著者:横山秀夫
出版:講談社
初版:2002.09.05.
紹介:急性骨髄性白血病で一人息子を亡くし、アルツハイマーの妻に殺してくれと頼まれ不憫に思い絞め殺した・・・・現役警察官で警察学校の教官「梶」が自首してきた。
妻を殺してから、自首するまでの「空白の2日間」決して語ろうとしないその2日間に何があったのか?自死を思いとどまった理由は?「人生50年」その意味は?
穏やかな表情の下に秘められた想いは・・・
コメント:「梶」を取りまく様々な立場の人の人生と思いが交錯する。泣けるという前評判だったが、最後にぐっと来ました。
文壇では色々と取りざたされた作品だったけど、それはそれで、おもしろかった。
著者:乙一
出版:角川書店
初版:2002.07.01.
紹介:暗黒系:拾った手帳の中身は「猟奇殺人」の詳しい記録だった
リストカット事件:手首を切り落として収集する・・・僕が欲しいと思った手は。
犬:動物の首筋を上顎と下顎の間にはさんだ。口の中で相手の首の骨が折れる・・・
記憶:首に縄を巻き付けるとよく眠れる。しまい込んだ幼い頃の記憶。双子の姉妹。
土:趣味は庭づくり・・・穴を掘る目的は?落とした茶色の手帳の正体は?
声:殺された姉の、生前の声が録音されたテープが届けられた。
コメント:「人間には殺す人間と、殺される人間がいる」ウーム、そういわれてもなぁ。
著者:乙一
出版:幻冬舎文庫
初版:2002.04.25.
紹介:視力をなくし、一人静かにくらすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった───。(裏表紙より引用)
コメント:周囲との人間関係をうまく築くことが苦手な二人。たとえ視覚障害がなかったとしても、自分の世界を閉ざして、引きこもってしまう人はミチルと同じような気持ちなんだろうな・・
ミチルの感じている世界と、アキヒロの世界、二つの方向から書かれているのだが、二人の心理交錯に目が行って、外枠の「殺人事件」のことを、うっかり忘れてしまうところだった。でも考えてみれば、犯人は想像できるな。
乙一さんは初めてだったけど、別の作品も読んでみたい。
著者:柴田よしき
出版:文藝春秋
初版:1999.06.30.
紹介:女子校から東大、希望した出版社に就職、初めての恋人とそろそろ結婚も気になる26歳。殺された先輩、身の覚えのない中傷、押された背中・・・身の回りで感じる身の危険。狙われているのは自分?恨まれるような記憶もなく過ごしてきたのに・・・
作家と作品、編集者としてどう関わっていくのか。言葉を巧みに操る作家でさえ、それぞれの思いを表現することへの困難さがある。
思いも寄らない人々の心の陰に気付いてしまった有美は・・・
コメント:作家が作品を作り出すことの困難さと、その作品が与える影響。著者自身も直面したに違いない作家と編集者の関係。ただの主婦が、作品を受賞する事で今までとはまったく違った作家としての人生を歩み出す。
もちろん完全なフィクションだとおもうけど、つい作家生活の内側を見てしまったような気分になる(笑)
著者:J.R.R.トールキン
出版:評論社
初版:1992.07.30.
紹介:「ホビットの冒険」でビルボが手に入れた世界を支配する指輪、それをフロドが仲間たちと指輪を捨てるための長い冒険にでる。指輪に魅入られてしまった者、ホビット・魔法使い・ドワーフ・エルフ・様々な者たちと世界の関係がどうなっていくのか・・・
壮大な歴史的ファンタジー。
コメント:昨年の「ロード・オブ・ザ・リング」の映画公開に向けて読み始めたのが、足かけ1年かけてようやく最後まで読み終えることが出来た。
今年の「二つの塔」を見たときにもまだ未読で、どきどきしながら映画を見ていた。
なかなかほんを読んでいるだけでは、特に闘いのイメージがわかないのだが、映画のおかげでとても楽しめた。第3章「王の帰還」では、ラストがどんなシーンになるのか今から興味津々だ。
著者:恩田陸
出版:幻冬舎
初版:2000.03.31.
紹介:町の30%が堀割でしめられている箭納倉。古くから水路と縁が深かったその地に時折起きる「失踪事件」と何事もなく戻ってくる人々・・・
誰もが不思議に思いながら過ぎ去ると忘れてしまう。もう帰ってきたのだからいいじゃないか。この世の中には説明できないこと、説明しなくてもいいことがあるんじゃないかな・・・
「盗まれた」人々。火葬しても残らない骨・・・忍び込む水・・・
真相を追いかけて行き着いた現実、明らかにされるべきことなのか?
