蟻 上・下

著者:ベルナール・ウエルベル
出版:ジャンニ・コミュニケーションズ
初版:1995.03.05.
紹介:「昆虫記」と「80日間世界一周」を生んだ国フランスから、21世紀文学の夜明けを思わせる奇想天外な文学が今上陸した。主人公はアリ。そう、あの蟻である。彼らは都市を建設し、連合を形成し、外敵と戦う。蟻たちをこよなく愛する作家ベルナール・ウエルベルが13年の歳月をかけて書き上げた、想像を絶する不思議の国の冒険物語。(表紙扉から引用)
コメント:蟻の博物誌、いや、意志を持った蟻の物語。まるで見てきたような蟻の世界と、一方まるで無関係そうな人間世界での出来事に、果たしてどこに接点があるのか。
まったく持って奇想天外なのだが、ここまで来ると、続編の「蟻の時代」を読まずに入られない。
・6本のマッチで4つの正三角形を作る方法は、すぐわかったんだけどなぁ・・・・
・蟻や蜘蛛の生殖なんて知らなかったから、これもビックリ!

天の瞳 少年編Ⅰ

著者:灰谷健次郎
出版:角川書店
初版:1998.02.27.
紹介:天の瞳 幼年編の続編、表紙の扉から
小学校5年生になった倫太郎。学級担任のヤマゴリラと衝突することはあるものの、おおらかで魅力的な仲間たちに囲まれて、へこたれずに前へ進み続けている。
そんなある日、事件が起こった。リエが学校に来なくなったのだ。リエの登校拒否の原因はなんなのか、自分に何ができるのか。悩み抜いた倫太郎がとった行動とは・・・。
様々な人たちとの出会いを真摯に見つめながら成長する倫太郎。灰谷健次郎が登校拒否の問題を世に問う、待望のシリーズ第3巻。
コメント:主人公倫太郎の成長を追いながら、その周囲の人たちとの関わりが描かれているのですが、倫太郎に教えられることがたくさんあります。彼の両親、そして、祖父との関係もとっても大きなものがありました。子供を持ち育てている私にとって、考えさせられることがとても多いです。この先も気になりますが、この本は多くの人に読んで欲しいな。

ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編

著者:村上春樹
出版:新潮社
初版:1995.10.05.
紹介:「でもあなたには今のところ鳥刺し男もいないし、魔法の笛もない」
「僕には井戸がある」と僕は言った。
「それをあなたが手に入れることができればね」、ナツメグは上等なハンカチをそっと広げるみたいに微笑んだ。
奇妙な夏が終わり、井戸は埋められた。そして人々はみんなどこかに去っていった。ねじまき鳥の声ももう聞こえない。僕に残されたのは、頬の深く青いあざと、謎の青年から引き渡された野球のバットだけだ。でも僕はやがて知ることになる────何かが僕を新しい場所に導こうとしていることを。意識と過去の帳の奥に隠されたねじの在処を求めて、地図のない冒険の旅が開始される。そしてその僕の前に、ねじまき鳥の年代記(クロニクル)が、楡の鈴音とともに静かにひもとかれる。完結編。(本の扉より引用)
コメント:自分の足下、自身の存在自体、知り得ない歴史の呪縛。見えているもの、見えていないもの。とっても不思議な世界です。
ウーン、これが村上ワールドというのか・・・・?
「羊をめぐる冒険」も借りてきたんだけど、ちょっと一休みです。

ビリー・ミリガンと23の棺 上・下

著者:ダニエル・キイス
出版:早川書房
初版:1994.07.05.
紹介:1977年にオハイオ州で連続強姦犯として起訴されたビリー・ミリガンは、精神異常のため無罪となり、1979年、最重警備施設である州立ライマ精神障害犯罪者病院へと移送された。だがそこは、体罰に電気ショック療法を用い、薬物で患者を廃人にしてしまう恐るべき場所だった。筆記用具の使用を禁じられたビリーは、シーツをほぐした糸で文字を作り、ライマ病院の内部での出来事を作家ダニエル・キイスに書き送った。人格たちの統合は崩れ、交渉術に長けたアレン、反社会的な少年トミー、犯罪者のケビンなどの別人格が交互に現れ、「憎悪」の管理者であるレイゲンが主導権を握るようになった。混乱の時期を迎えたビリーに救いの日は訪れるのか?(表紙扉より引用)
コメント:「24人の・・」で、ライマに送られたその後、病気そのものよりも、その治療・対応が政治的に利用されていくのがとても辛い。最後まで、ミリガンがどういう結末を迎えるのか想像ができません。「24人の・・・」で出現した、統合された「教師」はどうなるのか?ミリガンの人格はひとつになるのか?
多重人格は、現実から逃げよう、別のところで生きようという力?
それなら、生きる望みを失ったときに、多重人格は・・・・・
「児童虐待」は、子どもに引き継がれる。だとすれば、「虐待」をする親もまた、「虐待」を受けて育ったのかもしれない・・・・ミリガンは救われるか?
はーっ、終わった。やっと気になっていた問題が解決した。

