ふまじめな天使

著者:赤川次郎 絵:永田智子
出版:角川書店
初版:1997.10.10.
紹介:「近ごろまれにみる善意の人」につける天使のはね。その羽をなんとどろぼうの背中につけてしまった。その羽を取り戻すことを頼まれたピコタンは・・・・
天国にいきたい少女は、自分のことをかわいそうだと、思ってほしかった。
<いやな大人になる前に死ななきゃ、天国にいけないじゃない。!>
天使の役を頼まれたどろぼうは、少女に未来をおいてきた。そして羽を返して・・・
コメント:大人になりたくない、自分を認めることのできない、少女の不安を救ってくれたのは?
表紙の絵が、「星の王子様」を連想させて優しい気持ちになります。でもやっぱり、死ななければならなかったのかしら・・・本当の天使になったとしても。

クロスファイア 上

著者:宮部みゆき
出版:光文社
初版:1998.10.30.
紹介:深夜の廃工場。3人の若者によって、男が水槽に投げ込まれようとしていた。それを目撃したOL・青木淳子は、念をこめて掌から火炎を放ち、瞬時に若者二人を焼殺した。彼女は念力放火能力を隠し持つ超能力者だった!若者たちに連れ去られた恋人の救出を瀕死の被害者に頼まれた淳子は、逃走した残るひとりの行方を探すが・・・・
警視庁放火捜査班の刑事・石津ちか子は、不可解な焼殺の手口から、ある未解決事件との類似に気付く。東京・荒川署の牧原刑事とともに捜査を開始したちか子の前に、新たな火炎焼殺事件が・・・!
コメント:超能力者により「私刑」。怒り、恨み、正義。彼女の行動は正当化されるものなのか?彼女の中の欲求と、正当性とのジレンマに悩みつつも、限りなく激しい殺戮を押さえられなくなる。彼女の人生はどうなるのか?

ループ

著者:鈴木光司
出版:角川書店
初版:1998.01.31.
紹介:静かに増殖をはじめた「転移性ヒトガンウィウス」。研究者のまわりに感染者が多いのは何故か?父をガンに冒され、恋人もガンのキャリア・・・・産まれてくる子供を救うために「転移性ヒトガンウィルス」に立ち向かう。
過去の巨大プロジェクト「ループ」が、ガン化した原因は?長寿村と重力異常地域との関連は?
「リング」「らせん」に続く「ループ」自己増殖する細胞の正体は・・・。
コメント:よくぞこんな話を思いつくな・・・と思う。やられました。
作者もおもしろくって、楽しくってしょうがないだろうなぁ。
やはりこの作品も「リング」「らせん」と共通の思いが根底に流れているみたい。「鈴木パパ」バンザイ!

遙都 混沌出現

著者:柴田よしき
出版:徳間書店
初版:1999.03.31.
紹介:大地震と人の生き血を吸う妖怪たち。十万人を超える死者が出た京都大災害の一年後には、琵琶湖の湖底からホタルに似た巨大昆虫が人々を襲い、テニアン島が空を飛んで、京都上空に浮かんでいる。いまや町は危機管理委員会の支配下にあった。黒き神々の手先はあらゆる機関に入り込んでいる。未曾有の災厄に立ち向かい、いったん死んだものの、貴船神社の龍神から、命を授かった地質調査技師の木梨香流は恋人の真行寺君之とともに、時空の裂け目にある闇の牢獄に部屋ごと閉じこめられていた。大異変が始まった・・・・!(裏表紙より引用)
コメント:話はますます大きく広がりを見せる、宇宙。この世界を操るものはどこにいるのか?
「炎都」・「禍都」を一気に読みすすめて、アーッ!まだ完結していない!
一体この続きはどうなるのだろう?個人的にはヤモリの珠星が、どうなるのかが一番気になるところだったりします。まあ、とにかく面白いので読んでみて!(笑)

禍都

著者:柴田よしき
出版:徳間書店
初版:1997.08.31.
紹介:京都を襲ったみぞうの大災厄から十ヶ月。大火災に始まり、人を襲う妖怪たちに蹂躙され、逃げまどった恐怖もようやく薄れ、人々も街も再建に忙しい。地質調査会社の技師・木梨香流は、あの事件の渦中に離ればなれになった恋人・真行寺君之を忍んで悲しみに浸ってはいられなかった。君之は紅姫によって時の狭間に連れ去られたらしい。・・・・サイパンのジャングル内の洞窟で、妙なものが見つかった。象牙色の皮をなめしたようなものの上に見たこともない文様が並んでいる。それが『アルルの謎文字』であることが分かった時・・・!?(裏表紙より引用)
コメント:記憶を失った君之は・・・・
時と場所を超えて展開する壮大なスペクタクルロマンに、圧倒される。ヤモリの珠星は、今度は魅力的な女の子になった?天狗・妖怪・水神・・・奇想天外なキャラクターの出現にも関わらずなかなか楽しい!