コメント:久しぶりの恩田陸さんの不思議な世界。古くからの土地、よそ者を受け入れないと感じられる、あるいは自分がとけ込めないと感じる町。違和感・疎外感・・・
そう、世の中には説明しなくてもいいことがたくさんあるのかも知れない。
著者:柴田よしき
出版:実業之友社
初版:1998.11.25.
紹介:1986年・バブル全盛期。
こわれた社内恋愛、嫌がらせ、突然部屋に乱入した見知らぬ男たち、似たような状況で殺された女・・・私に不幸を陥れたガーネットの指輪を取りまく人間関係の謎?
競馬・・・走る馬の姿に魅了された男と、その4歳馬のラストレースに夢と未来をかけてみる。
コメント:ああ・・・一時はこんなバブル景気の時もあったなぁと、懐かしく思い出すような時代設定。人々は欲望のために策略をめぐらし、その罠にはまっていく。
打算と計算と見栄の中で、時代に取り残されていく感じが良く分かる。人生、幸せなことばかりじゃない。だからといって、不幸せなことばかりでもないのかも。
著者:金城一紀
出版:講談社
初版:2000.03.30.
紹介:日本で生まれ日本で育った「在日朝鮮人」。まわりからの偏見・差別、自分の中での北朝鮮と韓国、そして日本。行き場のない狭い社会の中で自分が何なのか、何をすることが出来るのか模索する。彼らが抱えている様々な問題、そしてそれを作り出している日本人・・・偏見と差別はなくなるのだろうか。若い二人の恋愛の中で乗り越えられる問題なのか?
コメント:娘と二人でビデオを見たときに、ため息がでました。今でこそ「拉致問題」で脚光を浴びている北朝鮮ですが、それまでは、特に偏見や差別を持たせないようにあまり家庭の中では触れたことはありませんでした。でも、本当は真実・現状をきちんと認識する必要があるのですね。映画もとても良かったけれど、小説は映画ではつかみきれない部分も書き込まれていて、とても良かったです。すごく色々なことを考えさせられました。
「国籍とか民族を根拠に差別する奴は、無知で弱くて可哀想な奴なんだ。だから、俺たちがいろんなことを知って、強くなって、そいつらを許してやればいいんだよ。まあ、まだオレはその境地にはぜんぜん達してないけどね。」p91
この強さはスゴイと思う。と言うか、そういう気持ちでないと生き抜いていけないだろうな。そういう社会の一員であることに、ちょっとマイナスのため息・・・
著者:桐野夏生
出版:講談社
初版:1997.07.15.
紹介:老人介護・子供の非行・夫のギャンブル・サラ金地獄・解雇・・・どこかにありがちな家庭を持つ、弁当工場の夜間パートで働く女たちが、ふとしたことから殺してしまった仲間の亭主の死体を処分することを引き受ける。
犯人と疑われた男の真犯人さがし・・・暗闇に足音が迫る。
コメント:映画化されて、気になっていた作品。一気に読み終えてしまいました。
生活に疲れた、あるいは崩壊した家庭の主婦たちが、死体処理と言う抜き差しならない共同作業に足を踏み入れてしまう。なぜ?と言う疑問は残るが、踏み込んでしまってからの主人公「雅子」には恐ろしい魅力を感じる。怯えながら冷静さも兼ね備えるその精神は、毀れているとも思えない。
「柔らかな頬」は今ひとつだったけど、「OUT」はおもしろかった。
映画は又ひと味違うらしいので、みてみたい。
著者:柴田よしき
出版:集英社
初版:2000.05.30.
紹介:同じ中学・新聞部の同窓生。初恋。卒業して9年の間にあった、様々なこと・・・四季折々の移り変わり行く京都の町を舞台に、様々な出逢いと、別れ・・・20代半ばの、揺れ動く心。
・一夜だけ・桜さがし・夏の鬼・片想いの猫・梅香の記憶・翔べない鳥・思い出の時効・金色の花びら
コメント:京都の町を舞台にちょっと不思議な謎解き。キノコやその時々の花たちがそのキーワード。読んでいくうちに、京都の町を歩いている気分になってくる。
今まで私が読んできた柴田よしきさんの作品とはまたひと味違う、そう・・北村薫?加納朋子?風かな。ちょっと雰囲気が似てる。