スティル・ライフ

著者:池澤夏樹
出版:中央公論社
初版:1988.02.29.
紹介:スティル・ライフ
星をみること、あるいは山の形、せせらぎや蝉時雨。
彼と話す話はそんな話だった。
仕事の話とか、家族の話だとか、そんな話をしたことがない。
ある日、彼から電話がかかってきた。「変な話」をもちかけるという・・・・。
ヤーチャイカ
かんなと父・文彦はふたり暮らし。
生活は変化している。日常だと思っているものはいつ変わるかわからない、父はロシア人と出会い、カンナはもうディプロドクスを飼い続ける事はできないのだ。
コメント:そうですね。「いつも」という日常が、少しずつ形を変えていく経過・・・
が感じられます。個人的には「君が住む星」の方が好きですね。

震える岩

著者:宮部みゆき
出版:新人物往来社
初版:1993.09.30.
紹介:死んだはずの男が生き返った?
不思議な力を持つ「お初」にはその男が若返ったように見える。油の大樽の中に小さな白い手が見えた。
続く子殺し、「りえ」・・・・死人憑きはいったい何なのか?
「浅野内匠頭」が切腹した場所にあるという「夜泣き石」。お初がそこでみたものは・・・?100年の時を越え、怨念が今よみがえる・・・
コメント:宮部みゆきの「時代物」初挑戦!
あー。おもしろかった。忠臣蔵の実は隠された真相を追いながら、当時の権力につぶされていく武士たちの悲しい後ろ姿が見えます。

ターン

著者:北村薫
出版:新潮社
初版:1997.08.30.
紹介:突然、車が飛び出してきた。信じられないような割り込み!次の瞬間、君はハンドルを右に切った、そしてブレーキ・・・・そこへ左折のダンプカーが!
記憶は前の日にさかのぼる。すべて昨日のことだ。自己にあったその時間になったとき・・・・君はまた昨日の同じ場所、同じ時間に戻るのだ。永遠に繰り返される時・・・・
<時と人>の三部作の2作目。「ターン」
心の中に聞こえる声、いつもふたりで話していた、それはごく自然のことだったのだが・・・繰り返す時間の中で、ある日電話のベルが鳴った。そこから聞こえる声は・・・
コメント:北村薫さん2冊目。おもしろかった。あっという間に読了!
これが男の人の手によって書かれたものとは信じがたい。
<時と人>の三部作の3作目。「リセット」は、まだ出版されていないので、次が楽しみですB北村薫さんの他の作品も読んでみたいな。

本当は恐ろしいグリム童話 Ⅱ

著者:桐生操
出版:KKベストセラーズ
初版:1999.03.05.
紹介:・ラプンツェル(魔女と呼ばれた女の復讐)
・ヘンゼルとグレーテル(人殺し領主の少年狩りの罠)
・三枚の蛇の葉(真実の愛の結末)
・ブレーメンの音楽隊(さえない男たちの反乱)
・人魚姫(浮気な王子とひたむきな騎士)
・裸の王さま(詐欺と承知で家臣を試す)
・幸福な王子(生身の王子を愛した少女)
グリム童話、他の一見簡素な文章の行間に、人生や愛に関するより深い示唆を読みとり、童話が本当に意味するところのものを引き出しえぐり出した。
コメント:一作ごとの解説が参考になります。
本当はこういう時代背景の中でできた話なんですね。
私は「ブレーメンの音楽隊」が個人的には一番おもしろかったです。
「ブレーメンの音楽隊」は実は「脱サラ楽団」だった!

犠牲(サクリファイス)わが息子・脳死の11日

著者:柳田邦男
出版:文藝春秋社
初版:1995.07.30.
紹介:25歳になる息子の自死から、脳死へいたるまでの11日間。書くことを生業とする父が、息子の心の中、精神的苦悩を彼の存在証明のために書きつづる。
「誰の役にも立てず、誰からも必要とされない存在。」から「自己犠牲」によって他者の役に立ち、自らの存在を明らかにする。彼の意志は「骨髄バンク」にドナーとして登録された。父はその延長として、腎臓提供に同意したが、息子の脳死を、人の死と認めつつも、家族として医療の立場での医師との間に様々な思いの違いを感じ始める。
コメント:脳死について、今まで漠然と考えていましたが、あらためていろんなことを考えさせられました。
自分の息子の心の病に6年間も気づかずにいたという著者の苦悩。息子の「自己犠牲」を、生かすことによって、人の役に立ちたいを言う希望を叶える。
いいとか悪いとかではなくて、本当にいろんなことを考えさせられた本でした。

羊をめぐる冒険

著者:村上春樹
出版:講談社
初版:1982.10.15.
紹介:一枚の写真に写った、一匹の写真を探して旅が始まる。
羊の目的は?羊と共に生きた者はどうなるのか?
そして、探し当てた場所にはすでに羊もネズミも存在しなかった。
長い長い過去を振り返って、旅をした先で失ったものは・・・・。
コメント:全く不思議な「村上ワールド」その中にあって、共通しているのは、子供を産まない夫婦と、しっぽの曲がった猫。いったいこれは・・・???

