シンセミア 上・下

著者:阿部和重
出版:朝日新聞社
初版:2003.10.30.
紹介:背の高い男は一人の農夫を殺した、母と祖母の恨みを晴らすために。それは「神町」とその住民への怨憎でもあった。
「神町」という名前にはそぐわない歴史が、その町にはあった。アメリカ軍の占領下「パンパン町」と称され、自宅を娼婦に貸し出す地元民。その中で勢力を伸ばした、田宮家と麻生家。それは戦後も独占的営業をする「パンの田宮」とラブホテルや娯楽施設の「麻生興業」として勢力を持ち続けていた。
2000年7月。処分場反対派の教師の自殺・自動車の事故死・一人の行方不明者。立て続けに3件の事件がおきた。しかしこれは、これから一ヵ月半の間に起きる悲劇的祭典の幕開けに過ぎなかった。
コメント:数多くの登場人物たちのそれぞれの視点から描き出された「神町」は、権力の癒着と横行・麻薬・盗撮・暴力に満ちている。親・子それぞれの世代に繰り広げられ、伝えられていく構図。その中で生活していく人々の悩み・崩壊していく家族の様子など、かなり厳しい。
上下2巻にわたる長編。しかも字が小さめ。巻頭の「主な登場人物」に並ぶのは総勢60名。これだけでもめげる。お願いだから「相関図」を付けて!という気分。途中、何度か放り出しそうになったが、読み終えてみれば、いろいろと考えさせられることの多い内容だった。普通に生きて生活していることが、ちょっと恐ろしい気分になってくる。


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