天女のあかり

著者:立原えりか
出版:愛育社
初版:2000.09.07.
紹介:タイの料理・文化・そしてギンナリーとギンノーンという精霊がこのお話のベースです。もうひとつのストーリーは、自分の容姿にコンプレックスを持った中3の女の子の恋心と嫉妬心。そして自分自身への後悔と許しをもとめるタイへの旅です。
コメント:主人公の設定が、容姿は美しくないけど心は美しいという、お金持ちのお嬢様なのだ。何だかありそうでなさそうな設定ですよね。まあ、お金持ちじゃなきゃ話が先に進まないのでしょうがない。その点を除くと、自分を好きになれない女の子の気持ちがよく表れていて、そういう心を克服するまでのタイへの旅が作者の旅行気風でもあり、ちょっと興味を惹く。タイという国はよく知らないけど、本当にこんな風に精霊と出会えるような雰囲の国なのだろうか?

人質カノン

著者:宮部みゆき
出版:文藝出版
初版:1996.01.30.
紹介:「人質カノン」コンビニで遭遇した強盗事件。犯人が故意に落としたものは赤ちゃんのガラガラだった。犯人の狙いはなにか?コンビニという場所で、名前を知らない者同士のその場だけの人間関係の不思議さ。
「十年計画」女性タクシードライバーの話。上司からの縁談を選んで自分を振った男を殺してやろうと、計画を立てた。免許を取って10年後に交通事故を装ってひき殺すという「十年計画」だ。そして・・・
「過去のない手帳」電車の網棚に置かれた雑誌と手帳。その手帳の持ち主のことが気になって彼女の居所を探す。事件なのか?今の生活をやめて、ひとりで生きていけるか?手帳に書かれた自分の名前のその人を好きになれるか?
「八月の雪」校内暴力・いじめ・殺されると思い逃げた道路で車にぶつかった。右足を失ない、無力感にとりつかれた少年。亡くなった祖父の文箱からでてきた古い遺書。その遺書の意味を探ると、そこには今まで知らなかった祖父の過去が現れた。
「過ぎたこと」人を見たふとした瞬間に、過去の出来事がよみがえることがある。過去に出会った少年は・・・
「生者の特権」自殺志願者だった女性が、イジメを受けていた子供に出会った。その子供に出会ったことで、彼女は自殺してしまうことが出来なくなった。
「漏れる心」マンションの天井から水が漏れてきた。階上にすむ学生とその母・・・。ところが、大学にはそんな学生はいなかったのだ。
コメント:短編集だった。それぞれがもっともっと深く進みそうな話なのに、あっという間に終わっちゃうんでちょっと寂しかったな。
それぞれが、ちょっと悲しかったり、寂しかったり、そして心がホッとしたりするお話です。

デルフィニア戦記5「異郷の煌姫」

著者:茅田砂胡
出版:中央公論社C★NOVELS
初版:1994.12.10.
紹介:デルフィニアの内乱に勝利して、ウォルは再び王座に就いた。黄金の戦女神と讃えられたリィもまた王女の称号を得て王宮に迎えられた。
それから3年───平穏だった王都に暗雲が立ちこめる。王宮に暗躍する謎の一族。リィをつけ狙う不気味な暗殺者。侯爵家に不可解な挙兵の気配、陰謀を察知したウォルの決断とは!?(裏表紙より引用)
コメント:なんてこった!せっかく4巻で首都コーラルを奪還してほっと一息ついたというのに、次のお話が始まっちゃった。金色の髪を持つ美少女リィと銀色の髪を持つ美少年の出現!
早く続きを読みたいな。

デルフィニア戦記4「空漠の玉座」

著者:茅田砂胡
出版:中央公論社C★NOVELS
初版:1994.06.25.
紹介:ついに、ここまできた───流浪の国王ウォルとリィの率いる軍は王都コーラルの目前に迫る。だが、救い出すべき父はすでに亡く、王座奪還の目算もう潰えた。
欲しいのはただ父の敵の首ひとつ。同胞相討つ内乱を避けるため、わずかな友を連れ城に乗り込むウォルの運命、そしてデルフィニアを巡る争乱の行えは・・・(裏表紙より引用)
コメント:

デルフィニア戦記3「白亜宮の陰影」

著者:茅田砂胡
出版:中央公論社C★NOVELS
初版:1994.03.25.
紹介:緒戦の大勝利にもかかわらずウォルの陣幕は沈んでいた。王冠を捨て軍を解散せよ、さもなくばフェルナン伯爵の命は保証しない。
大義のため養父を見捨てるかペルーゼン侯爵の専横に居するか、苦悩の選択を迫られたウォルは逆転を賭してリィに伯爵救出を託した、難攻不落のコーラル城。リィはその最深部を目指すが(裏表紙より引用)
コメント:

溺レる

著者:川上弘美
出版:文藝春秋
初版:1999.08.10.
紹介:タイトルの「溺レる」
なりゆきの逃避行である。何から何故、逃げているのか?妙に冷めた女の気持ちが語られる。一方的に好きだと思いつつ、逃げていた。意外と途中で道を見失うことも多いのだが、目の前に続く道はどこへ続いているのか・・・。
コメント:何に「溺れる」のかと思ったら、男女の情愛であった。といっても、男性作家の書く官能小説ではない。なんと言っても芥川賞作家だ。先に読んだ空想とかうそばなしのような2冊とはちょっと感じが違っている。淡々とした語り口、次から次へと繰り出す。現在と回想と独白。
全体の印象としては、男と女の会話がけっこう多いのだ。それもちょっと微妙なちぐはぐさで・・・以外と現実の会話もこんなものなのかもしれない。

デルフィニア戦記2「黄金の戦女神」

著者:茅田砂胡
出版:中央公論社C★NOVELS
初版:1993.11.25.
紹介:卑劣な陰謀で偽王の濡れ衣を着せられ逃亡中のウォルと異世界から落ちてきた少女リィ。盗まれた玉座を奪回するため、旅を続ける二人を慕って志を同じくする仲間が次々と結集する。ようやく国王軍の体を為し、首都コーラルに向けて進軍する彼らを阻むべく待ち受ける敵の大群。そしてペーゼルンの悪辣な罠が!?(裏表紙より引用)
コメント:タウの副頭目イヴンとの再会。ドラ将軍と娘シャーミアン、初めてリィの力を見せられたときのかれらの驚愕・・・!とにかく素のままのウォル・リィ・イヴンの関係がとても魅力的だ。そして彼らの関係に翻弄されながらも、巻き込まれていく仲間たち。
まあとにかく、気軽に楽しめるシリーズです。1~4巻は王都コーラルの奪還。感想なんて、とにかく読めば文句なく面白い!

蛇を踏む

著者:川上弘美
出版:文藝春秋
初版:1996.09.01.
紹介:「蛇を踏む」蛇を踏んでしまったら、蛇がニセの母となって部屋に住みついてしまうという話。
「消える」その家族事によって違う血筋。ある家は家族が存在するののに姿が消え、またある家族はからだがちぢむ。家族・家のもつふしぎな因習・・・そんなことはあり得ないと思いつつ、知らないところには何があるかわからないと言う不安な気持ちを呼び覚ます。
「惜夜記」夜の始まりからの2つのお話。奇数章は生き物にまつわる話。偶数章は、私と少女の再生と老化。そして、夜が明ける。第115回芥川賞受賞作
コメント:日常の不条理を描いているわけではないのだけど、何だろうこれは?作者によればすべて「うそばなし」なんだそうだ。

物語が始まる

著者:川上弘美
出版:中央公論社
初版:1996.08.10.
紹介:公園で男の雛形を拾った。生きている。育てていくうちに次第に成長しているらしい。時折、中くらいの人間になり、また、雛形に戻る。その雛形と恋人の間の微妙な関係。雛形との恋・・・。そして、終わりは唐突にやってきた。
他・「トカゲ」幸運の座敷トカゲ「婆」「墓を探す」短編集4つ
コメント:川上弘美の作品は初めてである。なんだろう?このふしぎな空間・・・ありそうでなさそうな、でもどこか心の片隅に隠れているブラックボックスを覗かれてしまったようだ。「物語が始まる」は、ちょっと面白かった。

翡翠の城

著者:篠田真由美
出版:講談社
初版:1995.11.05.
紹介:明治時代以来、創業者の巨椋一族で固められてきたオグラ・ホテルに内紛が持ち上がった。創業者の娘で95歳になる老女が住む別邸・碧水閣の取り壊しを巡って一族の意見が対立、次期社長の座もからんだ骨肉の争いが勃発したのだ。沼のほとりに建つ異形の館を訪れた桜井京介は、一族の血塗られた歴史に迫っていく。(裏表紙より引用)
コメント:幼い子供の記憶に残る、その映像に隠された真の姿は・・・?
この3作目で、ちょっとだけ気になる蒼くんの過去が顔を覗かせた。これが読者の気をひくのよね・・・。推理小説そのものはそんなに魅力的とは思えないのに、どうも作者の思うつぼにはまってしまう。