屍鬼 上・下

著者:小野不由美
出版:新潮社
初版:1998.09.30.
紹介:ある樅の林に囲まれた小さな村で次々と人が死んでゆく。原因は不明、新しい疫病か?町とは孤立した村。人々が結束した共同体。村は「死」によって包囲されている。
突然の転居、死の直前の退職。それは、人々の死とどんな関係があるのか?
他者に存在を認められること。「人々に求められる存在になること」と、「自分自身の本当の姿でいきるようとすること」この二つの間で常に揺れ動いている。彼が生きてゆく場所はどこにあるのか?
コメント:上下合わせて、厚さ8cm。一瞬読むのを躊躇するほどの存在感!!
しかし読み始めてからは、徐々にその世界に引き込まれていきました。読後感は人も屍鬼も悲しい。読み物としてはとても面白かったです。

蟻 上・下

著者:ベルナール・ウエルベル
出版:ジャンニ・コミュニケーションズ
初版:1995.03.05.
紹介:「昆虫記」と「80日間世界一周」を生んだ国フランスから、21世紀文学の夜明けを思わせる奇想天外な文学が今上陸した。主人公はアリ。そう、あの蟻である。彼らは都市を建設し、連合を形成し、外敵と戦う。蟻たちをこよなく愛する作家ベルナール・ウエルベルが13年の歳月をかけて書き上げた、想像を絶する不思議の国の冒険物語。(表紙扉から引用)
コメント:蟻の博物誌、いや、意志を持った蟻の物語。まるで見てきたような蟻の世界と、一方まるで無関係そうな人間世界での出来事に、果たしてどこに接点があるのか。
まったく持って奇想天外なのだが、ここまで来ると、続編の「蟻の時代」を読まずに入られない。
・6本のマッチで4つの正三角形を作る方法は、すぐわかったんだけどなぁ・・・・
・蟻や蜘蛛の生殖なんて知らなかったから、これもビックリ!

天の瞳 少年編Ⅰ

著者:灰谷健次郎
出版:角川書店
初版:1998.02.27.
紹介:天の瞳 幼年編の続編、表紙の扉から
小学校5年生になった倫太郎。学級担任のヤマゴリラと衝突することはあるものの、おおらかで魅力的な仲間たちに囲まれて、へこたれずに前へ進み続けている。
そんなある日、事件が起こった。リエが学校に来なくなったのだ。リエの登校拒否の原因はなんなのか、自分に何ができるのか。悩み抜いた倫太郎がとった行動とは・・・。
様々な人たちとの出会いを真摯に見つめながら成長する倫太郎。灰谷健次郎が登校拒否の問題を世に問う、待望のシリーズ第3巻。
コメント:主人公倫太郎の成長を追いながら、その周囲の人たちとの関わりが描かれているのですが、倫太郎に教えられることがたくさんあります。彼の両親、そして、祖父との関係もとっても大きなものがありました。子供を持ち育てている私にとって、考えさせられることがとても多いです。この先も気になりますが、この本は多くの人に読んで欲しいな。

ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編

著者:村上春樹
出版:新潮社
初版:1995.10.05.
紹介:「でもあなたには今のところ鳥刺し男もいないし、魔法の笛もない」
「僕には井戸がある」と僕は言った。
「それをあなたが手に入れることができればね」、ナツメグは上等なハンカチをそっと広げるみたいに微笑んだ。
奇妙な夏が終わり、井戸は埋められた。そして人々はみんなどこかに去っていった。ねじまき鳥の声ももう聞こえない。僕に残されたのは、頬の深く青いあざと、謎の青年から引き渡された野球のバットだけだ。でも僕はやがて知ることになる────何かが僕を新しい場所に導こうとしていることを。意識と過去の帳の奥に隠されたねじの在処を求めて、地図のない冒険の旅が開始される。そしてその僕の前に、ねじまき鳥の年代記(クロニクル)が、楡の鈴音とともに静かにひもとかれる。完結編。(本の扉より引用)
コメント:自分の足下、自身の存在自体、知り得ない歴史の呪縛。見えているもの、見えていないもの。とっても不思議な世界です。
ウーン、これが村上ワールドというのか・・・・?
「羊をめぐる冒険」も借りてきたんだけど、ちょっと一休みです。