著者:ダニエル・キイス
出版:早川書房
初版:1994.07.05.
紹介:1977年にオハイオ州で連続強姦犯として起訴されたビリー・ミリガンは、精神異常のため無罪となり、1979年、最重警備施設である州立ライマ精神障害犯罪者病院へと移送された。だがそこは、体罰に電気ショック療法を用い、薬物で患者を廃人にしてしまう恐るべき場所だった。筆記用具の使用を禁じられたビリーは、シーツをほぐした糸で文字を作り、ライマ病院の内部での出来事を作家ダニエル・キイスに書き送った。人格たちの統合は崩れ、交渉術に長けたアレン、反社会的な少年トミー、犯罪者のケビンなどの別人格が交互に現れ、「憎悪」の管理者であるレイゲンが主導権を握るようになった。混乱の時期を迎えたビリーに救いの日は訪れるのか?(表紙扉より引用)
コメント:「24人の・・」で、ライマに送られたその後、病気そのものよりも、その治療・対応が政治的に利用されていくのがとても辛い。最後まで、ミリガンがどういう結末を迎えるのか想像ができません。「24人の・・・」で出現した、統合された「教師」はどうなるのか?ミリガンの人格はひとつになるのか?
多重人格は、現実から逃げよう、別のところで生きようという力?
それなら、生きる望みを失ったときに、多重人格は・・・・・
「児童虐待」は、子どもに引き継がれる。だとすれば、「虐待」をする親もまた、「虐待」を受けて育ったのかもしれない・・・・ミリガンは救われるか?
はーっ、終わった。やっと気になっていた問題が解決した。
著者:夏目鏡子・述 松岡譲・筆録
出版:文藝春秋
初版:1994.07.10.
紹介:名作「坊ちゃん」に描かれる松山でのいろいろな出来事。夏目家の親戚のこと。熊本での婚礼の様子から、微に入り細を穿って語られる、文豪・夏目漱石の日常生活。お見合いで出会ってから死別するまでを、共に過ごした婦人でなければ垣間見ることのできなかった人間・漱石の赤裸々な姿を浮き彫りにする。解説・半藤末利子(裏表紙より引用)
コメント:妻の目から見た漱石。
生の漱石に出会ったような気持ちです。
漱石も天才肌の人だったようですが、その漱石と暮らした鏡子さんの精神力はまたすごいものがありました。明治の女性がみんなそうだったとは思えないし、鏡子さんでなくては漱石の妻は務まらなかったでしょう。
彼女の本音も、あちこちにかかれていて、思わず笑ってしまいます。
完璧な良妻と言うよりは、悪妻といわれていたようですが、この本を読むと、飾らない人柄に惹かれてしまいます。
夏目漱石の作品は「吾輩は猫である」「ぼっちゃん」くらいしか読んでないのですが、いつかほかの作品も読んでみたいと思うようになりました。
著者:山岸凉子
出版:白泉社文庫
初版:1994.03.22.
紹介:敏達亭の時代、政治の中枢では崇仏派の蘇我馬子、神道派の物部守屋───2台勢力が争っていた。馬子の長子、毛人は後宮に迷い込むうちに厩戸王子とめぐりあう。その驚くべき才能と不思議な能力に毛人はたちまち王子のとりこになる。古代日本国家の創始期を舞台に、まったく新しい厩戸王子像を描く歴史巨編。
コメント:コミックです。厩戸王子の持つ超能力!毛人への思い。実際歴史上でもかなり不思議なところが多い人物だったようです。奇想天外なストーリーなのだが、もしかしたら・・・?と思わせてくれるところが、なかなか面白かったです。なぜ厩戸王子が天皇にならなかったか?ということの考察も何となく納得してしまうのでした。
著者:灰谷健次郎
出版:角川書店
初版:1996.01.30.
紹介:倫太郎、保育園ではなかなか先生の思うようにはなってくれない。彼が尊敬するのは大工の棟梁のおじいちゃん、おじいちゃんの言うことには、じっと耳を傾ける。
少年倫太郎の成長期。
コメント:主人公の男の子、とっても豊かな感受性を持っているのですが、なかなか一般的には受け入れられにくい面もあるのね。そんな男の子を取り巻く、人々とのお話です。両親や、保育園の先生たち、小学校の先生、いろんな人が、様々な関わり方をしているのですが、とっても興味深く読んでいます。男の子の成長や、反応も、驚くものがあります。このあと、少年期では、いよいよ中学時代を迎えると思うのだけど、そんな展開になるのか、とても興味があります。
著者:岡田淳
出版:理論社
初版:1995.07.
紹介:昔々、こそあどの森に宝物をかくした海賊がいた。
その名も「海賊フラフラ」。───はたしてそのありかは!?
その鍵は、ある一冊の本の中にかくされていた。
コメント:こそあどの森シリーズ、第3段。
海賊フラフラのお話はとっても面白い、船は本当に存在するのか?
そして宝は、本当にあるのか?最後まで、ワクワクドキドキだったんですけどね。
宝物って・・・・見つかった方がよかったんでしょうか・・・・?
著者:新井素子
出版:集英社
初版:1999.02.10.
