だけに読んで欲しいと、たくしたフロッピィの中身は・・・
1980年9月6日。その日起きた電車事故によって分けられた運命。
もしも、あの時、彼女を助けられていたら・・・
その一瞬に戻ることができたとして、そこから始まる人生は、また違った運命に導かれる。本当の自分の人生は?やり直すことが果たして幸せなのか?
彼はどうしているのか?そして、私の人生は?
コメント:自転車事故の一瞬を分岐点として、まるでYの字のように分岐していく運命。
未来がわかるからといって、思い通りの人生がやってくるわけではない、「もしもあのとき・・・」と昔を思うことは誰にもあることだが、人生はやり直してもやっぱり上手く行かないものなのかもしれない。

カミングアウト

著者:島田和子
出版:新日本出版社
初版:2000.02.20.
紹介:美奈が新しく引っ越して来た町にあったのは「全生園」というハンセン病療養所だった。そこで知り合った、森山さんが過ごしてきた人生は、ハンセン病と、病気への偏見さらに「ライ予防法」によって、自由を奪われてきた。
森山さんと話すうちに、今まで知らなかったハンセン病や、それを取り巻く社会のことに驚き、また、ハンセン病であることを公開して活動する姿を応援するようになる。
コメント:ハンセン病、ライ病という病名は聞いたことがあっても、実はよく知らなかった。
今は治療によって治る病気だというのに、「ライ予防法」によって、不当に隔離拘束され、差別され人々の偏見に耐えてきた患者達。
ひとりの少女が、何の先入観もなく元ハンセン病患者と交流を深めていくうちに、
今まで知らなかったハンセン病や元患者達の受けた不当な現実を知る。
細かい事実も大切だが、ハンセン病で苦しんできた人々の思いが、心に伝わってくるこの本は、児童書ではあるけれども、大人にもぜひ読んでほしいと思う本でした。

若者と現代宗教

著者:井上順孝
出版:ちくま新書
初版:1999.12.20.
紹介:「宗教ブーム」といわれてひさしいが、それは真実ではない。宗教を「アブナイ」ものとして忌避する無知な警戒心と、摩訶不思議な世界へのやまれぬ好奇心が、同時に強まっているのが現状なのだ。伝統と歴史の価値が失われていく現代、われわれを取り巻く精神世界のフレームワークは、どのように変わっていくのか。オウム真理教やインタネット上のバーチャル宗教など、新興宗教が自由競争を繰り広げて混迷する、宗教の最前線と未来を見据える。(表紙扉より引用)
コメント:現代社会における、新興宗教をめぐる学術的な調査見解である。
インターネットやTVなどのメディアを通して、霊・オカルト・超常現象など、現在はさまざまな情報が私たちの身のまわりにあふれている。そういうものへの興味や関心が高いと言うことは、実は宗教にひかれる部分が多少あるみたいだ。
しかし、宗教と一口に言っても、既存のものから新しいものまで、その発生する国や土地によって本当に多くの宗教があるものだ。

洗脳の楽園-ヤマギシ会という悲劇-

著者:米本和広
出版:洋泉社
初版:1997.12.24.
紹介:ヤマギシ会とはどういう団体なのか?自然に恵まれた野菜・卵の販売から「ヤマギシの野菜は無農薬無添加です」というプラスイメージを受ける。実際は、農薬も添加物も使われているという事実を知らずに、会員となり、「無所有一体社会」という夢のユートピアを思い描く。ヤマギシ村の村民となるには、全財産を村に放出しなければならないし、その前には一週間の「特講」一種の「洗脳」を受けることになる。
また、会員たちは子どもたちを「ヤマギシ学園」に入れることが、子供の幸福につながると信じているが、その学園の実態は?今まで小耳しかはさんだことのなかった「ヤマギシ」の概要が、ここに明らかになる。
コメント:「ヤマギシ学園」ってなんだろう?しばしば教育のサイトで話題になるので気になっていた言葉。世の中には知らないことがたくさんある。そして恐ろしいのは、私にとって、「無農薬無添加の野菜や卵」はとても魅力的に感じるということだ。そして、都会に暮らす人にとっては、子供に「自然と触れあう」体験をさせるという魅力的な誘い。
夏休みに企画されているという「楽園村」の募集パンフレットは、私も一度手にしたことがある。ああ・・・知らないと言うことは何と恐ろしいことなんだろう。背筋が寒くなる思いです。

トムは真夜中の庭で

著者:フィリパ・ピアス  高杉一郎・訳
出版:岩波少年文庫
初版:1975.11.26.
紹介:友達もなく退屈しきっていたトムは、真夜中に古時計が13も時を打つのを聞き、昼間はなかったはずの庭園に誘い出されて、ヴィクトリア時代の不思議な少女と友達になります。歴史と幻想が織りなす傑作ファンタジー。(表紙扉より引用)
コメント:その扉を開けると、昼間はなかったはずの、広い庭園にでる。時間は微妙に交錯するが、トムの姿を見ることができるのは少女だけだった。
秘密の扉や、向こう側の世界に行けるのは、何故か子供の特権なのね。不思議に思っていたことが、思いもかけない形で現在とつながっていることが、つまり少女との再会がそれはそれでとてもよかった。

盗聴

著者:真保裕一
出版:講談社文庫
初版:1997.05.15.
紹介:「な、何の真似だね、それは・・・。おい、気は確かか・・・」老人の声がうわずり、椅子が激しくきしむような音が上がった。違法電波から聞こえてきた生々しい、“殺人現場”の音。「狩り」に出た盗聴器ハンターが都会の夜でとらえられたものとは?(裏表紙より引用)
コメント:短編集・「盗聴」は面白かったけど、せっかくならもっと奥が深く話が膨らんでいったら面白いと思う。なんか、結末がどんでん返しで、「え?それで終わりなの?」という感じがする。それにしても、こう言うのを読むと、家の中にも盗聴器が仕掛けられてるんじゃないかと、ちょっと不安になったりする。

お笑い創価学会信じるものは救われない

著者:佐高信・テリー伊藤
出版:光文社
初版:2000.07.30.
紹介:創価学会の生まれた歴史的背景から、過去の問題点、現在かかえる問題など、
批判的観点からの対談集。過去の資料をもとにわかりやすくかかれている。
コメント:「宗教というのは、心の問題ですよね。ひとりひとりの心に信じる気持ちが生まれることで、生き方が豊かになるとか、生きる姿勢が強くなるとか・・・・・・いろいろ言い方はあると思うけど、すべて心の在り方がテーマです。言い方を変えると、個人個人の問題だ。ほかの人がどう思おうと関係ない。個人の生き方に関わるのが宗教です。」佐高氏のこの見方は私の考えていることに近い。