0をつなぐ

著者:原田宗典
出版:新潮文庫
初版:1993.06.25.
紹介:誰にも見られているはずがないのに常に視線が注がれているような気がしたことはないだろうか。あるいは海水浴場のスピーカーがしつこく同じ人を呼びだしているとき、落ち着かない気分になることはないだろうか───ごくありふれた日常生活の風景にふと顔をのぞかせる不安や違和感を題材に、都市に住む人間の乾いた心理を映す13編。あなたもよく感じている“奇妙な感じ”を描く短編集。(裏表紙より引用)
コメント:奇妙な・・・ちょっと恐ろしい、そして不気味なお話が・・・だけどちょっと哀しい思いもあったりして。「花嫁の父の事情」「姿のない尋ね人」がちょっと切なくていいかなぁ。

きらきら星をあげよう

著者:山本文緒
出版:集英社文庫
初版:1999.03.25.
紹介:小説家の父の都合で、いやいやながらも東京の高校へ転校することになった吉田日和。ちょっぴりユウウツな気分で登校してみれば、新しいクラスには妙なカッコのやつばかり。見かけはハデだけど、付き合ってみれば、みんなけっこういい奴で、これなら東京暮らしもわるくはない。ところが突然、母が家出!あわてる父は捜索に乗りだし、東京に残されたのは日和ひとり。いったいこれからどーなるッ!?(裏表紙より引用)
コメント:山本文緒の、デビュー直後のコバルト作品。数年前に読んで、けっこう気に入っていたので再読です。最近の作品とはもちろん違うけれど、私はこの頃の作品が好きです。
「きらきら星をあげよう」と続編の「おまえがパラダイス」は個人的にかなり好きです。

いちばん初めにあった海

著者:加納朋子
出版:角川書店
初版:1996.08.30.
紹介:ワンルームのアパートで一人暮らしをしていた堀井千波は、周囲の騒音に嫌気がさし、引っ越しの準備を始めた。その最中に見つけた一冊の本『いちばん初めにあった海』。読んだ覚えのない本のページをめくると、その間から未開封の手紙が・・・。
差出人は〈YUKI〉。
だが、千波はこの人物に全く心当たりがない。しかも開封すると、そこには“あなたのことが好きです”とか、“私も人を殺したことがある”という謎めいた内容が書かれていた。一体、〈YUKI〉とは誰なのか?何故、ふと目を惹いたこの本に手紙がはさまれていたのか?千波の過去の記憶を巡る旅が始まった───。
心に深い傷を負った二人の女性が、かけがえのない絆によって再生していく姿を描いた、、胸一杯にひろがるぬくもりあふれたミステリー。(表紙扉より引用)
コメント:見覚えのない本・はさんであった手紙。知らないうちに封印してしまった、過去の記憶・・・。失った言葉。今必要なのは、現実をきちんと受け止めること。
北村薫の「時」のシリーズに雰囲気が似てました。
「化石の樹」
白い花を咲かせる金木犀の古木。幹の大きなうろにはコンクリートが流し込まれて、瀕死の状態。そのコンクリートの中からでてきた、子供の宝物と、ノート。そのノートに書かれたお話は・・・。金木犀が結ぶ縁。ウーン、ちょっとロマンチックねぇ。

十九、二十

著者:原田宗典
出版:新潮文庫
初版:1992.11.25.
紹介:僕は今十九歳で、あと数週間で二十歳になる───父が借金を作った。ガールフレンドにはフラれた。せめて帰省の電車賃だけでも稼ごうとバイトを探したが、見つかったのはエロ本専門の出版社だった。岡山から東京に出てきて暮らす大学生、山崎の十代最後の夏は実にさえない夏だった。大人の入り口で父の挫折を目にし、とまどう青年の宙ぶらりんで曖昧な時を描く青春小説。(裏表紙より引用)
コメント:これは高校生じゃなくて、貧乏大学生の話ね。あやしげなポルノ雑誌を扱うバイト先の不思議な人間関係と、職を失ってやる気をなくした父親との関わり。どうも様にならない、十九歳。こういう親を待っちゃうと・・・辛いなぁ。切り捨てるわけにもいかないし。

ぼくは勉強ができない

著者:山田詠美
出版:新潮文庫
初版:1996.03.01.
紹介:ぼくは確かに成績が悪いよ。でも、勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいあると思うんだ───。17歳の時田秀美君は、サッカー好きの高校生。勉強はできないが、女性にはよくもてる。ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。
母親と祖父は秀美に理解があるけれど、学校はどこか居心地が悪いのだ。この窮屈さはいったい何なんだ!凛々しい秀美が活躍する元気溌剌な高校生小説。(表紙裏より引用)
コメント:父親がイナイというだけで、可哀想だったり、問題児扱いされてきた秀美君。そんな世間に対抗するべく、無意識のうちにつっぱってきた自分に気付いて、ハッとしたりする。年上の彼女にも妙にすれていなくて、実は、もっとはすっぱな感じを想像していたのですが、意外とピュアでよかったなぁ・・・
「放課後の音符」とともに、高校生にお薦めの一冊だわ。

