バスジャック

著者:三崎亜記
出版:集英社
初版:2005.11.30.
紹介:タイトルを見たときに、九州で起きた少年によるバスジャック事件を思い出した。そんなイメージを持って読み始めたのだが…まったく違った。
「二階扉をつけてください」:妻の留守中に、訳も分からずに「二階扉」をつけたのだが、その使い方は?
「しあわせな光」:街を見下ろす丘の上から見た自分の部屋の中には、昔の自分の姿が見えた…
「二人の記憶」:二人が話す記憶の食い違い。僕の知らない二人の過去・歴史。正しいのは彼女の語ることだろうか?でたらめなのは僕の記憶?
「バスジャック」:国民の「バスジャックをする権利」「バスジャック規正法」バスジャックはひとつの流行となり、失敗した暁には「バスジャック失敗者」「バスジャック棄民」としてその後の人生を送ることになる。シロウト集団のバスジャックが横行する中で、我々新・黒い旅団は「真のバスジャック」を遂行する。
「雨降る夜に」:見知らぬ若い女性が僕の部屋を訪れたのは雨の降る夜だった。「お借りした本だけは濡らさないようにと思っていましたから…」
「動物園」:動物のイメージを膨らまし、そのイメージに融合する。それが私の仕事だった。
「送りの夏」:老人はマネキンのように動かない老婆を車椅子に乗せ、静かに語りかける。別れる心の準備ができるまで…。
コメント:予想したのとは、だいぶイメージが違ったけど、この非現実的な状況の中で、主人公たちが、あまりあたふたと戸惑わないところが、今風でしたたかなのかもしれない。たとえば、阿部公房の作品の中では、その非現実的な日常の中におかれた主人公たちが、かなり疲労困憊していきながら、だんだんその異常さの中に取り込まれていく姿があったような気がするんだけど。


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