著者:中村文則
出版:新潮社
初版:2004.06.30.
紹介:「悲しみを乗り越えた振りをすること」それが親をなくした子供だった僕に求められた生きる知恵だった。生きることは演技であり、演じている自分に陶酔した。
恋人を演じる自分。しかし彼女を失ったという事実を受け入れることは出来なかった。
「ずっと一緒にいてくれ」と彼女は指切りをせがんだ。だから、僕は彼女と一緒にいる。彼女は生きている。そう信じることは僕を幸福にした…
苦しみ、悲しみを前にして、自分がどう変わるのだろう。自分を失っていくのか?もともと、自分は容器だけで、中身など存在しなかったのか?
コメント:読んでいて、あまり気持ちのいいものではない。だからといって、目をそむけているのも問題かもしれないが・・・本当に大切なもの失ったことがない私には、理解しがたい感情かもしれない。
著者:東野圭吾
出版:朝日新聞社
初版:2004.12.30.
紹介:不良少年たちに蹂躙され殺された娘の復讐のために、父は仲間の一人を殺害しさらにもう一人を追いながら逃亡する。凶悪犯の少年保護か?少年法のあり方をめぐって世間の考えは賛否が大きく分かれ、警察内部でも父親に対する同情論が密かに持ち上げる。はたして犯人を裁く権利は遺族にあるのか?自分だったらどうする?
コメント:恐ろしかった、けれど、それが現実に起こらないとは言い切れない。
少年法・犯罪少年の更生…守られるプライバシー。それに引き換え被害者はプライバシーもなく好奇の目に晒される。愛すべきものを失った遺族にできることは何なのか?犯罪を犯した少年はそれでも、保護ざれる存在なのか?その保護者の責任は?人の子の親としてあらゆる面でいろいろなことを考えさせられた。
本題からは外れるけれど、そんなに帰りの遅い娘が心配なら、徒歩10分の駅までの道。携帯も持っている世の中、なぜ、子供にうるさがられようとも、駅まで迎えに出なかったんだろう?私なら、家で心配しているよりは、迎えに出るほうを選ぶ。ええ…もちろん毎日でも。それ以上はなかなか出来ないけれどね。
著者:乃南アサ
出版:新潮社
初版:2005.03.30.
紹介:新人警察官「聖大」が登場「ボクの町」の続編になります。
東京世田谷の閑静な住宅街「等々力」に配属された聖大。新宿や渋谷といった繁華街で日夜緊迫感のある警察官としての生活を望んでいたが、現実は警察署内での、わずらわしい人間関係やお年よりの話し相手だったりする。
そんな時、驚くべきパワフルなお年よりの集まりに出会う「とどろきセブン」
引退したとはいえ、それぞれが持つ本職と趣味が高じた技術。黙ってられないおせっかいが、聖大の周りを取り巻く。絶妙なコンビが面白い。
とどろきセブン:最近様子がおかしい「気になる家があるんだ」。玄関を開けると異様な臭いがした「正露丸」の臭いだ・・・
サイコロ:倉庫に放火をしようとしたのは小学生だった。その小学生はまるでサイコロのような現代風の家に住んでいた。しかし…家の中はゴミだらけだった。その子供たちが行方不明になった…
人生の放課後:文恵の夫がなくなったいきさつから、まわりに友達が集まってくるまで「とどろきセブン」結成そして、裏家業のお話。
ワンワン詐欺:可愛がっていたペットが誘拐された。振り込め詐欺の一種か?犯人を追い詰め逮捕した後に聖大が見つけたものは…
コメント:軽く読めます。そして「とどろきセブン」の面々がなかなか魅力的です。
聖大巡査には今しばらくとどろきに勤務してもらって、「とどろきセブン」の活躍を見せて欲しいですね。
著者:恩田陸
出版:新潮社
初版:2004.7.30.
紹介:高校生活最大のイベント歩行祭の幕開け。全行程80キロを丸一日かけて歩きとおす。甲田貴子が歩行祭に賭けた願いはかなうのか?、こわばった視線・居心地の悪さ・隠し続けた事実。一晩を友達と過ごすという、非日常がそれぞれの心を開き「奇跡」を起こす。通り過ぎてきたあの頃を、思い出させる恩田陸のノスタルジー。
コメント:「夜のピクニック」読み始めた最初からまるで自分が歩行祭に参加しているような気持ちになった。高校時代の友達・イベント・とりとめのない、だけど重大な話。そして、何かが起こりそうな期待感。読んでいて楽しかった。
著者:竹内冨貴子
出版:主婦の友社
初版:1999.10.01.
