流星ワゴン

著者:重松清
出版:講談社
初版:2002.02.08.
紹介:もう死んでもいいかな・・・・そう思って降りた駅の前に、一台のオデッセイが止まった。
後悔、「あのとき」人生の分かれ道に気がつかずに通り過ぎてきた日々。大切なその時をもしもやり直すことができたら・・・・
過ぎ去った時を変えることはできない、だけど、その時に気づかなかったこと、見過ごしたこと「もしも・・・」知らなかった現実、知りたくない現実。だけど、目を開いて見つめなければ先に進めない現実。
やり直すことができたら・・・その先にあるのは?
コメント:どこで人生を踏み間違えてしまったんだろう?
人間誰しも、後悔の時がある。交通事故で死んだ父子とめぐる、過去。
もしも、「あの時」にかえってやり直すことができるなら、これからの人生がかわるかもしれない。なんてね。
重松清の「父・夫・男」の気持ちの作品は、けっこう興味深く読める。

「図書室の海」

著者:恩田陸
出版:新潮社
初版:2002.02.20.
紹介:・「春よこい」もしもあの時、母の言うことを聞いてマフラーをしていったら・・・繰り返すデジャヴュ。
・「茶色の小瓶」けが人の手当をしたOLはもと看護婦だった。彼女のロッカーの中の小さなビンの中身は?
・「イサオ・オサリバンを捜して」SF「グリーン・スリーブス」の予告編として書かれた。ちょっと難解?
・「睡蓮」アンソロジー「蜜のねむりのために書いたもの「麦の海に沈む果実」の主人公の幼年時代。「睡蓮の下にはきれいな女の子が埋まっているんだよ」いつか私にも睡蓮は咲くかしら?
・「ある映画の記憶」海の中に母を置いて、助けを呼びに行く・・・岸で振り返るとそこに母の姿はなかった。
・「ピクニックの準備」「夜のピクニック」の予告編と言うことで、これから何が起こるのか気になる。
・「国境の南」その店の常連客が相次いでなくなった。
・「オデュセイア」旅をする都市、ココロコに集まる人々。繁栄・戦争・そして壊滅・・・。誰もいなくなった忘れられたココロコの年代記。
・「図書館の海」「六番目の小夜子」の番外編。これ、本編を読んでいるからおもしろいけど、単独で読んでおもしろいかな?
・「ノスタルジア」懐かしい記憶。それが僕たちひとりひとりを作っている。懐かしいものを語り継ぐこと、それだけが僕たちの存在を証明する。
コメント:どちらかと言えば、ちょっとホラーな短編集。
「春よ来い」「茶色の小瓶」「ノスタルジア」は、それぞれ独立した作品で楽しめる。

ドミノ

著者:恩田陸
出版:角川書店
初版:2001.07.25.
紹介:─人生における偶然は、必然である─
営業実績が大切な生命保険会社。舞台のオーディションを受ける子役、ミステリマニア、男にもてあそばれた女、俳句のオフ会に集まった男、映画監督、ピザの配達人・・・
雑多で無関係な人々がすれ違う「東京駅」をゴールに、それは始まっていた、まるで計算され尽くした「ドミノ」たおしのように・・・
コメント:恩田陸さんの今まで読んだ作風からは、ちょっと意外な作品だったけど、それはまた楽しめる作品でした。まるで、別々の短編のお話の結末が一つにつながっていくような・・・

天の瞳 あすなろ編Ⅰ

著者:灰谷健次郎
出版:角川書店
初版:2002.05.31.
紹介:乱闘事件で逮捕された生徒に対し「罪にならないためにはわたしたちはなにができますか」と、ひとりの女生徒が先生に問うた。
 その言葉に心を動かされた倫太郎たちは1年7組からの手紙として意見をまとめ、廊下に張り出した。だが、学校側はそれを取り外し頑なな態度をとる。
 誰かの問題ではなく、自分たちの問題として学校を考えるために、生徒、教師、保護者の三者集会を開こうと、倫太郎、ルイ、青ポン、ミツルたちは動き出す・・・。
 シリーズ第7弾。教育とは、生きることとは何かをみずみずしく問う、感動のライフワーク。(表紙扉より引用)
コメント:「人間にクズはないョ。たとえ、ダメな先生でも。相手に、そういったら、相手も同じ事を言うよ。それ、堂々巡りネ」ルイが、豪二に言った言葉だ。これはけっこう心に残ります。
「1年7組の手紙」の中で、「良くないことをした者は、罰を受けたらいいというだけだと、その人は、反省するより先に冷たいものを感じて、さびしい思いをするだけで、自分のしたことを深く考えてみようとはしないのではないか」とありますが、これも、確かに罰に対して、まず反発も覚えるだろうし、見放されたとさびしく思うことも思い当たります。・・・さびしいのならまだいい。「反発」しか感じなかったら・・・?
強制されて反省するものでもないし・・・・
 「天の瞳」は、ふだん真正面から見ることなく通り過ぎているいろんなことに、ハッと気づかされることが多くて、それだけでも読み応えがある。これからの展開がまた楽しみです。

