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すきやき

夕方、お風呂に入ってから、夕食までの待ち時間が1~2時間。
「暗いな。夜かな?誰もいないのか?・・・ご飯食べたかな?もう寝ちゃおうか?」
エアコンをつけた自分の部屋のドアを半分開けて、廊下の様子を伺っているジジ。

「何で、開けてるの!?暖房付けてるのに、寒いじゃない!ご飯ができたら呼んであげるから、座って、テレビでも見てなさい!」
毎日繰り広げられる、ババの声は、家中に響き渡る。

 自分が何をしたらいいのかわからなくて不安になっているようので、そんなときはダイニングに誘い、本を見たり、パズルを出したりして、気を紛らわせてもらう。

 よく、痴呆のお年よりは今食べたばかりなのに、食べたことを忘れてしまい、「ご飯を食べさせてください」と騒がれるという話を耳にしますが、ジジに限って言えば、一度もそういうことはないのです。
 遠慮しているのか、「お金を持っていないので、ほんのちょっとでいいです」と、何度も何度も言いにくる。
「ハイハイ、ほんのちょっとね」

 一通り本を見終わると、ご飯を待っていることを忘れて
「じゃあ、私はこれで、帰ります」
「あら?今ご飯を作ってるんですけど、みんなで一緒に食べませんか?」
「え?みんな?じゃあ、ちょっとだけ、ほんのちょっといただきましょうか・・・」
こんな会話が、何度も何度も繰り返される。

そして何度目かの「じゃあ、私はこれで帰ります」と腰を浮かせたところへ・・・
ようやくできた「すきやき」をとりあえずテーブルに置くと
「ワー!こんなにいっぱい!」
家族を呼んで、取り皿と箸を用意して・・・

ふと見ると、大きなレンゲを手に鍋からはんぺんをすくい、今まさに口に入れようと!!
「あ!おとうさん!」

すき焼き鍋・・・ 自分ひとりで食べると思ったんだよね。だって、他に誰もいなかったんだもん・・・
「なんで、目の前に出すんだ!?」って言われちゃったけど、私一人で、どうすればいいのよ~。

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