新しい歌をうたえ

著者:鈴木光司
出版:新潮社
初版:1997.09.20.
紹介:鈴木光司がいろいろな雑誌に書いたエッセイをまとめたエッセイ集。
第1章・心はいつも処女航海
第2章・文壇最強の男とは
第3章・小説こぼれ話
第4章・魂を揺さぶる小説
第5章・新しい世界の若者たちへ
鈴木光司の少年時代や生き方・子育て・小説を書く思いなどが語られていてとても興味深い。
コメント:ホラー作家でない鈴木光司の魅力や秘密がわかってとても嬉しくなりました。「第4章・魂を揺さぶる小説」の中では、何冊かの小説が紹介されているが、池澤夏樹の「母なる自然のおっぱい」は、読んでみたいと思いました。
どちらかというと、楽観的で、未来に希望を持っている。これからの子供達に、そして子供を育てている親たちにむけたメッセージです。

はるかニライ・カナイ

著者:灰谷健次郎
出版:理論社
初版:1997.05.
紹介:いのち輝く海と美しい自然に囲まれ、暮らす島人たちのこころは優しい。
今、沖縄・嘉何渡敷村から送る、長編小説。
コメント:沖縄戦で受けた、人々の今もなお続く戦争の傷跡。
その自然あふれる美しい島で暮らす人々と、本土で、心に傷を持った少女の出会い。
今私が、持っている価値観との違いに気付かされた、感じです。

仄暗い水の底から

著者:鈴木光司
出版:角川書店
初版:1996.02.29.
紹介:水辺を舞台にした連作集。美と恐ろしさとの二面をあわせ持つ「水」に命が生まれてくる。観音崎を孫と散歩しながら、水辺にまつわる恐ろしい不思議な話を語り聞かせる。そんな中でとっておきの「宝物の話」とは・・・・
「浮遊する水」「孤島」「穴ぐら」「夢の島クルーズ」「漂流船」「ウォーターカラー」「海に沈む森」
コメント:私が好きなのは「孤島」と「穴ぐら」「海に沈む海」鈴木光司らしさが現れているような気がする。いずれも、父親の子どもへの思いが感じられる。

ななつのこ

著者:加納朋子
出版:東京創元社
初版:1992.09.25.
紹介:主人公・駒子と、童話「ななつのこ」の作者・佐伯綾乃との手紙の交換という形式でストーリーは進んでいく。
なかに「ななつのこ」の童話が7編挿入されている。さらに「ななつのこ」の中で、主人公・はやて少年と、あやめさんの対話がはさまるという二重構造。
「スイカジュースの涙」「モヤイの鼠」「一枚の写真」「バスストップで」「一万二千年後のヴェガ」「白いタンポポ」「ななつのこ」短編の連作で、大きな1つの物語を構成している。
コメント:ミステリーといえばミステリーなのですが、殺人は起きません。
なんだかほのぼのと暖かいやさしい気持ちになるミステリーでした。
物語の中に物語がある「二重構造」というか「入れ子構造」になっているので、
時間のあるときに一気に読むのをおすすめします。
けっこう面白い作品でしたよ。そうだなぁ・・・ちょっと北村薫の雰囲気に似たようなところがあります。

封印再度

著者:森博嗣
出版:講談社
初版:1997.04.05.
紹介:岐阜県恵那市の旧家、香山家には代々伝わる家宝があった。その名は「天地の瓢」と「無我の筐(はこ)」。
「無我の筐」には鍵がかけられており、「天地の瓢」には鍵が入っている。ただし鍵は「瓢」の口よりも大きく、取り出すことができないのだ。50年まえの香山家の当主は、鍵を「瓢」の中に入れ、息子に残して自殺したという。果たして筺を開けることができるのか?興味を持って香山の家を訪れた西之園萌絵だが、そこにはさらに不思議な事件が待ち受けていた!(表紙扉より引用)
コメント:犀川と萌絵の恋愛の行方は・・・・なかなか進まない。
今回のトリックは最初の1/3しかわからなかった。
密室の謎も、「天地の瓢」と「無我の筺」の謎も、ヒントには気付いたんだけど、解明できなかった・・・もっと理科で勉強したことを思い出さなくちゃぁ・・・残念。

清水義範の作文教室

著者:清水義範
出版:早川書房
初版:1995.07.31.
紹介:清水義範さんと弟の幸範氏との「作文教室」で、子供達が書いた作文と、それに対する添削。清水氏の作文に対する考えがわかりとても面白い。
コメント:7人の子供達のそれぞれの個性あふれる作文。
回を重ねるうちに見る間に上達する子供もいれば、思いをなかなか表現できない子もいる。1年を通して作文とはなにか。読書感想文の弊害など、清水氏独特のユーモアセンスでとても楽しめました。

