著者:ダニエル・キイス
出版:早川書房
初版:1992.08.31.
紹介:24人の多重人格を持つ男。多重人格とは?なぜ多重人格が発生したのか?ひとつの肉体に存在する24人の意識。それぞれがお互いを知り得ない少年期から、人格がお互いを自己管理していく青年期。「好ましいもの」と「好ましくないもの」。自己の中の人格を否定して生きる方法。空白の時間・・・・。
事件の真相はどうだったのか?そして、彼に罪はあるのか?
コメント:多重人格、よく知らない言葉でした。初めは、ビリーUの立場に立って読んでいたので、多重人格ゆえの理不尽さを感じていました。しかし、自己内部で否定される人格の存在については、どんなに「好ましくないもの」であっても、否定しないで受け入れるべきではないかと感じるようになりました。
そして、一市民として、犯罪の被害者となりうる立場で考えれば、やはり近くに住んでいたらおそろしいと感じるのは当然のことだと思います。多重人格は治るのか?続編が気になります。
著者:岡田淳
出版:理論社
初版:1997.04.00.
紹介:行方不明になったポットさんを探して、森のみんなの捜索が始まる。
そのときスキッパーの前に現れた一羽のふくろうと、そこに隠された意外な秘密とは・・・・
コメント:トマトさんは二重人格だった?その秘密を知っていたのはポットさんだけ。トマトさん本人も知らない。トマトさんがショックを受けないように、ポットさんはみんなに秘密を打ち明ける。愛するっていうことは、相手のいいところも悪いところもすべて丸ごと受け入れることなんだ・・・。
この本、ゆーゆに小学校の図書館から借りてきてもらいました。
著者:藤本ひとみ
出版:新潮社
初版:1998.10.25.
紹介:フランス国王フランソワー1世の時世。王妃と愛妾エタンプ夫人。王太子アンリと王太子妃カトリーヌと愛人ディアーヌ。
それぞれの女たちが、自分の立場を守るために画策する。
暗殺者ロレンティーノはなぜ暗殺者となったのか?彼の生い立ちからフィレンツェでの出来事まで。彼に語られることによって、物語は進む。彼は自分の存在価値をどのような形で表そうとしたのか?
コメント:画策に満ちている。自分が手にしていると思ったものが、実は何もなかったことに気づいたとき、人はどのように自分自身の存在意義を見いだすか・・・・
藤本ひとみの作品のひとつとして、また違った形の作品です。ロレンツィーノの、暗殺者となった精神の動きはなかなか興味深く読んだ。ただ物語としては、ちょっと今ひとつ盛り上がらなかったな。
著者:藤本ひとみ
出版:中央公論社
初版:1998.07.07
紹介:マリーアントワネット。フランスの王妃として断頭台で処刑された。彼女の生涯とはいったい・・・。
彼女は、母、マリアテレジアの「自己の信念を押し進める頑固さ」と、父、フランツシュテファンの、「軽薄さの遺伝子」を持って生まれた。悪い方へと進んでしまったのだ。
彼女は最後まで、フランス王妃ではなく、オーストリア大公女たった。
コメント:小説じゃありません。写真資料を提示しながら、マリーアントワネットの幼少の生い立ち。父母の様子から、彼女の性格を描き出し、フランス王妃となってからの行動を分析する。とっても面白い歴史本です。
著者:岡田淳
出版:理論社
初版:1995.04.
紹介:ある日、無口なスキッパーに届いた小包。ところが手紙が雪でぬれて読めない。送られてきた木の実の料理法を探して、スキッパーはしぶしぶ森のみんなを訪ねることにした。
コメント:友達とうまくつきあうことが苦手な、内向的な男の子が、木の実をきっかけに、少しずつ殻を破って外にでていく。最初はドキドキ。やさしい人、おせっかいな人、いじわるな人、話を聞いてくれない人。いろんな人に出会うけど、木の実が友達にしてくれる。けっこう、いいお話です。
いちばん素敵なのは、作者が書いた、みんなのおうちのイラストです。これが気に入った!
著者:梨木香歩
出版:理論社
初版:1996.11.
