視覚ミステリーえほん

著者:ウォルター・・イック
出版:あすなろ書房
初版:1999.05.25.
紹介:この本の写真は、様々な模型を作って撮影したものです。模型は、うまく錯覚が起こるように調節しましたが、写真そのものはカメラの前の物体を忠実に再現したものです。あとで手を加えるようなことはしていません。
 この本は“視覚”のゲームです。みなさんはこのゲームで、自分の観察力をみがいてください。人によっては、錯覚が起こりにくいものがあるかも知れません。また、どのようにして錯覚が起こるのか、わからないものもあるかも知れません。おもしろいことに、誰にでも同じように錯覚が起こるわけではありません。人によってちがいがあるのです。なぜそうなのかは、専門家にもまだ完全にはわかっていません。
 ですから、みなさんは、それぞれの感覚で“体験”してくれればいいのです。この本は、知能テストではありません。視覚というミステリーへの遊びにみちた“入り口”なのです。
「この本について」より引用
コメント:エッシャーの不思議な絵をご存知ですか?
入り組んだ階段のある家、たった三段階段を上がっただけなのに二階に上がってしまう建物、水がいつのまにか上に向かって流れる絵など。すごく不思議で迷ってしまうような絵です。
そんな絵の世界を写真にした絵本です。後ろの方にちゃんと種明かしものっているから、思わず納得してしまいます。遊び心のある絵本って、いいですよね。

今はもうない

著者:森博嗣
出版:講談社
初版:1998.04.05.
紹介:電話の通じなくなった嵐の別荘地で起きた密室殺人。二つの隣り合わせの密室で、別々に死んでいた双子のごとき美人姉妹。そこでは死者に捧げるがごとく映画が上映され続けていた。そして、2人の手帳の同じ日付には謎の「PP」と言う記号が。名画のごとき情景の中で展開される森ミステリィのアクロバット!(裏表紙より引用)
コメント:ネタバレになるから、詳しくは書けないんだけど、なかなかうまくできてますね。すっかり森さんにだまされてしまいました。
えー!?って言う感じで読み終わってから、もう一度見返してしまいました。でも、森さんぽくっておもしろかったです。

仮面学園殺人事件

著者:宗田理
出版:角川文庫
初版:1999.08.25.
紹介:ある日、中学校に仮面をかぶった生徒が登校した。驚いた教師は、仮面を取るように説得するが、少年ははずさない。その少年は仮面を付けてすっかり明るく変身してしまった。そんななか、別の中学生が、教師から仮面を取られるのを嫌って自殺した。この事件はマスコミで取り上げられ、全国の中学校で仮面が大流行する。
有季と貢は、その裏側にある真相を探るために「仮面集会」に潜入する。そこに登場した謎の少年。そして殺人事件。少年はなぜ仮面をかぶるのか?有季と貢を驚嘆させ、事件は意外な結末へ。(裏表紙より引用)
コメント:宗田理の「2年A組探偵局」シリーズ。
仮面を付けることで、ふだんとは違う自分になれる。言えないことが言えるようになる。そして自分がなりたいものになれる。
本当にそうだろうか?この中で、実はインターネットの中でのEメールもそのような性格を持つと書いてあった。確かに、自分の素顔をさらさずに人と出会えるネットの世界は、まさに自由にどんな顔の仮面もつける事が出来る社会なのかもしれない。

初秋

著者:ロバート・B・パーカー
出版:ハヤカワ文庫
初版:1999.08.25.
紹介:離婚した夫が連れ去った息子を取り戻して欲しい──スペンサーにとっては簡単な仕事だった。が、問題の少年ポールは、対立する両親の間で駆け引きの道具に使われ硬く心を閉ざし何事にも関心を示そうとしなかった。
スペンサーは決心する。ポールを自立させるためには、一からすべてを学ばせるしかない。ボクシング・大工仕事・・・・・・スペンサー流のトレーニングが始まる。ハードボイルドの心を新たな局面で感動的に描く傑作! (裏表紙より引用)
コメント:あの少年をトレーニングしている場面では、思わず我が子も、お願いしたくなっちゃいましたね。それより、私が訓練した方が良いかな?ストーリーもなかなか面白かったです。少年の未来が明るく見えて、いいなあ!
だけど息子がバレーダンサーになりたいって言ったら、ちょっと考えちゃうかな?でもそういう風に思うようになるまでには、それなりの時間と積み重ねがあるだろうから、きっと理解してあげられるようになるんじゃないかな?考えが甘いかなぁ?でも、本当にそれで自立するのは、かなり厳しいでしょうね。

君たちはどう生きるか

著者:吉野源三郎
出版:岩波文庫
初版:1982.11.16.
紹介:著者がコペル君の精神的成長に託して語り伝えようとしたものは何か。それは、人生いかに生くべきかと問うとき、常にその問いが社会科学的認識とは何かという問題と切り離すことなく問われねばならぬ、というメッセージであった。(表紙より引用)
コメント:時代がかなりさかのぼっているにもかかわらず、今の時代にも通じるものがたくさんあります。社会や宇宙を小さな細胞の一部分のように感じる事は、私も子供の頃に体験しました。懐かしい気持ちです。

