黄昏の岸 暁の天 上 (十二国記)

著者:小野不由美
出版:講談社X文庫
初版:2001.05.15.
紹介:登極から半年、疾風の勢いで戴国を整える泰王驍宗は、反乱鎮圧に赴き、未だ戻らず。
そして、弑逆の知らせに衝撃を受けた台輔泰麒は、忽然と姿を消した!
虚海の中に孤立し、冬には極寒の地となる戴はいま、王と麒麟をなくし、災厄と妖魔が蹂躙する処。人は見も心も凍てついていく。
もはや、自らを救うことも叶わぬ国と民───。
将軍李齋は景王陽子に会うため、天を翔る!
待望のシリーズ、満を持して登場!!(表紙扉より引用)
コメント:

舞姫通信

著者:重松清
出版:新潮社
初版:1999.04.01.
紹介:ラストシーンは、もう始まっているのかもしれない。人は、誰でも、気付かないうちに人生のラストシーンを始めている。17歳で死んだ(自殺志願)のタレント城真吾にとっては、16歳は晩年だった。城真吾は教えてくれた。人は死ねる。いつ。いつか。いつでも────。でも、僕は思う。僕の教え子の君たちの「いつか」が、ずっとずっと、遠い日でありますように。教師と生徒と、生と死の物語。(裏表紙より引用)
コメント:死を見つめる子どもたち。
双子の兄の自殺は、ずっとずっと僕を掴んで離さない。死んだのは、ほんとうに兄だったのか?何故、死んだのか・・・。

斎藤家の核弾頭

著者:篠田節子
出版:朝日新聞社
初版:1999.12.01.
紹介:「国家主義カースト制」に予って超管理社会となった2075年の東京。政府の謀略により長年住み慣れた家からの立ち退きを強制された斎藤家は、理不尽な転居命令に抵抗し、近隣住民と共に手製の核爆弾を武器に日本国宣戦布告する!明日を予言したスラップスティック小説の傑作。(裏表紙より引用)
コメント:これはもう大爆笑。あり得ない話なのに、何だかその辺に転がっていそうな話。
そして社会を痛烈に風刺しているし、ちょっと背中が薄ら寒くなっても来るのでした。

愛をする人

著者:堀田あけみ
出版:角川文庫
初版:1992.11.10.
紹介:悠子が一希に出会ったのは15歳。カレは家庭教師の大学生。まだ恋の意味も分からない春の出来事だった。
 八年後、再会した2人───年月は少女を女にかえていた。そして彼には婚約者の優子がいた・・・。
 2人のユウコの間で揺れる一希。1人のユウコは恋人、もう1人のユウコは愛人という道を選んだ・・・。
 恋人のいる人を好きになる・・・それは罪なことなのでしょうか。決して結ばれることのない愛、切ない愛を綴った恋愛物語。(裏表紙より引用)
コメント:まあ、なんて悲惨な主人公の生い立ちなんでしょう。ちょっとこう言うのは苦手ですねぇ・・。こういう状況下で成長してしまうと、やっぱり大人になっていく家庭で大きく影響が出てしまうのかな。お話とはいえ、なんで??という気持ちになります。
それにしても、まだ結婚もしていないのに、婚約者がいて、それとは別に愛玩具的な存在を容認する男って・・・(気持ち的にはそういう願望が合っても不思議じゃないけど)。妾腹の子だから、日陰の女でいいなんて悲しい。虐待を受けて育った子供が、大人になってまた自分の子供を虐待してしまうというのに似てる。そういうことはどこかで断ち切っていかないとなぁ。だけど、そうスパッと断ち切れないものを抱えている人間が多いってことなのかもしれない。哀しいけど・・・

