R.P.G

著者:宮部みゆき
出版:集英社文庫
初版:2001.08.25.
紹介:ネット上の疑似家族の「お父さん」が刺殺された。その3日前に絞殺された女性と遺留品が共通している。合同捜査の過程で、「模倣犯」の武上刑事と「クロスファイア」の石津刑事が再会し、2つの事件の謎に迫る。家族の絆とは、癒しなのか?呪縛なのか?舞台劇のように、時間と空間を限定した長編現代ミステリー。宮部みゆきが初めて挑んだ文庫書き下ろし。(裏表紙より引用)
コメント:「模倣犯」を読みながら、つい気になって買ってしまった本。
「R.P.G」というと、思い浮かべるのはゲームであるが
(ロールプレイング)は巻頭の説明を引用すると
「実際の場面を想定し、さまざまな役割を演じさせて、問題の解決法を会得させる学習法。役割実演法。」とある。
ネット上のハンドルネームによる架空の家族ごっこの他にここで演じられているのは・・・鮮やかな舞台に思わずしてやられた・・・(笑)
「模倣犯」を長編大河ドラマだとすれば、「R.P.G」は、単発の日曜劇場(ちょっと古いか・・・)いずれにしても、楽しめることに違いはない。

模倣犯 上下

著者:宮部みゆき
出版:小学館
初版:2001.04.20.
紹介:大川公園のごみ箱から、若い女性の右腕が見つかった。
犯人の携帯電話からの犯行声明。ボイスチェンジャー。
被害者をあざ笑うかのような、不可解な言動・・・
これが犯人の舞台の幕開けだった。
第一発見者は別の強盗事件で家族を失い心に深い傷をもつ塚田真一。
同じ公園から発見されたバックの持ち主・古河鞠子の祖父・有馬義男。
ノンフィクションのライターをめざす、前畑滋子。それぞれの目から見た事件。
被害者の家族、警察、そして犯人・・・・さまざまな角度から、それぞれの生活にスポットを当て、事件の概要に迫る。
犯行の動機は?目的は?
コメント:上下で2段組、なかなか気軽にさらりと読める本ではなかったけれども、どの部分を取っても、不可欠なのだ。犯人に翻弄される、被害者たちとその家族。周囲の反応に押し潰されていく人びと。表面からは伺いしれない犯人像。
読んでいく中で何が「模倣犯」なのか?と気になっていたが、その意味が分かったとき、こういう結末が用意されていたとは・・・。まさにドラマチック!
分厚い本だけれど、読み応えのある作品でした。

風葬の教室

著者:山田詠美
出版:河出文庫
初版:1991.07.04.
紹介:担任の教師に好意を持たれたがゆえに、教室の中で生け贄となって行く転校生の少女。教室を支配する宗教と化したイジメの中で、少女に兆した“死”の思いを描く表題作に、少女期の孤独を見つめた佳篇「こぎつねこん」を併録。(裏表紙より引用)
コメント:よみました。
山田詠美もこんなのかくんだぁ・・・とおもいつつ、
もしかしたら、こんな経験もしたのかなぁ?なんて思ったり。
たった一度だけど、転校の経験のある私は、あの頃の心細さを
ちょっと思い出したりしました。
ただ、イジメに対する自己防衛みたいなのは、私と似てるなぁ・・・。娘がこういう状況に陥りそうになったとき、こういう精神的なテクを話したことがあります。

彼女の朝 おいしいコーヒーの入れ方Ⅲ

著者:村山由佳
出版:集英社文庫
初版:2001.06.25.
紹介:進展すると見えて、なかなか思うように進まない勝利とかれんの「秘密の恋」。互いのこころが見えなくて、不安になったりもしたけれど。そんな気分をすべて洗い流したくてふたりで来た鴨川。思いっきり海ではしゃいだその帰り、外房線の不通というアクシデントが。「・・・・・・・今日は、鴨川にいない?」消え入るようなかれんの言葉の意味が、ようやく理解できたとき勝利は───。始めての、二人だけの夜。(裏表紙より引用)
コメント:「おいしいコーヒーの入れ方Ⅲ」
おー!やっと来たかぁ!(失礼)と喜んだのもつかの間・・・。イヤァ初々しい。
でもマァ、娘をもつ母としては、このくらい優しく思いやってもらいたいもんだと思ったりします。近ごろの、若い子どもたちの性に対する意識、援交とか、出会い系サイトとか・・・ちょっと軽すぎるんじゃないかぁ?もちろん、若い人すべてが軽く考えているものでもないと思います。ちゃーんと、マジメに関わっている子たちだってたくさんいると思うし、そう心配したものでもないと思う。
人間ってどうしても自分の気持ちに忠実になってしまうけど、ちょっと落ち着いて、相手の気持ちきちんと思いやれる人になりたいと思う。ハイ!

