著者:荻原規子
出版:徳間書店
初版:1996.08.31.
紹介:「空色勾玉」「白鳥異伝」につづく、長編歴史ファンタジー第3部。
自分の生い立ちに疑念を持ち、蝦夷へ向かう阿高と、彼を追いかけ助ける藤太。同じく勾玉の主を捜し続ける田村麻呂。
阿高は本当の自分の取り戻すために都へおもむき物の怪と対峙しようとする。
一方、都では、自分の居場所をなくした皇女・苑上が帝と兄の皇太子を守るために、北から田村麻呂が連れてくる災いに立ち向かう。
都へ向かう阿高と、災いに立ち向かう苑上の出会いは?勾玉の行方は?
コメント:勾玉3部作。どれも面白く引き込まれました。
特にこれは阿高と藤太の心理的な葛藤がプラスされていて面白い。
読み進うちにドンドン物語の中に引き込まれてしまう。
初めは疑っていた田村麻呂だが、最後まで信頼できる人物だったのが嬉しい。
この3部作はもう一度読みたいなぁ・・・
著者:北村薫
出版:東京創元社
初版:1990.01.20.
紹介:「円紫さんと私」第2弾
女子大生の私が出会うちょっとした不思議。日常という小さな出来事に埋もれている真実。今回もまた円紫さんの細かい観察眼に驚かされます。。同じ事柄でも、あちら側とこちら側では見えてくるものの形を変える。自分らしさを見失わないように・・・・
数多くの読書案内(?)と、落語ネタ、そのすべてが思考のキーワードだ。
コメント:私と、正ちゃん・江美ちゃん・の3人のちっちゃいヒミツ。そして根底に横たわる、私と姉とのそれぞれの思いが静かに姿を現す。
これはけっこういい感じです、善作より好きだな。この円紫さんシリーズを読んでふと思ったのですが、もしも、本当に円紫さんのような人がいたら、ちょっと恐いですね・・・・隠し事なんて絶対にできません。(^-^;
著者:高橋三千綱
出版:角川文庫
初版:1979.05.30.
紹介:15才の勇にとっては、剣道をしている最中に感じる緊張感がこの世でもっとも信用できることの一つに思えた。その一方で剣道だけの世界に不安を覚え、合宿を放棄して旅に出てみたりする。そんな彼を視つめる女学生松山の潤んだ瞳。目覚める性への憧れと反発。家族への理由のない苛立ち。そして剣道へのひたむきな情熱。勇の心は揺れ動きながらも、今、大きく羽ばたこうとしている。
青春の無頼と悲しみ。ストイシズム、そして優しさを歯切れのいう文体で爽やかに謳いあげる青春小説3部作。
「五月の傾斜」「二月の行方」(裏表紙より引用)
コメント:時代的にはちょっと古いのだけど、16才の少年「勇」と、父親・剣道・友達などを通した彼の生活や、様々な出来事そして心の動きにおもわず引きつけられてしまいました。
男の子が読むときっといいと思います。
著者:倉本聰
出版:理論社
初版:1986.01.00. 第5刷
紹介:北海道の、コロボックルに似た小人のお話です。
富良野の森を舞台に、広大な自然と、森を切り開く人間。そしてそこに住むニングルの関わりが明かにされていきます。
人間の文明に犯されてしまったニングルの若者が、その結果自分の家族や仲間達を失うことになった、その衝激・・・最後のニングルの語りかける言葉が、とてもとても胸を打ち、思わず目頭が熱くなりました。
コメント:佐藤さとるの「だれも知らない小さな国」が好きだった人は、ちょっと手に取ってみてください。
著者:松岡圭祐
出版:小学館
初版:1997.11.20.
紹介:「催眠療法」
ある日多重人格と思われる女性に出会う。ある時は言葉少なく、ある時は宇宙人。そしてある時な、非常に明るい活発な女性に変身する。
彼女は別の人格を演じているのか?
世間で周知されていない「多重人格」を疑うカウンセラーは催眠療法を用いて彼女を救おうとする。彼女の隠されたトラウマとは?そして事件の真相は?
コメント:稲垣吾郎主演で映画化されたという「催眠」。どうしても、嵯峨に彼のイメージがかぶさってしまいます。まあ、それはそれでいいのですが・・・
多重人格については「24人のビリー・ミリガン」などで前知識を持っていたので抵抗なく読めました。自分自身が閉じこめた意識が催眠誘導によって、表に出てくると言うのはなんだか気持ちが悪いなぁ。健康な精神のためには必要なのでしょうか?私の下層意識にはいったい何が潜んでいるのだろう?