遠い約束

著者:光原百合
出版:創元推理文庫
初版:2001.03.30.
紹介:駅からキャンパスまでの通学途上にあるミステリの始祖に関係した名前の喫茶店で、毎週土曜2時から例会───。謎かけ風のポスターに導かれて浪速大学ミステリ研究会の一員となった吉野桜子。三者三様の個性を誇る先輩たちとの出会い、新刊の品定めや読書会をする例会、合宿、関ミス連、遺書捜し・・・多事多端なキャンパスライフを謳歌する桜子が語り手を務める、文庫オリジナル作品集。(裏表紙より引用)
コメント:ミステリー好きな大叔父との約束を胸に過ごした10年。彼が残した遺書のありかと、その内容は・・・「遠い約束」は縦の糸。ミステリ研の先輩たちの持ち味のある個性がまた楽しい。
ちょっと北村薫風ではあるが、シリーズ化したら面白いだろうな。

きみのためにできること

著者:村山由佳
出版:集英社
初版:1996.11.30.
紹介:夢は映像にまつわる「音響」にこだわることだった。専門学校を卒業して、カメラマンについて音を拾う日々。夢は少しずつ近づいているのか?
美しい女優の表向きからは見えない、ふとした寂しげな表情・・・
高校時代から付き合っている恋人とのメール通信。僕にはどれも大切な物だった。
仕事のチャンス!恋人の家の事情。不確定で将来が見えない・・・不安定な自分にとって、一番大切な物は?迷う僕。
コメント:表紙の絵がカワイイの、ブルーで、ネコとおさなかなが水面でキスしてるの(笑)
高校生の頃から付き合って5年目の二人、それぞれの夢や家庭の事情があって、でもパソコン通信でつながっている。二人の気持ちは通じていたはずなのに・・・・メールでは、お互いを抱きしめることは出来ない。うーん、なんかよかった!

北里マドンナ

著者:氷室冴子
出版:集英社
初版:1988.11.30.
紹介:僕となぎさと多恵子と野枝。幼なじみの4人は中学時代は一緒に勉強会なんかしたりして、けっこう仲良くやっていたんだ。だけど、なぎさのガールフレンドの多恵子のことが実はずっと好きだった。高校に入って、何となく中学時代のようにしっくりこなくなっちゃったのはどうしてだろう?僕はなぎさのまっすぐでひたむきにがんばるところが眩しくてたまらない。おまけに、なぎさのことが好きだという修子のことが、気になってきた。中学高校と、誰もが不安定になるその一時。
コメント:「なぎさボーイ」「多恵子ガール」の兄弟編という感じの作品です。
エリートに見られるよい子の北里くんに、実はなぎさくんは「かなわないなー」と感じてるんですね。でも本当は、北里はなぎさのひたむきさに負けちゃったりしてるわけで、
北里となぎさがお互いに意識し合っている。そこがこの本のおもしろいところなのね。

そして粛正の扉を

著者:黒武洋
出版:新潮社
初版:2001.01.25.
紹介:卒業式の前日、生徒を教室に集めた担任教師が生徒を人質に立てこもった。社会で犯罪を重ねていく、自分たちの欲望と勝手な自己満足のために、罪もない人々の生活を、不幸に陥れる。彼らの犠牲になった人々に代わって、彼らの担任教師がこれ以上の被害の拡大を食い止めるために、緊急措置を行う。
用意周到に立てられたその計画と、冷静沈着な行動。その心の中にある動機は・・・第1回ホラーサスペンス大賞受賞作
コメント:予約したのも忘れていた一冊。
タイトルを見て、一瞬読むのをためらったのですが、読み始めたらどんどん引き込まれていく。一瞬「バトル・ロワイヤル」を連想させる殺略シーンではあるが、根本にあるテーマが全然違う。少年法によって保護される加害者のプライバシー。真実を知らされない被害者。社会にでても、悪をまき散らすだけの少年少女たちを処刑(?)していく、一瞬そこに共感を覚えてしまう。
内容の是非はともかくも、読んでいくうちにどんどん引き込まれ、最後には予想を超えた結末。なかなか面白かったです。
特に我が子の問題行動に頭を悩ませながら、お金でしか解決できない親と、実は子供の死によって、開放された親の気持ち・・・どれもこれも、現実の中にないとは言えない物で、思わず引き込まれてしまいました。

十二番目の天使

著者:オグ・マンディーノ
出版:求龍堂
初版:2001.04.16.
紹介:涙なくしては読めない物語・・・・
さあ、これでいいい。準備は整った。弾丸を込めた弾倉を拳銃に戻す。さあ、急ぐんだ!もう何も考えるな!やるんだ!私は拳銃を持ち上げ、撃鉄を起こし、銃口をこめかみにおしあてた。
「ああ、神よ・・・・・・」私はすすり泣いていた。「どうかお許しを」
引き金に掛かった人差し指に力が入る・・・とそのとき・・・ある天使が・・・そう、まさしく天使が・・・私の命を救ってくれた。(本文より)(表紙カバーより引用)
コメント:新聞や、テレビで「感動の嵐!」とか「涙なくして・・」と話題になりベストセラーということもあって、夏休みに子供が読むのにイイかと思って購入した一冊。
確かに、イイ。涙もちょっとホロッと来るかも・・・。だけど前評判が高すぎて、おまけに時間をあけて読んだせいか、感動が分散しちゃった。
読むなら、三時間くらいで一気に読んだ方が良かったなぁ。
前半の、彼が、生きる目的を失う部分までの説明がちょっと中だるみしてしまいました。まあ、私がこの本に感動するほど、ピュアじゃないってことなのかもしれません。