月と菓子パン

著者:石田千
出版:晶文社
初版:2004.04.30.
紹介:猫みちあるき  とうふや巡礼
古着見学  春雨泥棒
夏のあき缶
いなこちゃんといっしょ
出もどり猫  相席日和
ふきみそ田楽  
休日の小さな本  弁当大尽
富士メガネ  壁を見る日……
小さな珠のようなエッセイには、いまを生きるひとの あたたかな幸せがつまっています。
エッセイ界に新しい風が吹いてきました。「表紙扉より引用)
コメント:どこにでもある町に暮らす人々。猫やカラス。子どもの頃の思い出や食べ物など、身の回りに起こる小さな出来事をエッセイにした。
最後の「壁を見る日」は左官さんの1日の仕事をじっくりと観察したエッセイ。
これがまた、一段とおもしろかった。

イン・ザ・プール

著者:奥田秀朗
出版:文藝春秋
初版:2002.05.15.
紹介:「空中ブランコ」で有名になった精神科医伊良部先生の前作。
精神科医伊良部のもとを訪れた患者は、伊良部の子供のような稚気に、あきれ驚かされる。
変人どころの騒ぎではない。常識の枠外で生きているのだ。
体の異変を感じた心身症。体のためにはじめた水泳がいつしかやめられなくなって(イン・ザ・プール)
陰茎硬直症の原因は押し殺した自分の感情の発露?(勃ちっ放し)
自分のまわりの人がすべて、私を追いかけるストーカー(コンパニオン)
1日に300通のメールを送る携帯依存症の高校生が携帯を使えなくなったら(フレンズ)
火元の確認が気になって、仕事にならないルポライター(いてもたっても)
コメント:「空中ブランコ」の方が、伊良部先生のハチャメチャ具合がすごかったな。
「コンパニオン」はテレビ化された中に入ってましたね。
「フレンズ」は、今の携帯電話がない生活は考えられない子供たちにとって、人間関係の構築方法を考えさせられる話だった。ここまでではなくても、メールでつながっていることで、「友達」だと思っていることが、その中身はどれほどのものだろう…
人々の心の中の、本人も気がつかないブラックボックスを、のぞかれた感じだ。

心理カウンセリング 悩める心の相談相手

著者:南博 林幸範
出版:日本実業出版社
初版:2000.12.20.
紹介:職場、学校、医療……様々な場で、カウンセラーが相談者の悩みを聞き、相談者と共に解決の途を探す『心理カウンセリング』が行われている。その基本的考え方からカウンセラーになるための道筋まで紹介する。
実際のカウンセリングの現場から、さまざまな「悩み」を抱えた人たちと、そうした悩みに対するカウンセラーの関わりという具体的ケースを挙げ、「カウンセリングはどのように行われているのか」「どのように役立っているのか」を具体的に伝える。
コメント:仕事柄、「教育相談」「カウンセリング研修」という言葉・事柄に接する機会が多い。
概ねどのようなことをされているのかは想像がつくのだが、今まで自分自身が心理カウンセリングを必要とするような状況になかった。しかしまあ、これだけ多くの相談者やケースが存在するからには、自分自身が今後も無縁とは言い切れない。そこで、ちょっと手にとってみた本です。
わかりやすく、悩める人にも。また、心理学を学びカウンセラーの途を選ぼうかと漠然と考えている人にも、わかりやすい本だと思う。

マンガ心理学入門

著者:ナイジェル・C・ジョンソン 清水佳苗 大前康彦 訳
出版:ブルーバックス
初版:2001.03.20.
紹介:楽しく読めて、誰でもわかる
フロイト、ユングの精神分析から ゲシュタルト心理学、マズローの人間性心理学まで
広大な範囲に及ぶ心理学のエッセンスを、マンガやイラストを駆使してわかりやすく解説。(裏表紙より引用)
コメント:心理学入門というタイトルにひかれて借りた一冊。
心理学という学問の歴史や体系・系列。科学的な側面など全体を網羅するように紹介した内容。
今までに世界中の数多くの人が、人の心や行動を理解しようと試みてきた様子がうかがえる。だからといって、奥深く書かれている本ではないので、もっと奥を知りたい人は別の本を読まなくては…。
中で、一つ収穫。(p103)「Φ象」なるものの説明。ヴェルトハイマーは、2本のスリットの向こう側から2個のライトを照らすというという、簡単な実験装置を作った。それぞれのライトのスイッチを、すばやく(0.06秒ごとの間隔で)入れたり切ったりすることによって、たった一つのライトが前後に動いているという錯覚が生まれた。これが「Φ現象」である。
これって、森博嗣の「Φは壊れたね」のΦじゃないかな?