宙都〈第二之書〉海から来たりしもの

著者:柴田よしき
出版:徳間書店
初版:2002.01.31.
紹介:破壊神=闇の神が、海より姿を現した。窒息しそうな濃密な匂いがたれ込め、天狗の三善とゲッコーの珠星、蒼星ともに隠れてその行方を見守るしかなかった。闇の神の狙いは何か?木梨香流は巨大な芋虫から振り落とされ、深い山中で、傷つき横たわっていた。しかも、飛黒烏が香流を狙っていた。一方ビシマを操る十文字雄斗は、夜明けの琵琶湖で全裸で泳ぐ謎の女性を救助し、空中要塞テニヤン島に連れ帰った。そして、京都府警の刑事・村雨祐馬は幻の浮遊大陸を追って、ハワイに辿り着いた。それぞれの闘いは新たな段階に・・・・。
コメント:伝説の歌・・・「美しき民」の末裔。幻の大陸を見ることはできるのか?
これからまだまだ先が続く・・・つづきが早く読みたい。

宙都〈第一之書〉美しき民の伝説

著者:柴田よしき
出版:徳間書店
初版:2001.07.31.
紹介:京都を襲った直下型の大地震を発端とする大災厄は日本を真っ二つに裂き、列島移動は200万人以上の死者をもたらした。今や日本は、海洋地質学では説明の付かないプレート移動に乗って、ミクロネシア海域にあった。地質調査技師の木梨香流は危機管理委員会の支配する京都で夜毎、妖怪と戦っていた。ハワイ島の海岸で救出された藤島美枝と阿川真知は、一緒に海底研究所から逃れた暮間清治の行方を探していた。ゲッコー族の珠星と蒼星は、天狗の三善と共に、とてつもなく邪悪な存在の出現に備え、海へ向かった・・・・・。
コメント:前三部作から久々の登場です。今までの話を思い出しつつ、これからどんな展開になるのか楽しみです。

樹上のゆりかご

著者:荻原規子
出版:理論社
初版:2002.05.01.
紹介:有名大学進学率によって評判の高い都立高校。しかし受験校とは裏腹に合唱祭・演劇コンクール・体育祭の3大イベントに追いまくられるように1年がすぎていく。
パンの中に仕込まれた、ナイフの刃・脅迫状・火を付けられたキャンパスブロック・・・追いつめられていくのは誰なのか?
コメント:硬派な生徒会に紛れ込んだ高2の上田ひろみ。男の子とつきあうにはまだ気持ちがついて行かなくて、一方で憧れに似た気持ちもいだき・・・そんな中で自然と変化していく思春期の女の子の気持ちも描かれていて、なかなか面白かった。まあ、それにでてくる男の子達も、硬派とはいえ、ちっとも今風じゃないのね。
ただし今風といっても、それがメディアで作られた一つの虚像にすぎないのかもしれないのだけど・・・今風に見えても、中身が画一的なわけじゃないものね。
最初、学校群・ふりわけ・・・というので、昔の設定かと思ったのだが、読んでいくうちにメールや携帯が出てきて、舞台が今の時代だと気がついた。
この小説にでてくるモデルになっていると思われる高校が、今実際にはどんな学校なのか?ちょっと気になるところである。
本のタイトル「樹上のゆりかご」って何を示唆しているんだろう?

冷たい誘惑

著者:乃南アサ
出版:文春文庫
初版:2001.04.10.
紹介:「私は拳銃を構える。恐怖に引きつった顔を思い描くだけで、胸のもやもやが晴れていく」─────。
久しぶりの同窓会で、歌舞伎町に流れ、家出少女から受け取ったつつみの中身はなんと拳銃。何故か主婦は警察に届けない。日常に倦んだ市井の人々を狂気に変えていくコルトの魔力。巧みな構成で魅了する連作短編集。
*「母の秘密」*「野良猫」*「なかないで」*「塵箒」*「置きみやげ」(裏表紙より引用)
コメント:手のひらにはいるほどの小さな護身用のコルト。そのずっしりとした重みと冷ややかさが、伝えるものは・・・・。
その危険性と、魔力のような安心感。決して手にはいることのないはずのものが手に入ったら、私だったら・・・どうするだろう?

姫神さまに願いを

著者:藤原眞莉
出版:コバルト文庫
初版:1998.09.10.
紹介:比叡山をでて諸国を放浪する行脚僧カイは童顔が悩みの22歳。安房の国の海辺で不思議な少女テンと出会った。追われているというテンは、初対面のカイから昼御飯を強奪したあげくに「助けてくれなければ、祟ってやる」と脅迫する。追っ手の侍たちを振り切った二人は、テンが世話になっているという稲村城に向かった。そこでは、若き城主・里見義豊をめぐってお家騒動が起きていたが・・・!?(表紙扉より引用)
コメント:人の良さそうなカイと、天真爛漫に見えるテンの実の姿は?
久しぶりに手にしたコバルト文庫は息抜きにはピッタリの一冊でした。
今後の二人の展開もちょっと気になるなぁ。

肩ごしの恋人

著者:唯川 恵
出版:マガジンハウス
初版:2001.09.20.
紹介:幸せになるために、幸せを手に入れるために、女としての武器を最大限利用して結婚を繰り返す“るり子”。
そんなるり子の蔭で、お人好しといわれる主人公“萌”。
女にとって、結婚とは?男・恋愛・幸せ・・・・どんな生き方を選択するか?
コメント:自分にとって、どんな生き方がいいのか・・。誰しもみんな迷ってしまう。
るり子の生き方は、あまりに愚かしくて思わず笑ってしまうが・・・
萌の行き当たりばったりの生き方もなぁ・・・もちろん小説としてはけっこう楽しめるけどね。そういうお年頃の女性が読んだら、我が身に照らし合わせて楽しめると思う。
子供を持つというのは悪くないと思うけど、いつまでもカワイイ赤ちゃん・子どもでいてくれるわけもなく、いずれは自分から離れていってしまうものだからねぇ。などと、冷ややかに思ったりしてね。