イミテーション・ゴールド

著者:林真理子
出版:角川文庫
初版:1992.03.25.
紹介:ブティック勤めの福美は、プロのレーサーを目指す恋人邦彦のためになんとしても1000万円を工面したい。
 トラの子の70万円を株投資、高級化粧品のネズミ講販売等々とその手段はエスカレートし、ついに若い自分の「体」をも商品にしてしまう。
 ふたりの大きな「夢」をかけて思いつめた献身が、ふたりの愛と信頼を崩してゆくのだった───。
 若さ、金、権力がちょっとした仕掛けで簡単に手を結ぶ「現代」の様相と仕組みを映し出した、出色の恋愛長編小説。(表紙扉より引用)
コメント:一生懸命なのに、なんだか安易だなぁ・・・読んでいてちょっとため息です。

ミスキャスト

著者:林真理子
出版:講談社
初版:2000.11.15.
紹介:名門商社に勤め、家庭的な妻と子供を捨てて、バリバリと仕事をこなす若い美人の妻と再婚。しかし幸せは長く続かない。
妻への不倫疑惑・自分の不倫の正統化・なんでも自分に都合よく考える・・・
そんなにうまくいくか?ラストでアリ地獄に落ちるアリのように、絡め取られていく様子はなかなか小気味よい
コメント:読んでいるうちに、この男のバカさ加減に気分が悪くなるわ。もちろんそれがこの本の意図するところでしょうけど、願わくば、こんな男に出会うことのないように!

風精の棲む場所

著者:柴田よしき
出版:原書房
初版:2001.08.07.
紹介:浅間寺竜之介はサスケとともに、京都北山をさらに分け入った“地図にない村”へやってきた。村で行われる奉納の舞をぜひ見て欲しいということだった。
舞手はすべて若い女性で、祭の前日に、近親を集めて最後の稽古舞が披露された。
悲劇は舞の終幕とともに始まった。舞手のひとりが、衆人環視の下、しかもわずかな時間の隙に、刃物で胸を一突きにされて殺されたのだ。「どう考えても犯人がいないんです。」竜之介はやがて、ある可能性に気付くが・・・。
美しくも切ない痛み、「消えた乙女の伝説」、そしてゼルフィスの棲む場所とは・・・。狂おしいほどの哀惜を封じ込めた本格長編ミステリ。(表紙扉より引用)
コメント:

東京下町殺人暮色

著者:宮部みゆき
出版:光文社文庫
初版:1994.10.20.
紹介:13歳の矢木沢順が刑事である父の道雄と生活を始めたのは、ウォーターフロントとして注目を集めている隅田川と荒川にはさまれた東京の下町だった。
そのころ町内では“あの家で人殺しがあった”という噂で持ちきりだった。果たして荒川でバラバラ死体の一部が発見されて・・・。(裏表紙より引用)
コメント:主人公の矢木沢順と、家政婦のハナさんのやりとりがなかなかステキなのである。こんなステキなおばあちゃんになりたいなぁ。

紫蘭の花嫁

著者:乃南アサ
出版:光文社文庫
初版:1996.09.20.
紹介:「逃げなきゃ、あいつから逃げなきゃ!」花屋で働く三田村夏季の前へ突然現れた謎の影。その瞬間から彼女の逃亡生活が始まった。一方、神奈川県下で連続婦女暴行殺人事件が発生。史上希に見る凶悪犯罪を前に、捜査陣は翻弄される。苦悩する刑事部長小田垣と、彼に近づく美女・摩衣子。そして息をのむクライマックス!(裏表紙より引用)
コメント:途中からの一人称の独白が、一体誰のものなのかが気になる。ラストまで、一気に引っ張られる満足のいく一冊。

