著者:梓河人
出版:角川書店
初版:2001.12.25.
紹介:「アナン」を書き終わって、たどりついたゴール。とても幸せなのに、何かやり残した感じ・・・それは、子供に伝えたいのに、子供には難しすぎると言うこと。
そこで、子供に伝えるために、アナンを書き直すことにしました。
こんどはねこの「バケツ」といっしょに、心の旅にでました。それは思いのほか長い旅になりました。
コメント:「アナン」は去年私が読んだ本の中の「ぴかいち」だった。それが子供向けに書きなおわされたと聞いて、再びアナンに会えることがとてもうれしかった。
手にした本は、絵本でもなく、童話と言うには立派すぎて、これでも子供向きなの?という印象だったけれど、ねこの「バケツ」の視点からかかれているので、とてもわかりやすいし、ことばもやさしい。
人々の悲しみを吸い取っていくアナン。人々を幸せにする、モザイク。この世に生まれて、やがて旅立っていくタマシイ。アナンに会えて、よかったね。
著者:柴田よしき
出版:講談社
初版:1998.04.30.
紹介:新宿一丁目にある無認可保育園の園長は子供たちの父親代わりの元刑事だった。
経営難が続く保育園の影で、私立探偵の裏家業。家出人の捜索から暴力団がらみの依頼までこなす。家を飛び出した中学生、姿を消した探偵、暴力団に追われるチンピラ。一件無関係そうに見えるものがその裏で何本もの糸が交錯しながらつながっている。思いがけない彼らの接点は?それぞれの胸に秘めた思いが、複雑にからみつく、その中に埋もれた真実は・・・?
偽善といわれようとも、保育園はつぶさない
「早く戻ってね。そう、俺は必要とされている。そして俺にも、子供たちが必要だった。」
コメント:「RIKO」シリーズと微妙に重なる。
暴力団と警察・・・そして元刑事と、役者はそろった。それぞれの立場と利害。
女性が書いたとは思えないけど、細かい心の動きや目の付け所がやっぱり、柴田よしきだなと感じさせる。ただ事件を追う推理小説じゃない、元刑事の生き様が、まるでそこに息づいているように描かれている。
そこには、もう一度読み返したいと思うほど、気になる世界が広がっていた。
著者:斉藤洋
出版:偕成社
初版:2001.03.
紹介:金の瞳、銀の瞳を持つジークは、故郷ジルバニア国を離れ、
親友バルやサランと共に海をわたり、ゴルドニア国へと向かう。
隣国ブラウニアに攻めこまれ、ゴルドニアは窮地におちていっていた。(表紙扉より引用)
コメント:「ジーク」を読んでから久しく、内容をうろ覚えなので、まず再読の後「ジークⅡ」を読んだ。
金と銀の目を持つ混血のジーク。同じような境遇のものたちはどちらの国に入っても、異国人扱いをされがちだ。その様子は、今の日本における同じような境遇の人々にも重なるところがあり、自ら望んで「スパイ」行為をするものも多い。
目の色、言葉だけではどちらの見方なのかわからず、お互いが疑心暗鬼になっていく。
人の心の中にある、憎しみが魔物を導くのかもしれない。
魔物・・・理解できないからと言って、それが存在しないわけではないのだ。
著者:群ようこ
出版:新潮文庫
初版:2001.01.01.
紹介:制服が廃止になった桃耳高校はロンドンブーツや編みタイツが闊歩して、青春花盛り!山岳部は授業中に飯ごう炊さん、先生たちは学校で犬を飼い始め、みんなが思い思いに楽しんでいる。私はグランド・ファンクやレッド・ツェッペリンが聞ければ充分幸せ。
ボウリングのスコアが4でもカレシがいなくても、それでいいや。世の中なるようにしかならんわい!(裏表紙より引用)
コメント:私が若かりしころと時期がすこし重なる。
そして、それはうちと同じ第3学区
「勉強の○○、運動の△△、恋愛の□□」といえば・・・
なんとうちの近くじゃないか?思わずニヤリと笑ってしまう
ごくごく普通の?女子高校生の、ぼやきが聞こえてきておもしろい。
時代は流れて30年経っても、案外変わってないもんだな。
著者:乙武洋匡
出版:講談社
初版:2000.05.25.
紹介:1999年4月。TBS「ニュースの森」のサブキャスターに起用された乙武氏。
乙武と言うフィルターを通してみた、社会。本当のバリアフリーとは何なのか?
