宙都〈第一之書〉美しき民の伝説

著者:柴田よしき
出版:徳間書店
初版:2001.07.31.
紹介:京都を襲った直下型の大地震を発端とする大災厄は日本を真っ二つに裂き、列島移動は200万人以上の死者をもたらした。今や日本は、海洋地質学では説明の付かないプレート移動に乗って、ミクロネシア海域にあった。地質調査技師の木梨香流は危機管理委員会の支配する京都で夜毎、妖怪と戦っていた。ハワイ島の海岸で救出された藤島美枝と阿川真知は、一緒に海底研究所から逃れた暮間清治の行方を探していた。ゲッコー族の珠星と蒼星は、天狗の三善と共に、とてつもなく邪悪な存在の出現に備え、海へ向かった・・・・・。
コメント:前三部作から久々の登場です。今までの話を思い出しつつ、これからどんな展開になるのか楽しみです。

樹上のゆりかご

著者:荻原規子
出版:理論社
初版:2002.05.01.
紹介:有名大学進学率によって評判の高い都立高校。しかし受験校とは裏腹に合唱祭・演劇コンクール・体育祭の3大イベントに追いまくられるように1年がすぎていく。
パンの中に仕込まれた、ナイフの刃・脅迫状・火を付けられたキャンパスブロック・・・追いつめられていくのは誰なのか?
コメント:硬派な生徒会に紛れ込んだ高2の上田ひろみ。男の子とつきあうにはまだ気持ちがついて行かなくて、一方で憧れに似た気持ちもいだき・・・そんな中で自然と変化していく思春期の女の子の気持ちも描かれていて、なかなか面白かった。まあ、それにでてくる男の子達も、硬派とはいえ、ちっとも今風じゃないのね。
ただし今風といっても、それがメディアで作られた一つの虚像にすぎないのかもしれないのだけど・・・今風に見えても、中身が画一的なわけじゃないものね。
最初、学校群・ふりわけ・・・というので、昔の設定かと思ったのだが、読んでいくうちにメールや携帯が出てきて、舞台が今の時代だと気がついた。
この小説にでてくるモデルになっていると思われる高校が、今実際にはどんな学校なのか?ちょっと気になるところである。
本のタイトル「樹上のゆりかご」って何を示唆しているんだろう?

冷たい誘惑

著者:乃南アサ
出版:文春文庫
初版:2001.04.10.
紹介:「私は拳銃を構える。恐怖に引きつった顔を思い描くだけで、胸のもやもやが晴れていく」─────。
久しぶりの同窓会で、歌舞伎町に流れ、家出少女から受け取ったつつみの中身はなんと拳銃。何故か主婦は警察に届けない。日常に倦んだ市井の人々を狂気に変えていくコルトの魔力。巧みな構成で魅了する連作短編集。
*「母の秘密」*「野良猫」*「なかないで」*「塵箒」*「置きみやげ」(裏表紙より引用)
コメント:手のひらにはいるほどの小さな護身用のコルト。そのずっしりとした重みと冷ややかさが、伝えるものは・・・・。
その危険性と、魔力のような安心感。決して手にはいることのないはずのものが手に入ったら、私だったら・・・どうするだろう?

姫神さまに願いを

著者:藤原眞莉
出版:コバルト文庫
初版:1998.09.10.
紹介:比叡山をでて諸国を放浪する行脚僧カイは童顔が悩みの22歳。安房の国の海辺で不思議な少女テンと出会った。追われているというテンは、初対面のカイから昼御飯を強奪したあげくに「助けてくれなければ、祟ってやる」と脅迫する。追っ手の侍たちを振り切った二人は、テンが世話になっているという稲村城に向かった。そこでは、若き城主・里見義豊をめぐってお家騒動が起きていたが・・・!?(表紙扉より引用)
コメント:人の良さそうなカイと、天真爛漫に見えるテンの実の姿は?
久しぶりに手にしたコバルト文庫は息抜きにはピッタリの一冊でした。
今後の二人の展開もちょっと気になるなぁ。

肩ごしの恋人

著者:唯川 恵
出版:マガジンハウス
初版:2001.09.20.
紹介:幸せになるために、幸せを手に入れるために、女としての武器を最大限利用して結婚を繰り返す“るり子”。
そんなるり子の蔭で、お人好しといわれる主人公“萌”。
女にとって、結婚とは?男・恋愛・幸せ・・・・どんな生き方を選択するか?
コメント:自分にとって、どんな生き方がいいのか・・。誰しもみんな迷ってしまう。
るり子の生き方は、あまりに愚かしくて思わず笑ってしまうが・・・
萌の行き当たりばったりの生き方もなぁ・・・もちろん小説としてはけっこう楽しめるけどね。そういうお年頃の女性が読んだら、我が身に照らし合わせて楽しめると思う。
子供を持つというのは悪くないと思うけど、いつまでもカワイイ赤ちゃん・子どもでいてくれるわけもなく、いずれは自分から離れていってしまうものだからねぇ。などと、冷ややかに思ったりしてね。