ぼけになりやすい人、なりにくい人

著者:大友英一
出版:栄光出版社
初版:1999.04.15.
紹介:「生涯現役でぼけ知らずの人生」「ぼけとは」「ぼけはなぜ起きるのか?」「ぼけの危険因子」「脳の老化を防ぐ」「ぼけの予防」「ぼけ予防10か条」医者の立場でわかりやすく解説。
「ぼけ予防の10か条」
1.塩分と動物性脂肪を控えたバランスのよい食事を
2.適度に運動を行い足腰を丈夫に
3.深酒とタバコはやめて規則正しい生活を
4.生活習慣病(高血圧、肥満など)の予防・早期発見・治療を
5.転倒に気をつけよう・頭の打撲はぼけを招く
6.興味と好奇心をもつように
7.考えをまとめて表現する習慣を
8.細やかな気配りをしたよい付き合いを
9.いつも若々しくおしゃれ心を忘れずに
10.くよくよしないで明るい気分で生活を
「ぼけにくい人」
・社交的で融通がきき、いつもほがらかで明るい人
・他の人の心を思いやり、周囲に細かい気配りの出来る人
・なんでもおっくうがらずに、こまめに体を動かす人
・積極的で、いつも新しいことにチャレンジしようとする好奇心と意欲のある人
・仕事や子育て以外に趣味や生きがいを持っている、積極的人生エンジョイ型の人
・常に夢を持ってその実現 ゚ざす人
・おおらかに大声で笑ったり、カラオケなどでストレスを発散しやすい人
・スタイルやファッションに気を使う人
・おしゃべり上手で、友だち付き合いの多い人
・異性への関心を失わない人
・テキパキ主婦で、出たがり好きの主婦
・ボランティア活動などにも進んで参加するような人
・機知に富んだユーモア感覚のある人
・多少は見えをはる人、負けず嫌いの人
・頭の切り換えがうまく、よく学びよく遊ぶ人
コメント:これと逆にぼけに向かう最短距離の道もある。
あぶない!あちこち寄り道していかなくちゃ。
私が気をつけるのは2かな?
あと7については、囲碁や将棋。俳句や短歌・日記や手紙、読書感想文などもいいらしい。

哀歌 上下

著者:曽野綾子
出版:毎日新聞社
初版:2005.03.20.
紹介:アフリカの発展途上国に派遣された修道女。日本での常識が通用しない、そして、この国の現状は日本では誰にも理解してもらえない。そんな中で、部族の対立から政治不安・さらには部族に関わらず手当たりしだいの虐殺が行われる。善意の仮面をかぶった裏切り。聖域である修道院で外国人として生活しながら、身近な人々が次々と命を失っていく。
 その中で、主人公の修道女が自分の立場と、心の中での葛藤が描かれてる。
修道女や神父までもが殺されてゆく惨劇、繰り返される虐殺のドサクサにレイプされる。
ボロボロになって脱出してきたところで、偶然であった善意の日本人。後半3分の1は
修道女としての自分と、お腹の中の決して愛することができない命をめぐってまた葛藤する。
コメント:「ルワンダ虐殺」が舞台だった。その歴史的事実も
知らなかったし…同じ地球で同じ時代を生きていたのに全く気づかず関心を持っていなかった自分自身にも驚くが、とにかく悲惨な事件。
主人公は現世を捨てた修道女とはいっても、けっこう人間くさい。
まして、現地の修道女たちは、慎みとは縁がない。日本とルワンダの様々な差異に驚かされる。
さて後半。善意の日本人は、日本に帰るための飛行機やホテル代など助けてくれるわけだが、次第に、物心両面で手を差し伸べてくれるようになる。修道女であることを辞めた彼女の中で、その人が今まで姿を現すことがなかった「主」「神」に重なっていくように感じたのは私だけだろうか。