それ以上に、障害者としての立場ではなく、もっと自由な視点で世界を見ていきたい。
ニュースの送り手としてのプロの仕事を間近で見ながら、得た物は限りない。自分にできること、人に助けてもらうこと、自分のやりたいこと、そして、仕事ではなく得た友人。乙武キャスター生活1年間の出会いとレポート。
コメント:大きな障害を自分のものとしながら新しいものに挑戦していく姿は、障害者というイメージを大きく超えている。彼のたぐいまれな能力と性格の明るさ。そして人を引きつける笑顔の影で、「ホントはそんなにいい人じゃないんだけどなぁ~」と言うつぶやきが聞こえてきそうな気もする。実はごく普通の青年の顔がのぞく。
ありのままの、乙武氏の今後の活躍がちょっと気になる。
著者:綿谷りさ
出版:河出書房新社
初版:2001.11.20.
紹介:女子高校生と小学生が風俗チャットで一儲け
押入のコンピューターから二人が覗いた〈オトナの世界〉とは?
第38回文藝賞受賞作品(帯より引用)
コメント:作者が現役女子高生というので、ちょっと興味を引かれた。
受験?勉強?おしゃべり?毎日繰り返されるたわいのない日常。ふと浮かんだこれでいいのか?という疑問。そして自分を取りまくすべてのものを捨てた。思いっきりよく!
なるほど、ここまで思い切りよく今の自分を捨てることができたら、ずいぶんサッパリするだろう。そしてそこに残った自分自身と向き合うことで、また違った自分が見えてくる。まあ実際、そこまで思い切ったことはできないけど、なんか気持ちはわかるような気がするな。
著者:池田香代子:再話
出版:マガジンハウス
初版:2001.12.11.
紹介:もしもたくさんのわたし・たちがこの村を愛することを知ったならまだ間にあいます。
世界を100人に縮めるとまったく違うあなたが見えてくる。
毎日新聞の「天声人語」でも取り上げられたあの話題のEメールが、すっかり生まれ変わって素敵な絵本になった。
あなたも、この村に生きている。(帯より引用)
コメント:テレビでも取り上げられて、子供たちの学校でも取り上げられて、それじゃやっぱり手にしてみようと購入した本。きれいに色分けされたデータは、今までの私たちの価値観や基準を塗りかえた。今こうして、この本を手にして読んでいること、それはつまり・・・
言葉の少ない小さな絵本だけど、大人が読んでも、子供たちが読んでも多くのことを考えさせられる、本です。
自分がいかに幸せなのか?と言うことだけではなくて、村のみんながすこしでも幸せになれるにはどうしたらいいのか。立ち止まって考えてみたい。
著者:村山由佳
出版:集英社
初版:2000.12.30.
紹介:僕の恋人は、5つ年上のいとこ・かれん。
星野りつ子にぼくらの関係を告げたときから、何かが動き始めた―――。
父の帰京と再婚、そして妹の誕生・・・・・・。僕、かれん、その弟・丈、三人だけの満ち足りた生活に、すこしずつ変化が訪れようとしている。その変化が何をもたらすのか、僕はまだ気づいていなかった―――。
丈の恋の行方を描いた番外編も同時収録、村山由佳の人気シリーズ第5弾!(表紙扉より引用)
コメント:りつ子に拒食症?の気配。人の心は壊れやすい。
うーむ、ショーリとかれんの同居生活も終わりそうだし・・・
これからどうなるんだろう。気になるなぁ。
著者:村山由佳
出版:集英社
初版:1999.04.07.
紹介:「お前に弟か妹ができると言ったらどんなものかなぁ」
突然のおやじの電話にぼくはぶっ飛んだ。福岡に単身赴任しているおやじに、どうやら彼女ができたようだ。それも妊娠3ヶ月!
そこで、かれんと二人で福岡まで行くことに・・・。新幹線の旅は楽しかったけど、むこうで会った親父の彼女というのが・・・。(表紙扉より引用)
コメント:いいなぁ・・・今時のこの年齢の男女で、こうプラトニックなのはアリなのか?なんかいいけどねぇ。ちょっとショーリが可哀想な気もするけど、娘の親としては、このくらい大事に思って欲しいとちょっぴり思います。学生であるがゆえの、無力感・不安そして嫉妬。がんばれショーリ。
お互いを甘やかさない。いつまでも好きでいてもらえるように、自分を磨いて努力して行かなくては、恋は続かない。フーム、なるほど。
著者:日向章一郎
出版:集英社
初版:2000.04.10.
紹介:深い怨念と呪いの力を持つ「般若」の面。その力を利用して呪いをかけたのは、それぞれのパートナーだった。
受験戦争の中で、嫉妬と羨望の念にとらわれた少女。執拗に繰り返されるイジメ。しかし、幸せそうに見えた人も、実は幸せじゃなかったんだ・・・。少女が「般若」の面を手に入れたとき・・・。
コメント:「ゼロの世界」シリーズ3弾。
作家自身が主人公になっちゃうこのシリーズ。日向章一郎が何となく気に入っている私にとっては、まあおもしろい企画。
理解しがたいけど、無視できない霊とかオカルト的なものに引き寄せられる。人の気持ちのすき間に忍び込む、魔物が人の心を惑わせる。