しゃべれども しゃべれども

著者:佐藤多佳子
出版:新潮社
初版:1997.08.30.
紹介:しゃべることに抵抗を持っている、テニスコーチ・劇団員・小学生・引退した野球選手。それぞれが抱える、様々な個人的な問題。自信を失いつつある人たちが、ひとりの噺家のもとに集まった。落語を通して、それぞの問題に正面から向かい合うことになる。年齢も、立場も異なる人々との交流の中から彼らが手にしたものはなんだったのか。
コメント:結構テンポよく読むことができ、また心の葛藤もあり、なかなかいい作品でした。おすすめです。

「少年A」この子を生んで

著者:「少年A」の父母
出版:文藝春秋
初版:1999.04.
紹介:前評判が悪かったこの本。「親の言い訳」にすぎないと言う・・・・
事件前を思い出しながら書いた記録。突然の逮捕後の日記。どれも混乱の中で自分自身が混乱している。親自身が起きている状況を納得できていない。続く事情聴取の中でも、何も分かっていなかった様子が窺われる。被害者側への謝罪の言葉のとなりに並ぶ、自分が置かれている状況への不満。○○を食べた。△△がおいしかった。食欲がない。周囲の人の励ましが嬉しかった。etc・・・
報道関係者の執拗な取材。残された家族の生き方。そして「長男A」への様々な思い。あまりに人間的すぎるのだ。
コメント:同じ年の子供を持つ親として、事件当時は「なぜこんな事件が起きたのか?」というよりも、「なぜ、親が気づかないのだろう?」という気持ちでした。
我が子がこんなことをするはずがない、という思いはわかるけど・・・やはり不可解。
多分この本は、マスコミからの要望があって書かされた文なのだろう。こんな文を本として出す意味があるのかという意見も多いだろう。
でも、ふと思ってしまうのだ。社会の目、被害者側からの視点で考えれば「いったいどんな子育てをしているのだ!!」「なぜ気づかなかったんだ?」という気持ちですが、逆に、Aの親の立場になってみたら・・・・。
・3人の子供を育てる専業主婦
・子供のためにPTAの仕事を引き受け
・地域の人たちともつきあい、サークル活動にも参加し
・勉強のことはうるさく言わず、子供の興味のあることをのばそうとする
・子供の意思を尊重私塾にも行かず。
ほとんど、私の生活と重なってしまう!!
違うのは、体罰を与えないことくらいなのだ。
いったい、どこで、こんなに「少年A」との世界が離れてしまったのだろう?

龍は眠る

著者:宮部みゆき
出版:出版芸術社
初版:1991.02.22.
紹介:嵐の中、増水した道路でマンホールのふたが開けられていた。その中に子供が落ちたらしい。ふたを開けたのは、故意か?過失か?
その場に居合わせた少年は、透視能力があるという。少年が言うことは真実なのか?それとも巧妙なトリックなのか?
送られてきた白紙の手紙、無言の脅迫。犯人の狙いは・・・。
コメント:人が持たない能力を持って生まれたために、生きることが難しくなる。
透視能力・サイキック、冒頭からズンズン引き込まれていきました。
奇想天外なお話ではなく、もしかしたら本当にいるのではないかと思わせる無理のないストーリー。人の心を読んでしまうが故に犯罪の中に引き込まれてしまう、危うい少年達。さすがに宮部みゆき!!と言う感じでした。

雪の断章

著者:佐々木丸美
出版:講談社
初版:1975.11.12.
紹介:孤児院で育ち、養家での辛い仕打ちから逃れた飛鳥が出会ったのは、5才のとき迷子になって助けてもらった青年だった。親代わりの青年祐也と、飛鳥を取り巻く様々な思い。養家への消し去ることのできない恨み・・・・・。そして成長とともに彼女の祐也への思いは形を変えていく。
コメント:言ってみればひとつのラブストーリー。
孤児というちょっとヒロインに感情移入しにくいお話だったけど、「あしながおじさん」的青年の存在と主人公の成長や心の葛藤は、いかにもドラマチックで引き込まれてしまう。
珍しくもう一度ページを繰り直してしまった。続編も読んでみよう。

