著者:藤本ひとみ
出版:中央公論社
初版:1998.07.07
紹介:マリーアントワネット。フランスの王妃として断頭台で処刑された。彼女の生涯とはいったい・・・。
彼女は、母、マリアテレジアの「自己の信念を押し進める頑固さ」と、父、フランツシュテファンの、「軽薄さの遺伝子」を持って生まれた。悪い方へと進んでしまったのだ。
彼女は最後まで、フランス王妃ではなく、オーストリア大公女たった。
コメント:小説じゃありません。写真資料を提示しながら、マリーアントワネットの幼少の生い立ち。父母の様子から、彼女の性格を描き出し、フランス王妃となってからの行動を分析する。とっても面白い歴史本です。
著者:岡田淳
出版:理論社
初版:1995.04.
紹介:ある日、無口なスキッパーに届いた小包。ところが手紙が雪でぬれて読めない。送られてきた木の実の料理法を探して、スキッパーはしぶしぶ森のみんなを訪ねることにした。
コメント:友達とうまくつきあうことが苦手な、内向的な男の子が、木の実をきっかけに、少しずつ殻を破って外にでていく。最初はドキドキ。やさしい人、おせっかいな人、いじわるな人、話を聞いてくれない人。いろんな人に出会うけど、木の実が友達にしてくれる。けっこう、いいお話です。
いちばん素敵なのは、作者が書いた、みんなのおうちのイラストです。これが気に入った!
著者:梨木香歩
出版:理論社
初版:1996.11.
紹介:バーンズ屋敷の裏庭には、何か秘密があると、昔からいわれていた。ある日、照美は住む人のいなくなったバーンズ屋敷に入り込む。そして、・・・
向こう側の世界に入り込んだテルミィをまちうけていたのは?照美の旅が始まった。
第1回児童文学ファンタジー大賞を受賞。
先月、梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」を読んで、2作目です。
コメント:児童文学となっていますが、母親の立場で読めば、娘と母。そして、娘だった母とその母とのあいだで、何故か繰り返される、癒やしのない、傷つけあう関係。でも、傷を恐れてはいけない。心を閉じていてはいけない。「この人の世界に自分が入っていかないといけない」結構、心にひびくものがあります。
ジャンルとしては、ファンタジーで、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」や、CSルイスの「ナルニア物語」を思い出しました。
違うのは、大人になっても「こころ」があれば、「裏庭」に通じる道が閉ざされていないところです。そして、大人になってしまった昔の子どもたちが、忘れていた、心を取り戻すところです。問題は、「子ども」だけにあるのではない、と言うことに気付かされました。
著者:柴田よしき
出版:角川書店
初版:1995.05.25.
紹介:第15回横溝正史賞受賞
推理小説・警察小説・恋愛小説・女性小説・性愛小説・・・・・どれでも当てはまり、そしてどれかひとつではない。この本は「緑子の物語」。
「少年レイプのポルノビデオ」の被害者を追う緑子。犯人は意外なところから・・・
コメント:この手の本、あまり読んだことがありませんでした。「炎都」などのシリーズとも全く違う雰囲気です。犯人が、半分すぎた当たりから何となく分かっちゃったの。だから後半3分の1が、今ひとつしっくりこないの。推理小説だったらもっとスパッ!と切っちゃうでしょ?後ろの方の「緑子の物語」は、推理小説っぽくないな。
あ!!でも、RIKOはけっこう好きですけど・・・
著者:宮本輝
出版:新潮社
初版:1986.03.20.
紹介:「夢見通り」と言う名に不似合いな人々。競馬狂いの太楼軒の親父。ライオンズクラブのメンバーになりたいパチンコやの経営者。金儲けがすべて(?)の村田時計店の夫婦。男色家のカメラ屋。美男のバーテンをものにしてしまうスナックの女主人。元やくざだった肉屋の兄弟。彼らはそれぞれ心の中に、小さな傷をかくし持っているのだ。
コメント:このお話の中で、私が一番好きなの人は、「背中一面に”くりからもんもん”をほった、元やくざの肉屋の兄、竜一です。なんかね・・・人間って本当に生もないもんだけど、まあ捨てたもんでもないかな?と言う感じです。
著者:宮本輝
出版:角川書店
初版:1992.05.30.
