マンガ心理学入門

著者:ナイジェル・C・ジョンソン 清水佳苗 大前康彦 訳
出版:ブルーバックス
初版:2001.03.20.
紹介:楽しく読めて、誰でもわかる
フロイト、ユングの精神分析から ゲシュタルト心理学、マズローの人間性心理学まで
広大な範囲に及ぶ心理学のエッセンスを、マンガやイラストを駆使してわかりやすく解説。(裏表紙より引用)
コメント:心理学入門というタイトルにひかれて借りた一冊。
心理学という学問の歴史や体系・系列。科学的な側面など全体を網羅するように紹介した内容。
今までに世界中の数多くの人が、人の心や行動を理解しようと試みてきた様子がうかがえる。だからといって、奥深く書かれている本ではないので、もっと奥を知りたい人は別の本を読まなくては…。
中で、一つ収穫。(p103)「Φ象」なるものの説明。ヴェルトハイマーは、2本のスリットの向こう側から2個のライトを照らすというという、簡単な実験装置を作った。それぞれのライトのスイッチを、すばやく(0.06秒ごとの間隔で)入れたり切ったりすることによって、たった一つのライトが前後に動いているという錯覚が生まれた。これが「Φ現象」である。
これって、森博嗣の「Φは壊れたね」のΦじゃないかな?

ぼけになりやすい人、なりにくい人

著者:大友英一
出版:栄光出版社
初版:1999.04.15.
紹介:「生涯現役でぼけ知らずの人生」「ぼけとは」「ぼけはなぜ起きるのか?」「ぼけの危険因子」「脳の老化を防ぐ」「ぼけの予防」「ぼけ予防10か条」医者の立場でわかりやすく解説。
「ぼけ予防の10か条」
1.塩分と動物性脂肪を控えたバランスのよい食事を
2.適度に運動を行い足腰を丈夫に
3.深酒とタバコはやめて規則正しい生活を
4.生活習慣病(高血圧、肥満など)の予防・早期発見・治療を
5.転倒に気をつけよう・頭の打撲はぼけを招く
6.興味と好奇心をもつように
7.考えをまとめて表現する習慣を
8.細やかな気配りをしたよい付き合いを
9.いつも若々しくおしゃれ心を忘れずに
10.くよくよしないで明るい気分で生活を
「ぼけにくい人」
・社交的で融通がきき、いつもほがらかで明るい人
・他の人の心を思いやり、周囲に細かい気配りの出来る人
・なんでもおっくうがらずに、こまめに体を動かす人
・積極的で、いつも新しいことにチャレンジしようとする好奇心と意欲のある人
・仕事や子育て以外に趣味や生きがいを持っている、積極的人生エンジョイ型の人
・常に夢を持ってその実現 ゚ざす人
・おおらかに大声で笑ったり、カラオケなどでストレスを発散しやすい人
・スタイルやファッションに気を使う人
・おしゃべり上手で、友だち付き合いの多い人
・異性への関心を失わない人
・テキパキ主婦で、出たがり好きの主婦
・ボランティア活動などにも進んで参加するような人
・機知に富んだユーモア感覚のある人
・多少は見えをはる人、負けず嫌いの人
・頭の切り換えがうまく、よく学びよく遊ぶ人
コメント:これと逆にぼけに向かう最短距離の道もある。
あぶない!あちこち寄り道していかなくちゃ。
私が気をつけるのは2かな?
あと7については、囲碁や将棋。俳句や短歌・日記や手紙、読書感想文などもいいらしい。