ドリーム・バスター

著者:宮部みゆき
出版:徳間書店
初版:2001.11.30.
紹介:異次元の世界から、地球に逃げてきた囚人を追いかけて、ドリームバスターはやってきた。
囚人は、人びとの弱い心のすき間を狙って、その人の夢の中に入り込む。・・・悪夢。
コメント:宮部みゆきさんの作品に、また新しいジャンルが増えた。
“プロローグJACK IN“ First Contact”DBたちの穴”
新たに登場した、「テーラ」という星と、ドリームバスターたちの世界が、これからも広がっていくと思うと、続きがたのしみです。

あなたには帰る家がある

著者:山本文緒
出版:集英社文庫
初版:1998.01.25.
紹介:夫は花など興味ないが、秀明は「紫陽花の花が咲きはじめましたね」と言ってくれた。
平凡な家庭の主婦・綾子が恋をしたのは、そんな理由からだったかもしれない。そして秀明が恋に落ちたのも、仕事を持つ妻にはない、夕餉の支度をする幸福そうな綾子の姿を見たからなのかもしれない。妻の恋、夫の恋をきっかけに浮き彫りにされるそれぞれの家庭の事情───。「結婚」の意味を問う、恋愛長編小説。(裏表紙より引用)
コメント:読みながら、以前読んだかもしれないと・・・似たような設定の話だったかしら?
まあ、ありがちな設定ではあるものね。二組の夫婦の誰をとっても、そんな気持ちになるのもわかるなぁ・・と思いつつ。でもそこまで思い切ったことはできないのでは?と、やはりお話の世界なのだと納得する。
しかし、昨今の若いお母さんは、真弓のように家でごはんの支度と子供の世話をすることに耐えられなくなっている人が増えているような気もする。どういう家族形態がいいとは一概にいえないけれどね。みんな悩んでいるのだろうな。

遠い背中(おいしいコーヒーの入れ方Ⅵ)

著者:村山由佳
出版:集英社
初版:2002.03.27.
紹介:僕の一人暮らしへの第一歩は、親父を説得することだった────はずだ。
ところが、いざ話を進めてみると、意外なところで反対されるし、
かれんは何か悩みを抱えているようで、気がかりだけが増えてゆく・・・・・・。
でも部屋が見つかれば、ふたりの「場所」ができるのだ。
かれんの兄『風見鶏』のマスターが語る過去のエピソードも同時収録。(表紙扉より引用)
コメント:ようやくショーリがひとりぐらし。この先の展開がどうなるのか
拒食症の星野は?鴨川のおばーちゃんは?気になりますねぇ。

5年目の魔女

著者:乃南アサ
出版:幻冬舎文庫
初版:1997.04.25.
紹介:ルルル、ルルル、ルルル・・・・・・。3回鳴ってから切れる電話は、5年まえ私を陥れた“魔女”の復活の合図なのか?忌まわしい過去に決着をつけようと動き出した景子の周りに、あの女の影が現れては消える。あの女が幸せになっているはずがない、それは景子の心からの叫びだったが・・・・・・
女性心理の暗黒に鋭く切り込んだ、サスペンス長編。(裏表紙より引用)
コメント:ウーム、なるほど、こういう展開だったか!
考えるに、女はみんな“魔女”かもしれないな。

占い師はお昼寝中

著者:倉知淳
出版:創元クライム・クラブ
初版:1996.06.25.
紹介:渋谷で霊感占いをする叔父は、“暇さえあれば寝てばかりいる、年をとっと駄猫見たいに・・”
彼のところにはよろず相談事が持ちかけられる、むろん探偵事務所ではないから調査はしない。依頼者の話を聞いただけで苦もなくことの真相を見破ってしまう。しかし依頼者の前に真実を明らかにするのではなく、さもありがたそうに占いをし嘘八百を並べ立て依頼者にとって必要な処方箋を言い渡すのだ。
「三度狐」仕事一筋のエリートサラリーマンに不思議な事件が3度も起こった。ゴルフクラブが1本なくなり、書類が行方不明になり、買ったばかりの本が3冊も消えた。
「水溶霊」家に帰ってみると、部屋の中が散らかり化粧台のビンが飛び散り、キッチンでは棚からさらが飛び出し醤油やソースがこぼれていた
「写りたがりの幽霊」旅行先で撮った写真には心霊写真が写っていた・・
「ゆきだるまロンド」私のほかに、もうひとりの自分がいる。行っていない旅行に出かけたり、遠くの宝石店に手袋を忘れてきたり、町内会の旅行をキャンセルしたり・・・
「占い師は外出中」呆けた老人と付き添いの友人、彼の家に幽霊がでる・・・占い師の外出中に留守番の助手が謎解き!?
「壁抜け大入道」200万円が盗まれた、父の無実をはらすために少年がやってきた。「僕は大入道が工場に入っていくところを見たんだ」
コメント:北村薫の「円紫さんシリーズ」を思い浮かべる。
なかなか楽しい一冊でした。