しゃぼん玉

著者:乃南アサ
出版:朝日新聞社
初版:2004.11.30.
紹介:親からも見捨てられ、通り魔や強盗傷害を繰り返す
無軌道な若者・伊豆見翔人は、逃亡途中で宮崎の山村にたどり着く。
成り行きから助けた老婆スマの家に滞在することになった翔人は、
近所の老人シゲ爺の野良仕事を手伝ううちに
村の暮らしに馴染んでいくが……
やりたいことをやり尽くして、弾けて消えればいい─
現代の若者の“絶望感”を細やかな心理描写で描き出す傑作長編サスペンス
(表紙カバー・帯より転顧)
コメント:時間が、子供だった自分をいつしか無気力な高校生に作り上げ、だらだらと過ごすばかりの浪人生に仕立て上げ、やる気ゼロの五流大学生にさせた。4人家族はバラバラになり、連続強盗殺人犯ができあがった。その場しのぎですぐやる気をなくし、そんな日々。
 山奥深い平家の落人が隠れ住んだという山里での生活は、それまでの生き方を、根本から変えようとしていた。
 自暴自棄・自堕落な主人公が、90歳の老婆や、山里の人々とのかかわりの中で、それまでの自分と向かい合う。最初の投げやりな態度から、少しずつ変化していく様子が少し希望をつなぎ、しかしたびたび、裏切りそうになり、その心の動きにハラハラする。「ぼうは、ええ子」そうやって頭をなでられる経験がなく育ったのだと、推測させられる。
 いい人たちにめぐり合えて、やり直すことができれば・・・彼は幸せものだ。

野ブタ。をプロデュース

著者:白岩玄
出版:河出書房新社
初版:2004.11.20.
紹介:まるで着ぐるみを着るようにして、誰からも愛されるまじめな高校生を演じる。
本当の自分自身の姿は誰の前にもさらさない。そうすれば、大概のことはうまく通り過ぎてゆく。
ある日、転校生がやってきた。太った身体、わかめの様な髪の毛、脂ぎった顔。彼はなるべくしてイジメの標的になった。
彼の名は「信太」→「野ぶた。」
いじめられ、無視される存在のかれを、クラスに受け入れられるようにするには…そうだ、プロデュースすれば…
コメント:本当の自分と、外の自分。着ぐるみを着て、自分でない自分を演じること、それが確かにうまく世間を泳ぐために有効な手段のひとつかもしれない。
仲間の中に埋もれてつぶされてしまうよりは、多少は自分を偽っても、生在を確保できた方がいいに違いない。
だけど、そこにはやっぱり無理がある。ほんの些細な油断が、そこに大きな落とし穴が口をあけているのだ。

日暮らし 上下

著者:宮部みゆき
出版:講談社
初版:2005.01.01.
紹介:江戸町民のまっとうな日暮らしを翻弄する、大店の「お家の事情」。ぼんくら同心・井筒平四郎と超美形少年・弓之助が「封印された因縁」を解きほぐす。2000年刊「ぼんくら」に続く下町時代小説。
芋洗坂のお屋敷で殺された女主人。その場に居合わせて捕らえられた佐吉。
しかし、事件の真相は思わぬところに…
コメント:「おまんま」「嫌いの虫」「子取り鬼」「なけなし三昧」「日暮らし」
短編と見せかけて、じつは「日暮らし」への序章。
各お話のところどころに「ひぐらし」「日暮らし」という単語が潜んでいる。
宮部みゆきの時代小説は、読んでいくうちに、その下町の世界にするすると引き込まれてしまう。登場する脇役たちも魅力的で、このシリーズの続きがまた楽しみです。

アブダラと空飛ぶ絨毯 空中の城2

著者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
出版:徳間書店
初版:1997.08.31
紹介:「魔法使いハウルと火の悪魔」の続編。主人公アブダラと「空飛ぶ絨毯」とビンの中の精霊「ジンニー」
ベースはアラビアンナイト的である。
平穏な日常から、自らに与えられた運命に立ち向かう力を求められる。
コメント:
ハウルもカルシファーも出てこないのだが・・・実はちゃんと出ているのだった。
コメント:
ハウルもカルシファーも出てこないのだが・・・実はちゃんと出ているのだった。