著者:原百代
出版:講談社文庫
初版:1985.07.15.
紹介:高宗の寵を得て、武照は首尾良く宮廷に返り咲いた。しかも単なる寵妃でなく皇后の地位を手にしたのだ。もはや、女性としての最高の地位!だが、彼女はその程度の栄華に満足しているほど甘くはなかった。昇りつめた権力の座を確保し、よりいっそうの強権を獲得するまで油断はみじんも許されない。(裏表紙より引用)
コメント:武后は高宗の名の下に自分の権力を高めていった。このことが結果として、女性の地位を高めることになったのはとてもおもしろい。恐ろしいほどしたたかで、頭の切れる女性だったのです。
期待した我が子・弘との間に生まれた大きな亀裂。我が子に否定される母は辛いだろうな。
著者:森博嗣
出版:講談社
初版:1996.09.05.
紹介:伝説的数学者、天王寺翔蔵博士伸す無三ツ星かんでくる済ますパーティーが行われる。人々がプラネタリウムに見とれている間に、庭に立つ大きなブロンズのオリオン像が忽然と消えた。博士は言う。「この謎が解けるか?」像が再び現れたとき、そこには部屋の中にいたはずの女性が死んでいた。しかも、彼女の部屋からは、別の死体が発見された。パーティーに招待されていた犀川助教授と西之園萌絵は、不可思議な謎と殺人の真相に挑戦する。(表紙扉より引用)
コメント:「消えたオリオンの謎」を絶対に解いてみせる!!と気合いを入れて読みました(笑)
言葉の表面を読むだけでなく作者がそこここに隠してあるはずのヒントを注意深く拾い・・・・・ヤッタ!!
「消えたオリオン像の謎」の方は比較的早い段階でトリックがわかりました。そして事件・・・・。解明されない不合理を独自に解くことによって糸口にたどり着く。
いいなぁ・・・森博嗣の推理小説は私好みです。いわゆるミステリーというのとはひと味違いますね。ちょっと気になるのは、最後に公園にいるおじいさん。あれはいったい誰だったの?やっぱり○○○○なの?
著者:トリイ・L・ヘイデン
出版:早川書房
初版:1996.03.31.
紹介:小さいときから虐待を受けて育った女の子が傷害事件を起こした。
家庭内暴力・貧困・性的虐待にむしばまれた少女が、教師トリイと出会うことで、次第に心を開いていくノンフィクションの記録です。
コメント:前から気になっていた本だったのですが、女の子のおかれた悲惨な家庭環境。何人もの問題を抱えた子供達のクラスを受け持つ一教師、トリイの、希望と絶望。感想なんて、一言ではいえないです。
著者:佐々木丸美
出版:講談社
初版:1980
紹介:悲恋に咲いたガラス窓の雪の花。破れた恋に痴れる花嫁人形───。
悲しき愛と秘められた恋の運命を謳いあげる愛のメルヘンの世界。
「雪の断章」「忘れな草」の続刊。(本の紹介より引用)
コメント:なんでまたこんなにひどい境遇の女の子を作らなければならないの?
最初の部分は本当にかわいそうで理不尽な気持ちでいっぱいでした。
途中、友達ができるところで他の作品との共通した登場人物も出現して、3作がひとつの根から派生している物語だということがわかってきました。
だけど、いくらお話だからって、ここまでひどい状況を作り出さなくてもいいと思うな。私はこんなのイヤだ!!と言いつつ・・・中途半端は気になるので「忘れな草」も読んでしまおう。
著者:原百代
出版:講談社文庫
初版:1985.06.15.
紹介:唐の意地をかけて高句麗に赴いた太宗の親征も結局は失敗だった。そのうえ征旅の帰途に得た病は、容易に回復しそうにない。もし帝が死んだら、たとえ一度でも龍床に侍した宮人は即刻尼寺行きとなるのだ。「武姓の女」であるゆえに、帝の寵を失い、今は一宮人にすぎない武照に過酷な運命は容赦なく迫る・・・・・・。(裏表紙より引用)
コメント:武照の人心をつかむ策略が見事です。太宗の死後、尼寺から高宗のもとへ復活するその手管といったら・・・・。そして王后の心をつかみ、子供を産んでからは自らが后となるまでの、その策略ぶり!!
原 百代の解き明かす正しい「武則天」像。思わず引き込まれてしまいます。
著者:北村薫
出版:創元推理文庫
初版:1994.04.01.
