著者:中村文則
出版:新潮社
初版:2005.07.30.
紹介:親から受けた虐待。自分が痛めつけられることに意識的に向かってしまう。仕事に向かいつつも。時に後ろ向きになり、自虐的な女の姿に自分を重ね合わせ、先の見えない生活の中で、愛とは思えない2人の関係が、お互いを支えあっている。
僕には親などいない、<僕は土の中から生まれたのです>「土の中の子供」
ごくあたりまえの日常といわれる生活に感じられる違和感。仕事も、名前も、身分証明書も全て捨て、本当の自分になってゆく開放感。しかし、その捨てたはずの自分自身の記憶は、果たして事実だったのかどうか?それすら確認することはできない。自分が通り魔の犯人なのかどうか?それすら、わからなくなってゆく。「蜘蛛の声」
コメント:芥川賞受賞作なので読んでみた。
作者の根底に、親からの虐待や、捨てられるという精神的苦痛がある。そのトラウマによる展開といえばわかりやすいが、そうでない状況でも同様な思考傾向が現れるかもしれない。