さつき断景

著者:重松清
出版:詳伝社
初版:2000.11.10.
紹介:1995年、1月阪神・淡路大震災、3月地下鉄サリン事件、そして5月1日───。
神戸でのボランティア活動から帰郷したタカユキ(15歳)は惰性としか思えない高校生活に疑問を感じていた。電車一本の差でサリン禍を免れたヤマグチさん(35歳)は、その後遺症ともいうべき自己喪失感に悩んでいた。長女が嫁ぐ日を迎えたアサダ氏(57歳)は、家族団欒最後の日をしみじみと実感していた・・・。
そして、96.97.・・・2000年。3人は何を体験し、何を想い、いかに生きたのか。二十世紀末、6年間の「5月1日」からそれぞれの人生を照射した斬新なる試み。注目の山本周五郎賞作家が挑んだ日録小説の傑作・・・(表紙カバーより引用)
コメント:つい最近のことなのに、もうずっと記憶の遠くの方に行ってしまっていたさまざまなことを思い出しました。たまごっち・・・あんなに流行ったのにもう思い出すこともない。たった4年前のことなのにね。あの頃には携帯電話がこんなに普及するなんて考えても見なかったなぁ。
95年の5月1日。私は何を考えていたんだろう?

花のもとにて

著者:堀田あけみ
出版:角川書店
初版:1992.03.30.
紹介:憧れていた男がいる研究室。そんな心を見透かすように、亜々子は、忠告する。
もうすぐ私をティッシュぺーパーのように捨てる。
コメント:本を読む時って、登場人物の誰かに感情移入して読むときと、一歩離れて読むときがあるの。今回は3人の女性の誰にも入り込めなかった。
私は、この本を読んでいて、人称がどんどんかわっていくので最初ちょっととまどいました。主語がなくて始まるので、誰の言葉なのか「あれ?」って思ったり・・で、このお話の主人公は、誰なんだろう?
私としては、最終的には響子さんかなと感じました。
亜々子さんの生い立ちや生き方に関しては、確かに哀しい背景があるし、死を選んでしまったという結果については、なんかね・・・わからないでもない。そういう恋愛もアリかなと思う。
気になるのは、響子のほう。女性を好きになるって言う気持ちは、わかるの。
でも、死んでしまった彼女に、自分を同化させて行くというのは、けっきょく自己愛じゃないかなぁ。そして、復讐と嫉妬で、絡め取った虚偽の恋愛は、一番大切な自分自身をも欺いていることになるから、不幸だなあと思いました。
もちろんどんな恋愛を選択するかは、その人の自由だと思うけどね。いろんな恋に傷ついたり、失敗を重ねて行くのも、勉強だよね。と言うよりも、恋は傷つくことを恐れていちゃいけないような気もするのよ。でもまあ、こういう失敗(かどうかはわからないけど)は本の中だけで経験した方がいいかなぁ・・・なんて、娘を持つ母としては思ったりするわけです。だからね、本としてはとても興味深く読みました。
例えば、付き合っていることをまわりに秘密にする男の心理。とかね。

わたしたちのトビアス大きくなる

著者:ボー=スベドベリ
出版:偕成社
初版:1979.11.
紹介:わたしたちは前に「わたしたちのトビアス」という本を書きました、その本の中で、トビアスは特別な子だとお話ししましたね。なぜ、とくべつかというと、トビアスは障害児だからなんです。
 トビアスはもうじき3歳になります。この本では、トビアスが食べたり、おまるにすわったり、話したりなどふだん必要なことができるようになるために、わたしたち家族が、どんな手助けをしたかをかきました。(表紙カバーより引用)
コメント:トビアスが2さいのときに、お母さんが亡くなった。お母さんにかわって、お父さんがトビアスの面倒を見るようになった。そして、トビアスのことを書き続けることが、お母さんが望んだことだったのだ。
前回の本に比べると、筆者がかわったせいもあって、印象が大分違う。
いくぶん、説明文的になってしまうのはしかたがない。