哀歌 上下

著者:曽野綾子
出版:毎日新聞社
初版:2005.03.20.
紹介:アフリカの発展途上国に派遣された修道女。日本での常識が通用しない、そして、この国の現状は日本では誰にも理解してもらえない。そんな中で、部族の対立から政治不安・さらには部族に関わらず手当たりしだいの虐殺が行われる。善意の仮面をかぶった裏切り。聖域である修道院で外国人として生活しながら、身近な人々が次々と命を失っていく。
 その中で、主人公の修道女が自分の立場と、心の中での葛藤が描かれてる。
修道女や神父までもが殺されてゆく惨劇、繰り返される虐殺のドサクサにレイプされる。
ボロボロになって脱出してきたところで、偶然であった善意の日本人。後半3分の1は
修道女としての自分と、お腹の中の決して愛することができない命をめぐってまた葛藤する。
コメント:「ルワンダ虐殺」が舞台だった。その歴史的事実も
知らなかったし…同じ地球で同じ時代を生きていたのに全く気づかず関心を持っていなかった自分自身にも驚くが、とにかく悲惨な事件。
主人公は現世を捨てた修道女とはいっても、けっこう人間くさい。
まして、現地の修道女たちは、慎みとは縁がない。日本とルワンダの様々な差異に驚かされる。
さて後半。善意の日本人は、日本に帰るための飛行機やホテル代など助けてくれるわけだが、次第に、物心両面で手を差し伸べてくれるようになる。修道女であることを辞めた彼女の中で、その人が今まで姿を現すことがなかった「主」「神」に重なっていくように感じたのは私だけだろうか。

しゃぼん玉

著者:乃南アサ
出版:朝日新聞社
初版:2004.11.30.
紹介:親からも見捨てられ、通り魔や強盗傷害を繰り返す
無軌道な若者・伊豆見翔人は、逃亡途中で宮崎の山村にたどり着く。
成り行きから助けた老婆スマの家に滞在することになった翔人は、
近所の老人シゲ爺の野良仕事を手伝ううちに
村の暮らしに馴染んでいくが……
やりたいことをやり尽くして、弾けて消えればいい─
現代の若者の“絶望感”を細やかな心理描写で描き出す傑作長編サスペンス
(表紙カバー・帯より転顧)
コメント:時間が、子供だった自分をいつしか無気力な高校生に作り上げ、だらだらと過ごすばかりの浪人生に仕立て上げ、やる気ゼロの五流大学生にさせた。4人家族はバラバラになり、連続強盗殺人犯ができあがった。その場しのぎですぐやる気をなくし、そんな日々。
 山奥深い平家の落人が隠れ住んだという山里での生活は、それまでの生き方を、根本から変えようとしていた。
 自暴自棄・自堕落な主人公が、90歳の老婆や、山里の人々とのかかわりの中で、それまでの自分と向かい合う。最初の投げやりな態度から、少しずつ変化していく様子が少し希望をつなぎ、しかしたびたび、裏切りそうになり、その心の動きにハラハラする。「ぼうは、ええ子」そうやって頭をなでられる経験がなく育ったのだと、推測させられる。
 いい人たちにめぐり合えて、やり直すことができれば・・・彼は幸せものだ。

野ブタ。をプロデュース

著者:白岩玄
出版:河出書房新社
初版:2004.11.20.
紹介:まるで着ぐるみを着るようにして、誰からも愛されるまじめな高校生を演じる。
本当の自分自身の姿は誰の前にもさらさない。そうすれば、大概のことはうまく通り過ぎてゆく。
ある日、転校生がやってきた。太った身体、わかめの様な髪の毛、脂ぎった顔。彼はなるべくしてイジメの標的になった。
彼の名は「信太」→「野ぶた。」
いじめられ、無視される存在のかれを、クラスに受け入れられるようにするには…そうだ、プロデュースすれば…
コメント:本当の自分と、外の自分。着ぐるみを着て、自分でない自分を演じること、それが確かにうまく世間を泳ぐために有効な手段のひとつかもしれない。
仲間の中に埋もれてつぶされてしまうよりは、多少は自分を偽っても、生在を確保できた方がいいに違いない。
だけど、そこにはやっぱり無理がある。ほんの些細な油断が、そこに大きな落とし穴が口をあけているのだ。

