著者:金城一紀
出版:講談社
初版:2000.03.30.
紹介:日本で生まれ日本で育った「在日朝鮮人」。まわりからの偏見・差別、自分の中での北朝鮮と韓国、そして日本。行き場のない狭い社会の中で自分が何なのか、何をすることが出来るのか模索する。彼らが抱えている様々な問題、そしてそれを作り出している日本人・・・偏見と差別はなくなるのだろうか。若い二人の恋愛の中で乗り越えられる問題なのか?
コメント:娘と二人でビデオを見たときに、ため息がでました。今でこそ「拉致問題」で脚光を浴びている北朝鮮ですが、それまでは、特に偏見や差別を持たせないようにあまり家庭の中では触れたことはありませんでした。でも、本当は真実・現状をきちんと認識する必要があるのですね。映画もとても良かったけれど、小説は映画ではつかみきれない部分も書き込まれていて、とても良かったです。すごく色々なことを考えさせられました。
「国籍とか民族を根拠に差別する奴は、無知で弱くて可哀想な奴なんだ。だから、俺たちがいろんなことを知って、強くなって、そいつらを許してやればいいんだよ。まあ、まだオレはその境地にはぜんぜん達してないけどね。」p91
この強さはスゴイと思う。と言うか、そういう気持ちでないと生き抜いていけないだろうな。そういう社会の一員であることに、ちょっとマイナスのため息・・・
著者:桐野夏生
出版:講談社
初版:1997.07.15.
紹介:老人介護・子供の非行・夫のギャンブル・サラ金地獄・解雇・・・どこかにありがちな家庭を持つ、弁当工場の夜間パートで働く女たちが、ふとしたことから殺してしまった仲間の亭主の死体を処分することを引き受ける。
犯人と疑われた男の真犯人さがし・・・暗闇に足音が迫る。
コメント:映画化されて、気になっていた作品。一気に読み終えてしまいました。
生活に疲れた、あるいは崩壊した家庭の主婦たちが、死体処理と言う抜き差しならない共同作業に足を踏み入れてしまう。なぜ?と言う疑問は残るが、踏み込んでしまってからの主人公「雅子」には恐ろしい魅力を感じる。怯えながら冷静さも兼ね備えるその精神は、毀れているとも思えない。
「柔らかな頬」は今ひとつだったけど、「OUT」はおもしろかった。
映画は又ひと味違うらしいので、みてみたい。
著者:柴田よしき
出版:集英社
初版:2000.05.30.
紹介:同じ中学・新聞部の同窓生。初恋。卒業して9年の間にあった、様々なこと・・・四季折々の移り変わり行く京都の町を舞台に、様々な出逢いと、別れ・・・20代半ばの、揺れ動く心。
・一夜だけ・桜さがし・夏の鬼・片想いの猫・梅香の記憶・翔べない鳥・思い出の時効・金色の花びら
コメント:京都の町を舞台にちょっと不思議な謎解き。キノコやその時々の花たちがそのキーワード。読んでいくうちに、京都の町を歩いている気分になってくる。
今まで私が読んできた柴田よしきさんの作品とはまたひと味違う、そう・・北村薫?加納朋子?風かな。ちょっと雰囲気が似てる。
著者:柴田よしき
出版:廣済堂出版
初版:2000
紹介:ただ、幸せになりたいだけだった。結婚して妻となってマンションを買って・・・専業主婦というささやかな幸せ。それなのに・・・借金の保証人になった夫の友達の自己破産のせいで、その幸せも奪われてしまった。
“恨まないように、一日一日を過ごす。誰かを恨めば、世界はもっと暗くなるから。”
家政婦となって勤めた、資産家の家の周囲で次々と起こる事故?事件?
人の心の奥底に潜む、様々な思いがうずまく。真実は明らかになるのか?
コメント:次々起こる事故・事件、読み進うちに、思わず作者の世界に引きずり込まれる。
で、途中で、「あれ?」っとおもった・・・気づいたときはもう終盤だったけど
予想された展開から、また一ひねりで、最後まで柴田よしきに翻弄されてしまった。
もう一回、じっくり読み直してみようかな。
著者:山本一力
出版:文藝春秋
初版:2001.10.15.
