猫を抱いて象と泳ぐ

nekozou.jpg著者:小川洋子
初版:2009.01.10.
出版:文藝春秋
大きくなりすぎてデパートの屋上から降りられなくなった象のインディラ。太りすぎて住まいの回送バスから出られなくなったマスター。狭い家の壁の間から抜け出せなくなった少女ミイラ。大きくなることへの恐怖から、11歳の体で成長を止めてしまった少年は、チェスのからくり人形の中に入って天才的チェスプレイヤー「リトル・アリョーヒン」と呼ばれるようになる。
チェスについては、ほとんど知らないので、その美しい動きや調べを理解することはできない。この本は、チェスの素晴らしさについて書かれた本だろうか?否。
生まれてきたことの意味、存在価値を問い。世の中の、きれいな表の世界と醜い裏の世界。賭けチェス、人間チェスにいたっては、美しさのかけらもない…残虐性。
そして、人が生まれ老いて行くその終焉を美しく、哀しく見つめている。ここは「博士の愛した数式」にも通じる。しかしなぜ、作者はなぜ、こんなに困難を少年に与えたのだろう。せめてもの救いは白い少女ミイラとの、ラブレターにも似たチェスのやり取りの手紙だ。だけど、それすら、最後の完結を見ることがない。「リトル・アリョーヒン」として生きた彼は、幸せだったのかな・・・


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