日暮らし 上下

著者:宮部みゆき
出版:講談社
初版:2005.01.01.
紹介:江戸町民のまっとうな日暮らしを翻弄する、大店の「お家の事情」。ぼんくら同心・井筒平四郎と超美形少年・弓之助が「封印された因縁」を解きほぐす。2000年刊「ぼんくら」に続く下町時代小説。
芋洗坂のお屋敷で殺された女主人。その場に居合わせて捕らえられた佐吉。
しかし、事件の真相は思わぬところに…
コメント:「おまんま」「嫌いの虫」「子取り鬼」「なけなし三昧」「日暮らし」
短編と見せかけて、じつは「日暮らし」への序章。
各お話のところどころに「ひぐらし」「日暮らし」という単語が潜んでいる。
宮部みゆきの時代小説は、読んでいくうちに、その下町の世界にするすると引き込まれてしまう。登場する脇役たちも魅力的で、このシリーズの続きがまた楽しみです。

アブダラと空飛ぶ絨毯 空中の城2

著者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
出版:徳間書店
初版:1997.08.31
紹介:「魔法使いハウルと火の悪魔」の続編。主人公アブダラと「空飛ぶ絨毯」とビンの中の精霊「ジンニー」
ベースはアラビアンナイト的である。
平穏な日常から、自らに与えられた運命に立ち向かう力を求められる。
コメント:
ハウルもカルシファーも出てこないのだが・・・実はちゃんと出ているのだった。
コメント:
ハウルもカルシファーも出てこないのだが・・・実はちゃんと出ているのだった。

I’m sorry,mama.アイムソーリー・ママ

著者:桐野夏生
出版:集英社
初版:2004.11.20.
紹介:娼婦の置屋で生まれ、戸籍をもたないまま8年も育ち、福祉施設で過ごしたアイ子。彼女の周囲で起きる火事、嘘と盗み、そして殺人の人生。
いつも持ち歩く白い靴。それは、たった一つの母の形見。アイ子は自分の「ママ」を探していた。
不幸な母と、娘の物語。
コメント:育った環境がその人の人生に大きく影響を及ぼすと思っていた。
しかし、小さな子供に、その環境を変える力はないのだ。だとすれば、幼い子供の身につくことは、その環境から自分の生き抜く力を学習することだけ・・・
それぞれが、皆したたかに生きるすべを探っている。そのことを、誰が非難することができるだろう。

明日の記憶

著者:荻原浩
出版:光文社
初版:2004.10.25.
紹介:広告代理店の部長、50歳。
人の名前がでない・会議の日を忘れ・道に迷う。若年性アルツハイマー病と診断され、必死になってメモを取り、手帳に書き込む。
妻は、病気にいいと聞く食べ物を料理し、藁にもすがる思いであらゆる手立てを講じる。自分ではまわりに知られないようにと、気をつけていたはずなのに…。病気のために閑職へ配置転換される。
娘の結婚式までは、何とか…という思い。
アルツハイマー型老人性痴呆の親を看取った記憶がよみがえる。自分が人でなくなっていく恐怖。
コメント:身につまされる。半日で、一気に読み上げてしまったが、実際の病気の進行は、数年にわたってじわじわとその身と心を蝕み続けるのだ。
自分が自分でなくなっていく不安。心配の余り、いろいろなことを何度も確認せずにはいられない。若年性であるとすれば、その恐怖は計り知れない。
いまの私にとっては、何度も読み返したくなる一冊。

対岸の彼女

著者:角田光代
出版:文藝春秋
初版:2004.11.10.
紹介:「もしも、今の自分が、もっと違う自分だったら…」
スタイルがよかったら?美人だったら?明るくて、すぐに人の中に溶け込めたら?
こんな自分を捨てて、新しく人生を歩きたい。
 そんな思いは、多くの人の心の中にあるのだろうか?
自分の生活を変えるために、働くことを決め、面接を受けた。目の前に現れた女社長は輝いて見えた。
コメント:女性なら、一度は感じたことがあるかもしれない。
あのドロドロとした仲間意識。どこに属したらいいのか?その中で、うまく卒なく生きてゆくことの「ウソくささ」。
自己嫌悪。現実の呪縛から逃れるために模索する。
 ウーム、その気持ちはわからなくもない。が、もっと自分に自信を持って、自分を好きになりたいなぁ。