紹介:単身京から江戸に下ってきた豆腐職人の永吉の作る豆腐は、江戸の人の口には合わなかった。しかし思いこんだら一筋の女房おふみと永吉の知らぬところで応援してくれる人々に助けられ、ついに表通りに店を出すまでになる。だが長男のケガと両親の死をきっかけに、おふみは永吉や子供たちとの間に、心のすれ違いが生まれ、家族の心がバラバラになる。そして永吉夫婦の死後、残された子供たちを待ち受けていたのは……。
豆腐屋の一家をめぐる、家族物語。第126回直木賞受賞作
コメント:近ごろ人が殺されるような、壮絶な物語が多い中、久々に心和む話だった。
貧農の三男に生まれ、親からは疎まれて育ったにもかかわらず、本人の努力もさることながらその後のまわりの人々に恵まれている。
豆腐屋一家よりも、禿頭の傳蔵・担ぎ売りの嘉次郎・相州屋清兵衛のように、影で支えてくれている人たちの存在が、この話を暖かいものにしてくれている。たまにはこんなほのぼのとした物語も嬉しい。
著者:東野圭吾
出版:文藝春秋
初版:2001.03.30.
紹介:久しぶりにあった女子マネジャーは、変貌を遂げていた。「性同一性傷害」女性の体を持ちながら、男性の心を持つ、彼女は本当の自分になるために、その方法を探していた。しかし、思わぬところから事件に巻き込まれしまう。
コメント:本当の自分って、なんだろう?女なのか?男になれればいいのか?
あるがままの自分を受け入れること、だけど、まわりの社会が、いや、親ですらその現実を受け入れられないのだ。その苦悩ははかりしれない・・・
著者:久間十義
出版:幻冬舎
初版:2001.12.10.
紹介:拉致、レイプ、中国人黒社会の対立。多発する様々な犯罪と捜査に追われる刑事。その陰で置き去りにされる家庭・・・よもや、娘が事件に巻き込まれるとは。
コメント:娘の帰りが遅いときには読んではいけない。不安が倍増してくるから・・・
犯罪とは無縁と思う日常が、実は薄氷を踏むような危険性と隣り合わせ。いつどこで遭遇するかわからない。
親が求める子どもと、子どもが求める親の、お互いの心がすれ違っている・・・ロンリーハート。
著者:春江一也
出版:集英社インターナショナル
初版:2002.06.30.
紹介:経済疑獄で地位も名誉も失った男。獄中で、彼の脳裏に現れたのは「カリナン」彼の出生は?フィリピンと日本。戦前、戦後・・・
秘められた過去を見つけることによって、彼は再び希望を見つけることが出来るのか?
コメント:遠い時間を超えた思い。封印された記憶、長い歴史の重みの中で、自分のやるべきことを探す。「プラハの春」も歴史に翻弄された人々と愛のかたちを描いているが「カリナン」も同じくとても心に作品でした。
「ベルリンの秋」も読んでみたいです。
著者:宮本輝
出版:文藝春秋
初版:2000.10.20.
紹介:〈幼くして母に捨てたれた〉自分の存在を否定されたような気持ちを引きずって生きてきた。何故、母は子どもを置いて去っていったのか?母を追い求めながら、自分の居場所・存在を探し続ける42歳。
「持って生まれたもの」「宿命」それはかえられるのか?赤ん坊の頃の母親との肌と肌の触れ合い、それを体験しなかった人は、人間としての何かが欠落しているのではないか・・・・?という思いがめぐる。
コメント:大人になっても幼い頃のことはいつまでも心から消えない。その「呪縛」を取り除かないと、なかなか前には進めない物なのかも知れない。「宿命」という物があるにせよ、押しつぶされることなく、自らの力で自分の人生を選ぶ、そういう強さをもてたらいいのだけど・・・
宮本輝氏の作品は、ある程度の年齢に達すると、いろんなことが身にしみて感じられます。ということは、私もそういう年齢になってきたということかな。
著者:柴田よしき
出版:アスキー
初版:2000.03.16.
紹介:4400年後の銀河連邦。古代地球人ときわめて酷似したガウリア星人。連邦内での差別が生み出す政権争い。歴史をさかのぼって辿り着く真実とは?
コメント:壮大な宇宙でのSFファンタジー。娯楽的な要素もいっぱいだけど、宇宙への神秘と多くの変化の中でも変わらない、大切な夢やハートが描かれていて、ついつい引き込まれてしまう。