岳物語

著者:椎名誠
出版:集英社
初版:1985.05.20.
紹介:椎名誠の息子、岳君とのエピソードをまじえたエッセイ風小説。
コメント:天然児(?)岳君と、彼を取り巻く人々。
父親としての暖かい眼差しを通した文章は、魅力的だ。岳くんのともだち、 先生、つりとの出会い。彼の成長の記憶がエピソードにつづられる。岳くんは、確かに魅力的ですね。

武則天.1

著者:原百代
出版:講談社文庫
初版:1985.05.15.
紹介:武則天───この女帝は、日本では一般に「則天武后」と呼ばれ、正しい歴史的理解をされていない。しかし、彼女は単に唐の高宗の后だっただけでなく、自ら起こした周のまさしく皇帝だったのだ。───それはともかく、まずは一代の女帝の生涯をその生誕から見て行こう。時は大唐帝国、太宗の貞観二年(628)(裏表紙より引用)
コメント:中国の歴史を全く知らない私が読んでも、興味深く読めそうな本です。
時代背景、風土、生活習慣なども詳しく説明が加えられ、中国初心者の私でも思わず引き込まれてしまいました。
「てん足」という風習は聞いたことがありましたが、後宮での「宦官」については初めて知り、とても驚きました。照る(武則天)がこの後どのように太子と関わっていくのか興味深いです。

おちくぼ姫

著者:田辺聖子
出版:角川文庫
初版:1990.05.25.
紹介:貴族のお姫さまであっても、意地悪い継母に育てられ召使い同然。粗末な身なりで、一日中縫い物をさせられ、床が一段低く落ちくぼんだ部屋にひとりぼっちで暮らしている姫君────といえば、”シンデレラ姫”を思い浮かべることでしょう。姫君と青年貴公子のラブストーリーでもある「おちくぼ姫」は千年も昔に書かれた、王朝版「シンデレラ物語」です。
(表紙カバーより抜粋)
コメント:かるくって、サラサラ読めて、
「おちくぼ姫」の性格がいいので、なんだか読んでいて嬉しくなってしまいました。
たまにはこんな軽い本もいいわ。

冷たい密室と博士たち

著者:森博嗣
出版:講談社文庫
初版:1999.03.15.
紹介:同僚の誘いで低温実験室を訪ねた犀川助教授とお嬢様学生の西之園絵萌絵。
だがその夜、衆人環視かつ密室状態の実験室の中で、男女に明の大学院生が死体となって発見された。被害者は、そして犯人は、どうやって中に入ったのか!?人気の師弟コンビが事件を推理し真相に迫るが・・・・・。究極の森ミステリィ第2弾。(裏表紙より引用)
コメント:密室殺人?理系小説だとか、新しいミステリィだとか言われているけどそうかな?トリックもある程度予想できて、違和感もない。私は充分に楽しめました。
次作も読んでみよう。

ベイブ 都会へ行く

著者:ジャスティン・コーマン&ロン・フォンテス
出版:小学館
初版:1994.04.20.
紹介:大好きな牧場を救うために都会に出たベイブ。ところが街ではとんでもない事態に巻き込まれ、牧場を救うどころか、動物たちの生活も危険に脅かされている。
動物たちに平和な暮らしはやってくるのか?そして、ベイブは牧場を救うことができるのか?
コメント:映画「ベイブ」の続編。やっぱり映画の方が見ていて楽しいだろうな。

秘密

著者:東野圭吾
出版:文藝春秋社
初版:1998.09.10.
紹介:スキーバスの事故に遭遇した妻と娘。重体の妻と奇跡的に助かった娘。
父と娘の、一見平和な生活が始まったかに見えたが・・・・
コメント:ヒロスエ主演で映画になったというこの作品。
結構気に入りました。妻と夫、娘と父。この肉体と精神のきわめて均衡のとりにくい関係の中でのそれぞれの苦悩。
さいごのほうほ、ユーミンの「翳りゆく部屋」がでてきたところで思わず目が熱くなってしまいました。