ざけんなよ

著者:東京母の会連合会
出版:集英社
初版:2000.04.30.
紹介: 「非行に走った少年の寂しさを、あなたは理解できますか」警察に逮捕された「非行少年」からのメッセージ。
自らは選択しようのない環境(親.家庭)の中で、子供達が寂しさを訴えている。不良仲間や、悪い大人達に助けを求め、さらに自分を傷つけていく。親は子供達にとって、取替えのきかないものだ。
「逮捕時の少年の顔は、目のつり上がった猛々しいものです。しかし罪を認め、反省すると、すっかり子供らしい顔に戻り捜査官を信頼して色々と話すようになる子供が出てきます。これらのメッセージはそんな子供達のものです。身につまされる話がたくさんあります。」少年達と接した、少年課の捜査官たちの暖かいメッセージとともに、多くの人に送るメッセージ。
コメント:この本を読んだ日、ちょっと悪夢を見ちゃった。
私は、ぱりっとしたスーツを着こなしたキャリアウーマン風。自分の息子(小学校低学年)が、裸で保護されたと、連絡が入って、引き取りに行く情景・・・。うー!かなりショックだったんだわ。
大人が子供について書いた本は山ほどあるけど、少年達の生の声や、吐露されたものって、なかなか触れる機会がないですね。こういう本を読むと、どうもやっぱり、我が身と子供達を照らし合わせてしまう。ここに登場する子供達に幸せになって欲しいと、心から願います。

不登校の贈りもの

著者:前田祥子
出版:風媒社
初版:2000.03.01.
紹介:子供達が学校へ行くようになって、3年になる。ようやくあの時のことを、振り返って語ることができるようになった。それは私にとっても、自分の生きてきた道を、見つめ直すことであった。それは苦しいことに決まっている。でも、その作業の中で見つけ出してきたものを、それがたとえ私の弱さと傷口を人前にさらし出すことであったとしても、私は伝えていきたい。
 弱さを抱えて生きることが、恥ずかしいことだとは思わない。でも、弱さを隠して生きることは見苦しいことだと思う。弱さの奥にある優しさと真の強さを、私は信じていたい。「おわりに」より抜粋
コメント:3人の子供の不登校を、前向きに捉えてがんばってきた母親。子供が不登校から脱却したとき、そこに残された母は・・・私はてっきり、「不登校の子供」の話を書いたのだと思って読んでいました。だけど、本当はそうじゃなかったんですね。思わず我が身を振り返ってしまいました。

「少年A」14歳の肖像

著者:高山文彦
出版:新潮社
初版:1998.12.05.
紹介:私は新たに知りえた少年Aの両親の証言などをもとに、少年Aと彼の家族の姿を資料に従って忠実に再現してみようと思う。また、精神鑑定や審判を通じて得られた彼の内的世界を関係者の証言とともに奥深く巡ってみようと思う。そこには、今までわれわれがまったく知り得なかった新しい像が、おのずと結ばれてくるはずである。
 現行の少年法では、わが子がなぜ殺されなければならなかったのか、遺族は知ることができない。いま、あえて私が書こうとしているのは、それがこの事件に少なからずかかわってきたものの責務だと信じるからだ。序章「池のほとり」より
コメント:被害者の親でも、加害者の親でもない、中立の立場から書かれた本です。3冊を読んで、この事件の持つ本当の問題点が始めてよく分かりました。うまく感想が言えないけど、機会があったら読んでみてください。そう、「14歳・・・」なんだかね、あの少年が、ちょっと可哀想にも思えてきます。生きていくのって、難しいなぁ。

女優志願 母と娘の歩いた道

著者:忍足亜希子
出版:ひくまの出版
初版:1999.11.18.
紹介:映画「アイ・ラブ・ユー」主演女優。
ろう者である著者への、母親、家族からの愛。
成長期、ろう者としての自覚と悩み。そして今彼女は主張する。(解説より抜粋)
コメント:ろう者というハンディを持ちながら、健常者に媚びることなくろう者としての誇りを持った、一人格として生きていける。そんなバリアフリーの社会を目指す。そこには、強い姿・主張が見られた。
五体不満足の乙武さんと相通じる思いが伝わってきた。

著者:土師 守
出版:新潮社
初版:1998.09.15.
紹介:「神戸連続児童殺傷事件」の被害者の父による手記。
息子「淳」くんの生い立ちと、家族の生活。そして事件。犯人逮捕からマスコミによる、被害者へのプライバシー侵害。「少年法」の問題点などをつづる。
今、被害者側の当事者として、事件に対する真実の声を『私たち、被害者の遺族の心の軌跡』をここに表した。
コメント:この事件に関する本は去年「少年A・この子を生んで」という加害者の家族が出した本を読みましたが、とても納得して読むことができる者ではありませんでした。まさにこの親にしてこういう子が産まれたと思わざるを得ない、自己本位なものでした。
今回、「淳」を被害者側からの手記として読んで、こういった事件の陰に隠れてしまいがちな、マスコミの報道などによる、被害者の人権やプライバシーが侵害されるという二重の精神的被害。
また、「少年法」:単なる非行(万引きとか)と、重大な非行を同列に扱い、非行少年を保護しようとする法律によって手厚く保護される加害者など、多くの問題点があるということがわかった。被害者の家族の二重三重の苦しみ・悲しみを思うと、本当にやり場のない憤りを覚える。