炎都

著者:柴田よしき
出版:徳間書店
初版:1997.02.28.
紹介:木梨香流は上賀茂の地下水を計る水位計をみて首を傾げた。数値が急激に下がっている。今日との地質調査会社の技師として七年。香流が感じた異変は予兆の一つに過ぎなかった。京都府警捜査一課の村雨祐馬は京都御苑で発見された変死体を前にとまどっていた。四時間前まで生きていた男が、全身のあらゆる体液を抜き取られ、カラカラに干からびきっている。そんな異常殺人が人間に可能なのか?ミイヨ化された変死体はこれで二件目。ところが、それはその後、京都中を恐怖と絶望にたたき込んだ大災厄のほんの序曲だったのだ。(裏表紙より引用)
コメント:帝の転生。火妖族の生き残り、紅姫。破られた五ぼう星の封印。「アルルの謎文字」とらえどころのない大きな背景に、あれよあれよと言う間に引き込まれるファンタジーミス eリー!面白いです。香流と君之はどうなるのか?

時計を忘れて森へ行こう

著者:光原百合
出版:東京創元社
初版:1998.04.30.
紹介:迷い込んだの森の中、なにげなく踏み出した一歩が彼女の運命を変えた・・・。時計を探して森をさまよう翠の前に現れた、穏やかで柔らかい声の主。ひとみに暖かい光を宿すその人は、手探りの粗い「事実」という糸から美しい「真実」を織り上げる名人だった・・・・。(帯より引用)
コメント:長野県清里の風景を思い出し、キープの清泉寮のアイスクリームの味を思い浮かべながらこの本を読みました。
16才の翠の目をとおして、森や自然の力から目に見えない真実を感じるステキな一冊です。

鉄道員ぽっぽや

著者:浅田次郎
出版:集英社
初版:1997.04.30.
紹介:乙松は根っからの鉄道員だった。定年を間近に様々な思いが押し寄せる。何よりも鉄道員であることを優先させたために、妻の最期を見とることもできず、風邪をひいた娘ユッコの命を生後2ヶ月で失った。そしてその娘のために泣く事もできなかったのだ。
そんなぽっぽやの乙松の前に少女が現れた・・・・。
コメント:見たこともないのに映像が心に飛び込んでくるようなお話。
ちょっとうらぶれたもの悲しいお話のつまった短編集。
その中で私が気に入ったのは2番目に収録されている「ラブレター」でした。
やくざから頼まれて、出稼ぎ外国人に戸籍を貸して偽装結婚をした吾郎。見知らぬ女が死の間際に残した吾郎宛の手紙。心の中で何かがかわった・・・・。
何故かわからないけれど、とってもとっても哀しいのに好きです。不思議・・・。

六番目の小夜子

著者:恩田陸
出版:新潮社
初版:1998.08.20
紹介:恩田陸さんのデビュー作を改稿したもの。学園物のミステリー。
その年の「サヨコ」に選ばれた物は、始業式の朝、誰にも知られないように、花瓶に赤い花を生けなければならない。ところが、「サヨコ」の目の前に、もうひとりの赤い花を持った少女が現れた。少女の名は「津村小夜子」。
そして誰も知らないうちに伝説の「サヨコ」は始まった。
地方の伝統的な高校を舞台に、忘れられていた過去の事件と伝説がよみがえる。
コメント:おもしろい!私の好きな学園物。今時の高校生じゃないけど、どこにもありそうは高校3年生の生活をベースに、心の中にひそむ不安が「異界」を作り出す。
恩田陸さんの本4冊目ですが、「六番目の小夜子」と「球形の季節」が好きです。
今度は「不安な童話」を読んでみたいです。

カモメに飛ぶことを教えた猫

著者:ルイス・セプルベダ 訳:河野万里子
出版:白水社
初版:1998.06.05.
紹介:油で汚れた海に落ちたカモメと、そのカモメを助けようとした猫・ゾルバのお話。カモメは猫のゾルバに3つの願いを託して息を引き取った。
・私の卵は食べない・ひなが生まれるまでタマゴの面倒をみる・そしてひなに飛ぶことを教えてやる。
猫のゾルバと仲間たち。そしてカモメのひなは飛べるのか?
コメント:読んでいて心が暖かくなる本です。
カモメと猫という「異なるものどうし」がどうしたら心を通わせることが出来るか。共に生きて行くにはどうしたらいいのか?「異なる」からと言って排斥するのではなく思いやる心の大切さ。そして「自分が心の中からそうしたいと願ったものが、全力で挑戦したとき」に、その願いが実現する。小5の娘とこの本を読み、しあわせな思いに浸っているふくろうでした。