螺旋階段のアリス

著者:加納朋子
出版:文藝春秋
初版:2000.11.20.
紹介:サラリーマンを辞めて、「私立探偵」をはじめた仁木の元に飛び込んできたのは、一匹のネコと安梨沙という少女?だった。
*金庫の鍵の隠し場所は?
*自分自身の浮気調査を依頼してきた夫人の、本当の目的は?
*老婦人の可愛がるコリー犬が姿を消した。その犬は、30年前に夫人の元にやってきたのだ、30年!?
*誰もいないはずの地下室になり響く、電話の謎・・・
*便利屋と化した「私立探偵」が頼まれたベビーシッター。
依頼人は産婦人科院長。母親は産婦人科の患者だという。何故?自分で育てられないのか?
*そして、安梨沙がいなくなってしまった。
コメント:安梨沙と、アリスを重ね合わせた。ちょっと不思議なお話。

0をつなぐ

著者:原田宗典
出版:新潮文庫
初版:1993.06.25.
紹介:誰にも見られているはずがないのに常に視線が注がれているような気がしたことはないだろうか。あるいは海水浴場のスピーカーがしつこく同じ人を呼びだしているとき、落ち着かない気分になることはないだろうか───ごくありふれた日常生活の風景にふと顔をのぞかせる不安や違和感を題材に、都市に住む人間の乾いた心理を映す13編。あなたもよく感じている“奇妙な感じ”を描く短編集。(裏表紙より引用)
コメント:奇妙な・・・ちょっと恐ろしい、そして不気味なお話が・・・だけどちょっと哀しい思いもあったりして。「花嫁の父の事情」「姿のない尋ね人」がちょっと切なくていいかなぁ。

きらきら星をあげよう

著者:山本文緒
出版:集英社文庫
初版:1999.03.25.
紹介:小説家の父の都合で、いやいやながらも東京の高校へ転校することになった吉田日和。ちょっぴりユウウツな気分で登校してみれば、新しいクラスには妙なカッコのやつばかり。見かけはハデだけど、付き合ってみれば、みんなけっこういい奴で、これなら東京暮らしもわるくはない。ところが突然、母が家出!あわてる父は捜索に乗りだし、東京に残されたのは日和ひとり。いったいこれからどーなるッ!?(裏表紙より引用)
コメント:山本文緒の、デビュー直後のコバルト作品。数年前に読んで、けっこう気に入っていたので再読です。最近の作品とはもちろん違うけれど、私はこの頃の作品が好きです。
「きらきら星をあげよう」と続編の「おまえがパラダイス」は個人的にかなり好きです。

いちばん初めにあった海

著者:加納朋子
出版:角川書店
初版:1996.08.30.
紹介:ワンルームのアパートで一人暮らしをしていた堀井千波は、周囲の騒音に嫌気がさし、引っ越しの準備を始めた。その最中に見つけた一冊の本『いちばん初めにあった海』。読んだ覚えのない本のページをめくると、その間から未開封の手紙が・・・。
差出人は〈YUKI〉。
だが、千波はこの人物に全く心当たりがない。しかも開封すると、そこには“あなたのことが好きです”とか、“私も人を殺したことがある”という謎めいた内容が書かれていた。一体、〈YUKI〉とは誰なのか?何故、ふと目を惹いたこの本に手紙がはさまれていたのか?千波の過去の記憶を巡る旅が始まった───。
心に深い傷を負った二人の女性が、かけがえのない絆によって再生していく姿を描いた、、胸一杯にひろがるぬくもりあふれたミステリー。(表紙扉より引用)
コメント:見覚えのない本・はさんであった手紙。知らないうちに封印してしまった、過去の記憶・・・。失った言葉。今必要なのは、現実をきちんと受け止めること。
北村薫の「時」のシリーズに雰囲気が似てました。
「化石の樹」
白い花を咲かせる金木犀の古木。幹の大きなうろにはコンクリートが流し込まれて、瀕死の状態。そのコンクリートの中からでてきた、子供の宝物と、ノート。そのノートに書かれたお話は・・・。金木犀が結ぶ縁。ウーン、ちょっとロマンチックねぇ。

十九、二十

著者:原田宗典
出版:新潮文庫
初版:1992.11.25.
紹介:僕は今十九歳で、あと数週間で二十歳になる───父が借金を作った。ガールフレンドにはフラれた。せめて帰省の電車賃だけでも稼ごうとバイトを探したが、見つかったのはエロ本専門の出版社だった。岡山から東京に出てきて暮らす大学生、山崎の十代最後の夏は実にさえない夏だった。大人の入り口で父の挫折を目にし、とまどう青年の宙ぶらりんで曖昧な時を描く青春小説。(裏表紙より引用)
コメント:これは高校生じゃなくて、貧乏大学生の話ね。あやしげなポルノ雑誌を扱うバイト先の不思議な人間関係と、職を失ってやる気をなくした父親との関わり。どうも様にならない、十九歳。こういう親を待っちゃうと・・・辛いなぁ。切り捨てるわけにもいかないし。

ぼくは勉強ができない

著者:山田詠美
出版:新潮文庫
初版:1996.03.01.
紹介:ぼくは確かに成績が悪いよ。でも、勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいあると思うんだ───。17歳の時田秀美君は、サッカー好きの高校生。勉強はできないが、女性にはよくもてる。ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。
母親と祖父は秀美に理解があるけれど、学校はどこか居心地が悪いのだ。この窮屈さはいったい何なんだ!凛々しい秀美が活躍する元気溌剌な高校生小説。(表紙裏より引用)
コメント:父親がイナイというだけで、可哀想だったり、問題児扱いされてきた秀美君。そんな世間に対抗するべく、無意識のうちにつっぱってきた自分に気付いて、ハッとしたりする。年上の彼女にも妙にすれていなくて、実は、もっとはすっぱな感じを想像していたのですが、意外とピュアでよかったなぁ・・・
「放課後の音符」とともに、高校生にお薦めの一冊だわ。