ナチュラル・ウーマン

著者:松浦理恵子
出版:河出書房新社
初版:1994.10.20.
紹介:スチュワーデスの夕記子・バイト先で知り合った由梨子、そして同人漫画サークルでであった花世。
彼女たちとのそれぞれの出会いと関係は、私にとっていったい何なのか?
女と女の恋愛と別れのお話。
コメント:面白かったです。読んでいて20代後半の人が書いた本かなぁ・・・?と思っていました。後ろの方に生年月日が・・・ナーンダ、
同年代じゃない(笑)。ずいぶん前に書いた作品なんですね。
実家に行く電車の中で読もうと思って持って出かけたのですが、失敗でした。
となりに座った人の視線が気になって・・・(^-^;男の人だったらまだいいのですが、
20代の女の子の視線が・・・途中で閉じてしまいました。(笑)
それでも根性で読み切った。

TUGUMI

著者:吉本ばなな
出版:中央公論社
初版:1989.03.20.
紹介:生まれながらにして体が弱く、甘やかされて、我が儘放題に育ったつぐみ。
いじわるで、気まぐれで、美しいつぐみ。つぐみは誰にも心を許さない・・・・・
いやな女の子。
私はそんなつぐみに翻弄されながらも、やっぱり彼女が好きなのだ。
そんなつぐみと私のある夏の話。恭一との出会い。町を地上げしたホテルの息子と、旅館を畳んで町をでていくつぐみ。ふたりの恋の行方は?
姉の陽子ちゃん・私マリア・恭一と、入院したつぐみ。ベッドの中でマリアに当てて書いた手紙は・・・・。
「──── 何にしても、この町で死ねるのは嬉しいことです。元気で。」
だけど、つぐみは元気になっちゃったんだもんなぁ・・・
コメント:つぐみって、幸せなんだろうか?なんだかつぐみってやっぱり可哀想なんじゃないかな・・・。後書きで吉本ばななさんが、「つぐみ」は私です。って書いてた。
もちろん、そっくりそのままじゃないでしょうけど。
子供の頃って、「つぐみ」的に振る舞えたら、どんなに気持ちいいかって思うような気がする。なかなかそんな風にはできないしね。

丹生都比売(におつひめ)

著者:梨木香歩
出版:原生林
初版:1995.11.20.
紹介:草部皇子の父・大海人皇子は大友皇子との世継ぎ争いに巻き込まれることを避け、吉野の山中に僧形として逃れてきた。草部皇子と弟忍壁皇子と母。そしてわずかな舎人と女官のみを連れて・・・
正当な世継ぎとして大海人皇子は人々の信を集めていたが、皇子にはまだ土地の護身霊・丹生都比売に出会えなかったのだ。皇子はひたすら丹生都比売の顕現を待っている。
草部皇子母の姿を見る。夢を見る。その中の母の姿は・・・・?母に可愛がられたい、認められたいという思いがつのる。
争いごとを好まない草部皇子羽村できさという口の利けない娘に出会う。ある日、きさに導かれて森の奥に入っていくと・・・。大海人皇子は、果たして、丹生都比売に会えるのか・・・
コメント:梨木香歩さんの「丹生都比売」(におつひめ)。まるで語りかけるような本でした。影の薄い草壁皇子と、その母・持統天皇の話です。
母を思い、恐れ、そして思われたいと願う草壁皇子。その母は強い強大な母で、すべてを思うままにしようとする母だった。草壁皇子の母への思いを思うと涙が出ます。
梨木さんの作品は、やっぱり母と子を抜きにしては語れない。

薄紅天女

著者:荻原規子
出版:徳間書店
初版:1996.08.31.
紹介:「空色勾玉」「白鳥異伝」につづく、長編歴史ファンタジー第3部。
自分の生い立ちに疑念を持ち、蝦夷へ向かう阿高と、彼を追いかけ助ける藤太。同じく勾玉の主を捜し続ける田村麻呂。
阿高は本当の自分の取り戻すために都へおもむき物の怪と対峙しようとする。
一方、都では、自分の居場所をなくした皇女・苑上が帝と兄の皇太子を守るために、北から田村麻呂が連れてくる災いに立ち向かう。
都へ向かう阿高と、災いに立ち向かう苑上の出会いは?勾玉の行方は?
コメント:勾玉3部作。どれも面白く引き込まれました。
特にこれは阿高と藤太の心理的な葛藤がプラスされていて面白い。
読み進うちにドンドン物語の中に引き込まれてしまう。
初めは疑っていた田村麻呂だが、最後まで信頼できる人物だったのが嬉しい。
この3部作はもう一度読みたいなぁ・・・