紹介:宇宙歴4XX年、惑星ナインの最後の子どもとなった「ルナ・E」は、過去にコールドスリープについたものたちを覚醒させた。子供を産むことそれだけが人生の目的だった「マリア・D」。惑星管理局員として、特別教育を受け、仕事に忠実だった「ダイアナ・B・ナイン」。惑星ナインの直系の子孫「特権階級」として暮らしていた「関口朋実」。
ルナは疑問を投げかける「なぜ、母は私を、最後の子供を産んだのだろう?」
そして、ルナはとうとう、ナインの母「レイディ・アカリ」をもコールドスリープから目覚めさせてしまうのだ。目覚めたレイディのしたことは・・・そして、ルナは救われるのか?
コメント:この本は、地球からの移民。惑星ナインの最後がかかれているSFですが、舞台は遠い惑星でありながら、その中で語られている問題は、現代の問題でもあるという、いろいろと考えさせられることの多いお話です。これも話し言葉でかかれています。
新井素子さんの作品の根底には、女性であること、生き方、地球全体の自然とりわけ植物に、こだわりがあるようです。
かなり引き込まれて読んでしまいました。
著者:鈴木光司
出版:角川書店
初版:1999.02.05.
紹介:「リング」「らせん」「ループ」に続く最終章「バースデイ」です。
今までの話が、ここで一つの結末を迎える。
「ヒトガンウィルス」を治すことはできるのか?ループ界で増殖する「山村貞子」の行く末はどうなったのか?そして、ループ界へ戻った薫と、こちらの世界の礼子の思いが最後に・・・
今までの話が、ここで一つの結末を迎えます。
コメント:「バースデイ」というタイトルから、何かの「誕生」であることは予想していましたが、本当は、もっと違ったものが生まれてくるのではないかと、思っていました。たとえば「山村貞子」が生まれるとか・・・・
しかし、短編形式を取っていると思わせておきながら、全体としては、一つであるという二重構造。いつもながら、鈴木光司には、してやられてしまいます。
「リング」はホラー小説として、映画、ドラマで有名になりましたが、本当はこのシリーズは、家族・妻・子どもへの愛情がテーマなのじゃないかしら。
鈴木光司さんの「家族へのあふれる思い」がいっぱいのラストで、私は満足いたしました。ハイ!
著者:村上春樹
出版:新潮社
初版:1994.04.12.
紹介:「悪いこと?」
「とても悪いことです」と加納クレタは予言した。森のなかにすむ予言の鳥のように、小さなよく通る声で。
猫が消えたことは、始まりに過ぎなかった。謎の女はその奇妙な暗い部屋から、僕に向かって電話をかけつづける。「私の名前を見つけてちょうだい」。加納クレタは耐えがたい痛みに満ちた人生から、無痛の薄明をくぐり抜け、新しい名前をもった自己へと向かう。名前、名前、名前。名付けられようのないものが名前を求め、名前のあるものが空白の中にこぼれ落ちていく。それにしても僕が不思議な井戸の底で見いだしたものは・・・・。(本の扉より引用)
コメント:彼の抱える問題が少しずつ姿を現しはじめてくる。彼が失ったものはなんだったのか?戻ってくるのか、或いは先に進むのか?
これでもかというように、自己の内部を、ズルズルと引っぱり出してくる村上春樹。どうしてこんなにまで・・・・?という感じですが、彼にとっては、この作品を書くことが、自分自身の存在を確認することなんだろうな。やっぱり、続きを読まなきゃ落ち着かないです。
著者:村上春樹
出版:講談社
初版:1990.06.25.
紹介:40歳を前に、日本を離れる。40歳までにできること、やっておくべきことが何かあるはずだ。40歳を気にできるようになるものもあるかもしれないし、パタッと何かが失われるかもしれない・・・・。それを見極めるために、しばらく日本を離れることにした。そのころの旅のエッセイ。
コメント:イタリア(ローマ)、ギリシャ、南ヨーロッパの国を旅しながら暮らした3年間の村上夫妻。旅のガイドブックにはない、もう一つのイタリア、ギリシャの側面が見えてくる。
世界地図を膝の上に載せ、私も一緒にギリシャの島々を旅した気分だ。
著者:村上春樹
出版:新潮社
初版:1994.04.12.
紹介:「何もかも忘れてしまいなさい。私たちはみんな温かな泥の中からやってきたんだし、、いつかまた温かな泥の中に戻っていくのよ」とその女は言った。
ねじまき鳥が世界のねじを巻くことをやめたとき、平和な郊外住宅地は、底知れぬ闇の奥へと静かに傾斜をはじめる。暴力とエロスの予感が、やがてあたりを包んでいく。誰かがねじを巻き続けなければならないのだ。誰かが。1984年の世田谷の路地裏から1938年の満州蒙古国境、駅前のクリーニング店から意識の井戸の底まで、ねじのありかを求めて探索の年代記は開始される。(本の扉より引用)
コメント:村上春樹さんは団塊の世代なんですね。いろんな方に薦められた本ですが、第1部では、まだプロローグが始まったばかりで、まだ問題の本質が明らかにされてきません。というか主人公がまだ問題に気づいていないのですから、私に分かるはずもないのです。ただ、作者が自分自身の体の、心の奥深くにある何かを探っているらしいことだけは分かるのですが・・・なんだか分からないけど、このままじゃ、終われない・・・。