聖家族のランチ

著者:林真理子
出版:角川書店
初版:2002.11.05.
紹介:良家の主婦が海外体験で得た本当のヨーロッパ料理を教えているうち、やがて料理研究家になった。」華々しい経歴に彩られた、美しいユリ子。夫は銀行員、息子は名門高校生、娘だけが女子大に進まず、思い通りにならなかった。
一見華やかで幸せそうな家族に見えるが、妻の不倫・夫の銀行は破綻の危機・息子は信仰宗教にのめり込み、娘の恋人には他に彼女がいた。いつしか共に食事をとることなく、バラバラになり家族が崩壊していく。
そんな中、息子が母の不倫に気づいてしまう。不倫相手から百万円を脅し取ろうとして・・・殺人を犯してしまう。
息子の将来のため、家族の幸せを守るために四人は再び協力する。毎日毎日、きちんと食事をとることによって・・・
コメント:殺人を犯した息子を守るという目的を持って、崩壊しかけた家族がひとつにまとまっていくという、皮肉な結果になっていく。しかし、かなりおぞましい・・・

星々の舟

著者:村山由佳
出版:文藝春秋
初版:2003.03.30.
紹介:戦前生まれの厳格な父、家政婦から後妻に入った母。先妻の子も後妻の連れ子も、兄妹は分け隔てなく育てられた。
そんな一家に突然、残酷な破綻が訪れて───。
家族とは、そして、人生とはなにか。
性別、世代、価値観の違う人間同士が、夜空の星々のようにそれぞれ瞬き、輝きながら、それでも「家」という一つの舟に乗って、時の海を渡っていく。(帯より引用)
コメント:あの恋愛小説風を想像するとまたちょっと違うけど・・・
これなら直木賞もいけるなと、納得できる作品かな。
今までの作風からすると一歩踏み込んだ感じもある。

4TEEN

著者:石田衣良
出版:新潮社
初版:2003.05.20.
紹介:14歳は空だって飛べる。
スカイラインを切り取る超高層マンション、
路地に並ぶ長屋ともんじゃ焼きの店。
<きのう>と<あした>が共存するこの町・月島で、
僕たちは、恋をし、傷つき、旅に出かけ、死と出会い、
そしてほんの少しだけ大人になっていく───。
14歳の4人組が一年間に出会った8つの物語を鮮やかに描いて、
<いま>を浮き彫りにする青春ストーリー。
(帯カバーより引用)
コメント:14歳の中学生がかかえる様々な等身大の悩み・・
かけがえのない友だちがいたらいいなぁって思える一冊。

“It”と呼ばれた子(幼年期)

著者:デイヴ・ペルザー
出版:ソニーマガジンズ
初版:2002.09.
紹介:「何故僕だけがこんな目に?」───母親に名前さえ読んでもらえない。“That boy”からついに“It”と呼ばれるようになる。
食べ物も与えられず、奴隷のように働かされる。身の回りの世話はおろか、暴力を振るわれ、命の危険にさらされ、かばってくれた父親も姿を消してしまう。
 児童虐待の体験者が、その記憶をたどることは、きわめて苦痛と困難をともなうものだ。
本書は、米国カリフォルニア州史上最悪といわれた虐待を生き抜いた著者が、幼児期のトラウマを乗り越えて自らつづった貴重な真実の記録である。(裏カバーより引用)
コメント:今の私なら、逃れる手だても考えられるだろう。でも、小さな子供にとって、家、母は安心できる唯一の存在であるはずだ。そして、子供にとっての全世界である家庭から逃れる手段など不可能に違いない。理不尽な母親に「怒り」を覚える。

街の灯

著者:北村薫
出版:文藝春秋
初版:2003.01.30.
紹介:時は昭和初期。氏族の家柄に生まれた英子さんが、女性運転士のヒントで謎を解明する。「円紫さんと私」シリーズに、ちょっと雰囲気が似てるかな?
「虚栄の市」を読んだ私の目の前に、まるでお話の中から飛び出したように、運転士のベッキーさんが現れた。さて江戸川乱歩を読んだ男は・・・?
「銀座八丁」今は和光、その昔服部時計店。銀座の名物は今も変わらない。さて学校で流行っている暗号遊びの鍵は本だったのだが・・・
そして、ベッキーさんに投げかけられた「上着を脱げ」。大意の言葉の真意はなんだったのか?
「街の灯」避暑先の軽井沢の別荘で行われた映写会。招かれた先で起きたのは、事件か?事故か?
コメント:昭和の家族の名残を残す、お嬢様方のちょっと別世界がそこに繰り広げられる。時代背景とともに、英子さんとベッキーさんのシリーズもこの先が楽しみです。