著者:花村萬月
出版:文藝春秋
初版:1998.09.20.
紹介:119回芥川賞受賞作品
紹介がしづらいので、私の心に留まった文章を引用させていただきます。
P.85より引用
「とくに物事をどう考えるか、どのように考えるかをモスカ神父から習った。答えが目的ではなくて、考えること自体が目的であるということを徹底的に教わったのだ。」
P.176より引用
「それは僕は自尊心ゆえに、この奴隷の境遇に慣れ始めていた。自らを否定しないためには、状況に対して頷いてやらなければならない。ねじ伏せられているのではなく、自らすすんで行っているのだと自分に言いきかせ、それを信じこむのだ。いま思い返せば、それが宗教の発生ではないだろうか。そんな気がする。単純な言い方で気が引けるが、苛烈な現実の肯定が宗教だ。」
コメント:途中でやめられなくて、一気に読んでしまいました。
なんて言うか・・紙面に印刷されている文字はすごいんだけど、その文字の内側に書かれているものは、結構読み応えがありました。
時代や状況などは、今の私たちの生活とかけ離れているのだけど、途中で中学生の「いじめ」の心理がかぶさって見えてきました。「芥川賞」を受賞したのは納得の一冊です。
そうね・・・確かに大きな声で「おすすめ」とはいえないけど(笑)