わたしたちのトビアス

著者:セシリア=スベドベリ
出版:偕成社
初版:1978.10.01.
紹介:わたしたちの弟のトビアスは、ふつうの子ではありません。トビアスはすこしちがっています。彼は障害児です。パパとママは障害児とはどういうものかを説明してくれました。 そこでわたしたちはこの本を作りました。わたしたちと同じように、ふつうでない兄弟がいるほかの子どもたちのために・・・・・。そして、どんな子もいっしょに遊び、わかりあえるようになるといいなと思うから・・・。そうすれば、ずいぶん楽になるでしょう。(表紙カバーより引用)
コメント:「天の瞳」成長編Ⅱで倫太郎が紹介していたほんの一冊。
ダウン症の赤ちゃんを迎えた、母親と、その兄弟の様子が書かれているの子供向けの本なのだけど、ちょっと気になって図書館で探してみた。
お母さんが書いたこの本は、トビアスが彼の兄弟たちからとても愛されていることが、しっかりと伝わってくる。
難しい理屈じゃない。心から、そうなんだと思える、普通の人も特別な人も、ともに支え合いながらお互いを知り合う事が大切なんだね。
理屈よりも、まず読んで欲しい一冊。

あふれた愛

著者:天童荒太
出版:集英社
初版:2000.11.10.
紹介:「とりあえず愛」
「わたし、なつみを殺しちゃう」妻の口からこぼれた言葉は、武史に不安と苛立ちを覚えさせた。仕事に追われ、安らぎの場であるはずの家庭で苛立ち・・・。
「うつろな恋人」
ストレスケアセンターに入所した彰二が出会った清楚なイメージの少女。彼女の恋人は、現実には存在しない。実体のない恋人によって支えられた少女、と真実を知らせようとする男。2人の急速な接近が、何を引き起こすのか?
「やすらぎの香り」
自分の気持ちを出すことの出来ない女と、姉の死を事故の責任と思いこんでいた男。
社会の中から取り残され気味だった2人。1人ではやっていけないけど、2人なら支え合っていけるのか・・・。
「喪われゆく君に」
コンビニでバイトしている俺の目の前で、突然倒れた男。彼の死に、俺の責任はあるのか?ないよな・・・。男は妻の姿を恋人の上に重ねる、その繰り返しの中で、それぞれが失い、それぞれが見つけた現在。死んだ男に自分のイメージを重ね、死を迎えた1人の男の存在を俺は確認する。
コメント:心身の健康や、願っていた夢や理想。またかけがえのない大切な人を失ったとき、私はどうするだろう?今ある平穏な生活のすぐ下に隠れる不安定な社会。そんな中でなんとか自分を見失わないように、ギリギリでがんばっている現実。決して他人事ではない、身近な問題として感じてしまう。それでも、出来れば、思いやりを持って生きてゆけたらと思うのだが・・・。

少年計数機 池袋ウエストゲートパークⅡ

著者:石田衣良
出版:文藝春秋
初版:2000.06.20.
紹介:池袋西口公園を中心に、活動するマコト。果物屋で、コラムニストで、そして裏では頼まれた仕事をこなす・・・。
ネットの中の女の子をストーキングする男・・・「妖精の庭」
目につくものを端からすべて数えるという少年。彼はまわりに心を閉ざしている。少年が誘拐されたとき・・・「少年計数機」
連続通り魔事件の被害者のために立ち上がる老戦士2人。マコトに犯人探しを月賦プで依頼する。犯人の腕にあった「銀十字」のブレスネットを手がかりに、犯人を追い込む。「銀十字」
大人のパーティ潰し・・・裏の世界から犯人探しを依頼されたマコトがたどり着いた意外な犯人像。そして、その裏に隠された、真の犯人は?「水のなかの目」
テレビ化された「ウエストゲートバーク」の続き?
コメント:図書館で見つけて、「あら、長瀬君だわ!」とつい手に取ってしまった本。
池袋は、よく歩く街だけど、こんな事件に遭遇することなんて、まあ皆無なのだが・・・。とは言っても、実際通り魔が出現するし、アンケート商法は未だ健在で若い女の子を狙っているし・・・。
あ!それとは無関係?まあ、かるーく読めて、おもしろい本でした。