紹介:家族のメニューと同じ素材をアレンジしたお年寄り向けのメニュー。
同じ食材でも細かく切ったほうが食べやすい。汁気やとろみが合った方が飲み込みやすい。ちょっとした心遣いで食べやすくなる。
コメント:まだ入れ歯でいろいろと食べられるジジだが、肉でも小さくきってみると食べられることがわかった。同じものが食べられるというのは助かる。
著者:内田莉莎子文 ワレンチン・ゴルディチユーク絵
出版:福音書館
初版:2001.02.28.
紹介:年老いて役に立たなくなった老犬セルコは、主に家を追い出される。それを気の毒に思った狼が、一芝居打つことにした。主の子供をさらって、セルコが狼から子供を取り返すことにしたのだ。作戦はうまくいき、セルコは子供の守り犬として主に大事にされるようになった。
一方セルコは狼に恩返しをしようと、結婚パーティの席に狼を招きいれる。
テーブルの下でご馳走に酒に舌鼓を打つ狼。セルコは狼を追い出そうと一芝居。恩返しが出来てよかったね。
コメント:痩せこけた老犬と狼が妙にリアル。ジジが何度も何度もページをめくりました。
何が気に入るかわからない一冊。
著者:宮部みゆき
出版:講談社
初版:2004.06.15.
紹介:霧の城へのニエとして生を受けたイコは、角のある子供だった。
親から話され、養父母の下でニエとしての心構えをしながら育ったイコ。村を守るためにその身をささげる。
しかし、彼には特別な御印が与えられた。霧の城に行って戻ってくる。
神官により、連れて行かれた石棺から抜け出したイコの目の前にカゴにとらわれた少女が現れる。少女を救って、霧の城を抜け出そう!
霧の城の謎と、少女の関係は?イコがなすべきことは何なのか?
コメント:プレステ2のゲームのノベライズ化した作品。
ファンタジーのようです。ゲームをしたことがあれば、情景がありありと浮かんでくるのかもしれません。ワクワク楽しく読めました。
途中、これは、どこかの国を重ねているのではないか?などと穿った見方をしましたが、そういうわけでもないようですね。
著者:石田衣良
出版:徳間文庫
初版:2004.02.15.
紹介:一時間で一億円の大博打。映像ディレクター小峰が誘われたのは、池袋最大ノカジノ売上金強奪の狂言強盗。ところが、その金を横取りされた。どん底から這い上がる男たち……。逆転の確立は二分の一。赤か黒。人生のすべてをその一瞬に賭ける!(裏表紙より引用)
コメント:誠は出てこない。小峰と行動を共にするのはサル。
狂言強盗にしても、賭博にしても、決してまっとうな社会とはいえないが、その中で、自分の力で這い上がろうとする小峰。埋もれてしまわないところが読んでいてすっきりする。
著者:石田衣良
出版:文藝春秋
初版:1998.09.30.
紹介:池袋の町を舞台に誠とその仲間が活躍。
池袋西口公園で出会った女の子の一人が行方不明になった。ストラングラーを探し出せ。〈絵のうまいしゅん〉(池袋ウエストゲートパーク)
羽沢組のお嬢さんの姿が消えた。捜査依頼された誠は中学の同級生サルと出会う。
手がかりはコンビニで消えた車。〈ひきこもりの和範〉(エキサイタブルボーイ)
恋人をシャブから守ろうとしたイラン人の男。彼を守り、裏社会の売人達の証拠を突き止めろ〈コンピューターの師匠ケンジ・電波マニアのラジオ〉(オアシスの恋人)
ある日、池袋の町がGボーイズとレッドエンジェルスの二つに分かれて、闘争を始めた。続く小競り合い。流される血。誠は池袋を一つにまとめるために動く。若者たちの裏で蠢く黒幕の姿を暴きだせ。(サンシャイン通りの内戦)
コメント:池袋ウエストゲートパークの始まり始まり…
スポーツクラブでバイクをこぎながら読むのにちょうどよいスピード感。
著者:川上弘美 小池真理子 篠田節子 乃南アサ よしもとばなな
出版:新潮社
初版:2005.01.25.
紹介:「天頂より少し下って」川上弘美
「夏の吐息」小池真理子
「夜のジンファンデル」篠田節子
「アンバランス」乃南アサ
「アーティチョーク」よしもとばなな
5人の作家が織り成す、5つの恋愛模様
コメント:どの作品にも登場するのが「お酒」そのせいか、違和感なく読める。
乃南アサの「アンバランス」は、男女のお互いの気持ちのずれがなかなか面白い。