漱石の思い出

著者:夏目鏡子・述 松岡譲・筆録
出版:文藝春秋
初版:1994.07.10.
紹介:名作「坊ちゃん」に描かれる松山でのいろいろな出来事。夏目家の親戚のこと。熊本での婚礼の様子から、微に入り細を穿って語られる、文豪・夏目漱石の日常生活。お見合いで出会ってから死別するまでを、共に過ごした婦人でなければ垣間見ることのできなかった人間・漱石の赤裸々な姿を浮き彫りにする。解説・半藤末利子(裏表紙より引用)
コメント:妻の目から見た漱石。
生の漱石に出会ったような気持ちです。
漱石も天才肌の人だったようですが、その漱石と暮らした鏡子さんの精神力はまたすごいものがありました。明治の女性がみんなそうだったとは思えないし、鏡子さんでなくては漱石の妻は務まらなかったでしょう。
彼女の本音も、あちこちにかかれていて、思わず笑ってしまいます。
完璧な良妻と言うよりは、悪妻といわれていたようですが、この本を読むと、飾らない人柄に惹かれてしまいます。
夏目漱石の作品は「吾輩は猫である」「ぼっちゃん」くらいしか読んでないのですが、いつかほかの作品も読んでみたいと思うようになりました。

日出処の天子・全7巻

著者:山岸凉子
出版:白泉社文庫
初版:1994.03.22.
紹介:敏達亭の時代、政治の中枢では崇仏派の蘇我馬子、神道派の物部守屋───2台勢力が争っていた。馬子の長子、毛人は後宮に迷い込むうちに厩戸王子とめぐりあう。その驚くべき才能と不思議な能力に毛人はたちまち王子のとりこになる。古代日本国家の創始期を舞台に、まったく新しい厩戸王子像を描く歴史巨編。
コメント:コミックです。厩戸王子の持つ超能力!毛人への思い。実際歴史上でもかなり不思議なところが多い人物だったようです。奇想天外なストーリーなのだが、もしかしたら・・・?と思わせてくれるところが、なかなか面白かったです。なぜ厩戸王子が天皇にならなかったか?ということの考察も何となく納得してしまうのでした。

天の瞳 幼年編Ⅰ.Ⅱ

著者:灰谷健次郎
出版:角川書店
初版:1996.01.30.
紹介:倫太郎、保育園ではなかなか先生の思うようにはなってくれない。彼が尊敬するのは大工の棟梁のおじいちゃん、おじいちゃんの言うことには、じっと耳を傾ける。
少年倫太郎の成長期。
コメント:主人公の男の子、とっても豊かな感受性を持っているのですが、なかなか一般的には受け入れられにくい面もあるのね。そんな男の子を取り巻く、人々とのお話です。両親や、保育園の先生たち、小学校の先生、いろんな人が、様々な関わり方をしているのですが、とっても興味深く読んでいます。男の子の成長や、反応も、驚くものがあります。このあと、少年期では、いよいよ中学時代を迎えると思うのだけど、そんな展開になるのか、とても興味があります。

森のなかの海賊船

著者:岡田淳
出版:理論社
初版:1995.07.
紹介:昔々、こそあどの森に宝物をかくした海賊がいた。
その名も「海賊フラフラ」。───はたしてそのありかは!?
その鍵は、ある一冊の本の中にかくされていた。
コメント:こそあどの森シリーズ、第3段。
海賊フラフラのお話はとっても面白い、船は本当に存在するのか?
そして宝は、本当にあるのか?最後まで、ワクワクドキドキだったんですけどね。
宝物って・・・・見つかった方がよかったんでしょうか・・・・?

チグリスとユーフラテス

著者:新井素子
出版:集英社
初版:1999.02.10.
紹介:宇宙歴4XX年、惑星ナインの最後の子どもとなった「ルナ・E」は、過去にコールドスリープについたものたちを覚醒させた。子供を産むことそれだけが人生の目的だった「マリア・D」。惑星管理局員として、特別教育を受け、仕事に忠実だった「ダイアナ・B・ナイン」。惑星ナインの直系の子孫「特権階級」として暮らしていた「関口朋実」。
ルナは疑問を投げかける「なぜ、母は私を、最後の子供を産んだのだろう?」
そして、ルナはとうとう、ナインの母「レイディ・アカリ」をもコールドスリープから目覚めさせてしまうのだ。目覚めたレイディのしたことは・・・そして、ルナは救われるのか?
コメント:この本は、地球からの移民。惑星ナインの最後がかかれているSFですが、舞台は遠い惑星でありながら、その中で語られている問題は、現代の問題でもあるという、いろいろと考えさせられることの多いお話です。これも話し言葉でかかれています。
新井素子さんの作品の根底には、女性であること、生き方、地球全体の自然とりわけ植物に、こだわりがあるようです。
かなり引き込まれて読んでしまいました。

バースデイ

著者:鈴木光司
出版:角川書店
初版:1999.02.05.
紹介:「リング」「らせん」「ループ」に続く最終章「バースデイ」です。
今までの話が、ここで一つの結末を迎える。
「ヒトガンウィルス」を治すことはできるのか?ループ界で増殖する「山村貞子」の行く末はどうなったのか?そして、ループ界へ戻った薫と、こちらの世界の礼子の思いが最後に・・・
今までの話が、ここで一つの結末を迎えます。
コメント:「バースデイ」というタイトルから、何かの「誕生」であることは予想していましたが、本当は、もっと違ったものが生まれてくるのではないかと、思っていました。たとえば「山村貞子」が生まれるとか・・・・
しかし、短編形式を取っていると思わせておきながら、全体としては、一つであるという二重構造。いつもながら、鈴木光司には、してやられてしまいます。
「リング」はホラー小説として、映画、ドラマで有名になりましたが、本当はこのシリーズは、家族・妻・子どもへの愛情がテーマなのじゃないかしら。
鈴木光司さんの「家族へのあふれる思い」がいっぱいのラストで、私は満足いたしました。ハイ!