紹介:「円紫さんと私」シリーズの一冊目。北村薫のデビュー作です。
女子大生の私と、噺家円紫さんの出会い。小さなエピソードにまつわるちょっとした不思議。推理小説とも、ミステリーともいえない、円紫さんの観察眼と優しい心が魅力的な作品です。
コメント:先日、先に「秋の花」を読んでしまったのでちょっと物足りなく感じてしまいました。北村薫の作品の最初にこれを読めば良かったのかな。
ミステリーとしてではなく、人の心を読む本という感じです。
男の人なのに女子大生の一人称で書いているし、北村薫ってつくづく不思議です。男性の立場で書かれている作品もあるのかな?
著者:荻原規子
出版:福武書店
初版:1991.12.20.
紹介:遠子と小倶那は双子のように育った。だが小倶那が都に出、「大蛇の剣」を手にしたとき、ふたりの絆は断たれてしまった。小倶那は大君の策謀にのせられ、神代から勾玉を守ってきた遠子の郷を焼き滅ぼしてしまう。「小倶那はタケルじゃ。」郷の大巫女の言葉に遠子は・・・・?
神々が地上を去って数百年の後、残された「力」をめぐって輝の神の裔、闇の神の裔の人々の選択を描きます。
「空色勾玉」で人気を博した著者による、ヤマトタケル伝説を下敷きにした壮大なファンタジー。(表紙扉より引用)
コメント:自分では選ぶことのできない定めによって、翻弄されるふたり。一番大切な人だからこそ、自分の手で殺さなければならない。
ファンタジーでありながらラブストーリー。ちょっと長いかな?と思ったけれど、思わず引き込まれあっという間に読んでしまいました。おもしろかったです。次は「紅色天女」だ!
著者:桐生操
出版:KKベストセラーズ
初版:1998.07.
紹介:・シンデレラ
・白雪姫
・眠れる森の美女
・ヘンデルとグレーテル
・他
グリム童話、他の一見簡素な文章の行間に、人生や愛に関するより深い示唆を読みとり、童話が本当に意味するところのものを引き出しえぐり出した。
コメント:どちらかというと、子供に読ませたくないグリム童話と言う感じです(笑)
でも、娘は、読んでます。中学校の図書室にもあるんですよ。
でも、そのころの社会背景が解説されているので、おもしろいです。
この本も、図書館で予約して、4ヶ月待ちでした。
著者:佐藤多佳子
出版:新潮社
初版:1997.08.30.
紹介:しゃべることに抵抗を持っている、テニスコーチ・劇団員・小学生・引退した野球選手。それぞれが抱える、様々な個人的な問題。自信を失いつつある人たちが、ひとりの噺家のもとに集まった。落語を通して、それぞの問題に正面から向かい合うことになる。年齢も、立場も異なる人々との交流の中から彼らが手にしたものはなんだったのか。
コメント:結構テンポよく読むことができ、また心の葛藤もあり、なかなかいい作品でした。おすすめです。
著者:「少年A」の父母
出版:文藝春秋
初版:1999.04.
紹介:前評判が悪かったこの本。「親の言い訳」にすぎないと言う・・・・
事件前を思い出しながら書いた記録。突然の逮捕後の日記。どれも混乱の中で自分自身が混乱している。親自身が起きている状況を納得できていない。続く事情聴取の中でも、何も分かっていなかった様子が窺われる。被害者側への謝罪の言葉のとなりに並ぶ、自分が置かれている状況への不満。○○を食べた。△△がおいしかった。食欲がない。周囲の人の励ましが嬉しかった。etc・・・
報道関係者の執拗な取材。残された家族の生き方。そして「長男A」への様々な思い。あまりに人間的すぎるのだ。
コメント:同じ年の子供を持つ親として、事件当時は「なぜこんな事件が起きたのか?」というよりも、「なぜ、親が気づかないのだろう?」という気持ちでした。
我が子がこんなことをするはずがない、という思いはわかるけど・・・やはり不可解。
多分この本は、マスコミからの要望があって書かされた文なのだろう。こんな文を本として出す意味があるのかという意見も多いだろう。
でも、ふと思ってしまうのだ。社会の目、被害者側からの視点で考えれば「いったいどんな子育てをしているのだ!!」「なぜ気づかなかったんだ?」という気持ちですが、逆に、Aの親の立場になってみたら・・・・。
・3人の子供を育てる専業主婦
・子供のためにPTAの仕事を引き受け
・地域の人たちともつきあい、サークル活動にも参加し
・勉強のことはうるさく言わず、子供の興味のあることをのばそうとする
・子供の意思を尊重私塾にも行かず。
ほとんど、私の生活と重なってしまう!!
違うのは、体罰を与えないことくらいなのだ。
いったい、どこで、こんなに「少年A」との世界が離れてしまったのだろう?