紹介:ハンガリーの留学生がやってきた。彼を受け入れる城田家に巻きおこる様々な影響。日本と異文化がぶつかる。母の視点から、息子恭太の視点からそれぞれの心の中にある、日本とハンガリー異質なものとの関わりを語る。そして、もう一人の主人公「自分を犬だと思っていない犬、フック。」が家族一人一人の心を和ませてくれる。
コメント:フックの人間くさいところがとてもかわいい。犬が好きな人にはたまらない作品だろうな。
平和な「日本」民族紛争の「ハンガリー」。異なるものとの関わりの中で恭太の中に芽生えたものは・・・・。
最後で泣いてしまいました。
著者:宮部みゆき
出版:光文社
初版:1998.10.30.
紹介:”あたしは装填された銃だ。持てる力を行使し、無軌道に殺人を続ける若者たちを処刑する。人は自分のためにふさわしい罰を受けなければならない。”
青木淳子はそう信じて、血と炎と黒焦げ死体とともに復活した。
連続焼殺事件の背後に、”念力放火能力者”の存在を疑う警視庁の石津ちか子・牧原良計時は、過去の事件関係者を洗い、ついに淳子の存在に気付くが・・・・。さらに”ガーディアン”を名乗る自警組織が一連の”処刑”は淳子によるものと察知!彼らは巧妙に淳子を組織に誘う。
正義とは何か。いま、最も熱き宮部みゆきが鋭く問う興奮の超大作完結!
コメント:自分以外の超能力者との出会い。自分の存在意義。生きる目的を見いだすことによって、人間らしさを取り戻しつつある。けれど、自分の選択は本当に正しいのか?そして彼女の背後で動く、「がーディアン」の本当の目的は・・・?
ああ、彼女は幸せだったのだろうか。いろいろな人間の様々な過去と、現在の思いが絡み合う。だけど・・・そこには必然は、生まれない。
著者:赤川次郎 絵:永田智子
出版:角川書店
初版:1997.10.10.
紹介:「近ごろまれにみる善意の人」につける天使のはね。その羽をなんとどろぼうの背中につけてしまった。その羽を取り戻すことを頼まれたピコタンは・・・・
天国にいきたい少女は、自分のことをかわいそうだと、思ってほしかった。
<いやな大人になる前に死ななきゃ、天国にいけないじゃない。!>
天使の役を頼まれたどろぼうは、少女に未来をおいてきた。そして羽を返して・・・
コメント:大人になりたくない、自分を認めることのできない、少女の不安を救ってくれたのは?
表紙の絵が、「星の王子様」を連想させて優しい気持ちになります。でもやっぱり、死ななければならなかったのかしら・・・本当の天使になったとしても。
著者:宮部みゆき
出版:光文社
初版:1998.10.30.
紹介:深夜の廃工場。3人の若者によって、男が水槽に投げ込まれようとしていた。それを目撃したOL・青木淳子は、念をこめて掌から火炎を放ち、瞬時に若者二人を焼殺した。彼女は念力放火能力を隠し持つ超能力者だった!若者たちに連れ去られた恋人の救出を瀕死の被害者に頼まれた淳子は、逃走した残るひとりの行方を探すが・・・・
警視庁放火捜査班の刑事・石津ちか子は、不可解な焼殺の手口から、ある未解決事件との類似に気付く。東京・荒川署の牧原刑事とともに捜査を開始したちか子の前に、新たな火炎焼殺事件が・・・!
コメント:超能力者により「私刑」。怒り、恨み、正義。彼女の行動は正当化されるものなのか?彼女の中の欲求と、正当性とのジレンマに悩みつつも、限りなく激しい殺戮を押さえられなくなる。彼女の人生はどうなるのか?
著者:鈴木光司
出版:角川書店
初版:1998.01.31.
紹介:静かに増殖をはじめた「転移性ヒトガンウィウス」。研究者のまわりに感染者が多いのは何故か?父をガンに冒され、恋人もガンのキャリア・・・・産まれてくる子供を救うために「転移性ヒトガンウィルス」に立ち向かう。
過去の巨大プロジェクト「ループ」が、ガン化した原因は?長寿村と重力異常地域との関連は?
「リング」「らせん」に続く「ループ」自己増殖する細胞の正体は・・・。
コメント:よくぞこんな話を思いつくな・・・と思う。やられました。
作者もおもしろくって、楽しくってしょうがないだろうなぁ。
やはりこの作品も「リング」「らせん」と共通の思いが根底に流れているみたい。「鈴木パパ」バンザイ!