著者:J・R・R・トールキン
出版:岩波書店
初版:1965.10.13.
紹介:ビルボと言う名のホビット(小人族)が、のどかに暮らしていたある日、
魔法使いとドワーフ達の頼みで宝物を探す旅に出る。
トロル・ゴブリン・ゴクリ・オオカミたちと戦い、
霧ふり山を越え、闇の森でエルフ達にとらわれ、
宝物を守っている龍の穴にたどり着く。
それからどうやって宝物を手に入れたか・・・・
ホビットの「行きて帰りし物語」お話の最後までお楽しみ。
コメント:人に誘われて渋々出かけた宝探しの旅。ドワーフ達に助けられ、指輪を手に入れてからは、みんなを助け、みんなの力を借りて宝を手に入れる。平和な暮らしを一番に望むホビットの冒険。自分の村に帰り着いたとき、そこで彼を待ち受けていたのは?いやはや楽な暮らしはなかなか手に入らないものです。
著者:佐々木丸美
出版:講談社
初版:1978.01.20.
紹介:北斗興産の跡継ぎ問題にからむ3人の赤ちゃんが姿を消した。
そのひとり上久弥生をめぐる物語。女の子はふたりとも養女だった。
ひとりは優しく育てられ、ひとりは冷たくされた。ある日王子さまが迎えに来た。
ふたりは彼のもとで育てられる。会社の思惑に踊らされるふたりの少女。そして愛の行方・・・
コメント:葵の一人称で語られる話。うー・・・何ともドロドロしたやりきれない話だ。
「雪の断章」「花嫁人形」の3作を読んだので、これでお終いにします。
著者:トリイ・L・ヘイデン
出版:早川書房
初版:1996.09.30.
紹介:母親に捨てられ、父親に虐待され、社会に反発して自分を閉ざすことによって自己を守ろうとした少女シーラ。
シーラを救おうとしたトリイの行動が、結果として、シーラを再び、捨ててしまうことになった。シーラの母親への憎悪・愛情・救いを求める心。様々な思いがシーラを取り巻く。トリイと母親の混同・・・・
彼女が、過去を通り抜け、未来に目を向けることが出きるようになったときシーラは自分の人生を自分のものにすることができた。
コメント:「シーラという子」のその後ですが、
シーラとトリイが分かれたその後、再会してからの記録がつづられています。
ノンフィクションであり、感動すると言うことはなかったのですが、深く心に響くものはあり、もし今自分自身の中で葛藤しているなにかを持っている人がいたら、この本はひとつの指針を示してくれるかもしれないと思いました。
著者:エリス・ピーターズ
出版:現代教養文庫
初版:1990.11.30.
紹介:12世紀半ばのイングランドのシュルーズベリ修道院。
5月初めの気持ちよく晴れ上がった朝だった。かつて十字軍に参加し、今は薬草園の世話をしている修道士カドフェルは今日こそグウィセリンの遺骨の話が持ち上がるに違いないと思った。野心家の副修道院長が有力な聖人の遺骨を手に入れて、この大修道院の守護神にまつろうと聖人の遺骨探しに奔走していたからだ・・・。(表紙扉より引用)
コメント:修道士カドフェルの魅力がわかりました。
事件や、まわりの出来事もとてもおもしろく読めたんだけど、
最後の、事後の処理って云うの?あの心配りが魅力ですね。
例の、中が鉛で内張をしてある聖骨箱のその後もちょっと気になったりします。
中身がどうなってるのかなぁ・・・って
著者:重松清
出版:朝日新聞社
初版:1999.02.01.
紹介:・エイジ・14才。バスケ部休部中。ホームドラマのような家族と普通の中学生。
・連続通り魔事件が発生した。犯人は同級生だった・・・
・友達、成績、部活、片思い、いじめ、追いつめられた「気」
・ホームドラマを演じる自分・・・ここにひとりの中学生がいる。
コメント:等身大の中学生・・・そんな気がしました。
うまく言えないけど、とても好きな本です。もはやそんなに純粋でもなくうぶでもなく、だけど心に迷いや様々な思いを詰め込んで、どうしたらいいのか自分自身を持て余している。でも、みんなの前では体裁を作りつつ、そんな自分に反発する。
そうやって、この時代(Age)をくぐり抜けていく。
この本を読んで中学生をわかった気になっちゃいけないんだけど、でも・・・共感できちゃうところも多い。