紹介:バーンズ屋敷の裏庭には、何か秘密があると、昔からいわれていた。ある日、照美は住む人のいなくなったバーンズ屋敷に入り込む。そして、・・・
向こう側の世界に入り込んだテルミィをまちうけていたのは?照美の旅が始まった。
第1回児童文学ファンタジー大賞を受賞。
先月、梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」を読んで、2作目です。
コメント:児童文学となっていますが、母親の立場で読めば、娘と母。そして、娘だった母とその母とのあいだで、何故か繰り返される、癒やしのない、傷つけあう関係。でも、傷を恐れてはいけない。心を閉じていてはいけない。「この人の世界に自分が入っていかないといけない」結構、心にひびくものがあります。
ジャンルとしては、ファンタジーで、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」や、CSルイスの「ナルニア物語」を思い出しました。
違うのは、大人になっても「こころ」があれば、「裏庭」に通じる道が閉ざされていないところです。そして、大人になってしまった昔の子どもたちが、忘れていた、心を取り戻すところです。問題は、「子ども」だけにあるのではない、と言うことに気付かされました。
著者:柴田よしき
出版:角川書店
初版:1995.05.25.
紹介:第15回横溝正史賞受賞
推理小説・警察小説・恋愛小説・女性小説・性愛小説・・・・・どれでも当てはまり、そしてどれかひとつではない。この本は「緑子の物語」。
「少年レイプのポルノビデオ」の被害者を追う緑子。犯人は意外なところから・・・
コメント:この手の本、あまり読んだことがありませんでした。「炎都」などのシリーズとも全く違う雰囲気です。犯人が、半分すぎた当たりから何となく分かっちゃったの。だから後半3分の1が、今ひとつしっくりこないの。推理小説だったらもっとスパッ!と切っちゃうでしょ?後ろの方の「緑子の物語」は、推理小説っぽくないな。
あ!!でも、RIKOはけっこう好きですけど・・・
著者:宮本輝
出版:新潮社
初版:1986.03.20.
紹介:「夢見通り」と言う名に不似合いな人々。競馬狂いの太楼軒の親父。ライオンズクラブのメンバーになりたいパチンコやの経営者。金儲けがすべて(?)の村田時計店の夫婦。男色家のカメラ屋。美男のバーテンをものにしてしまうスナックの女主人。元やくざだった肉屋の兄弟。彼らはそれぞれ心の中に、小さな傷をかくし持っているのだ。
コメント:このお話の中で、私が一番好きなの人は、「背中一面に”くりからもんもん”をほった、元やくざの肉屋の兄、竜一です。なんかね・・・人間って本当に生もないもんだけど、まあ捨てたもんでもないかな?と言う感じです。
著者:宮本輝
出版:角川書店
初版:1992.05.30.
紹介:ハンガリーの留学生がやってきた。彼を受け入れる城田家に巻きおこる様々な影響。日本と異文化がぶつかる。母の視点から、息子恭太の視点からそれぞれの心の中にある、日本とハンガリー異質なものとの関わりを語る。そして、もう一人の主人公「自分を犬だと思っていない犬、フック。」が家族一人一人の心を和ませてくれる。
コメント:フックの人間くさいところがとてもかわいい。犬が好きな人にはたまらない作品だろうな。
平和な「日本」民族紛争の「ハンガリー」。異なるものとの関わりの中で恭太の中に芽生えたものは・・・・。
最後で泣いてしまいました。
著者:宮部みゆき
出版:光文社
初版:1998.10.30.
紹介:”あたしは装填された銃だ。持てる力を行使し、無軌道に殺人を続ける若者たちを処刑する。人は自分のためにふさわしい罰を受けなければならない。”
青木淳子はそう信じて、血と炎と黒焦げ死体とともに復活した。
連続焼殺事件の背後に、”念力放火能力者”の存在を疑う警視庁の石津ちか子・牧原良計時は、過去の事件関係者を洗い、ついに淳子の存在に気付くが・・・・。さらに”ガーディアン”を名乗る自警組織が一連の”処刑”は淳子によるものと察知!彼らは巧妙に淳子を組織に誘う。
正義とは何か。いま、最も熱き宮部みゆきが鋭く問う興奮の超大作完結!
コメント:自分以外の超能力者との出会い。自分の存在意義。生きる目的を見いだすことによって、人間らしさを取り戻しつつある。けれど、自分の選択は本当に正しいのか?そして彼女の背後で動く、「がーディアン」の本当の目的は・・・?
ああ、彼女は幸せだったのだろうか。いろいろな人間の様々な過去と、現在の思いが絡み合う。だけど・・・そこには必然は、生まれない。