著者:渡辺淳一
出版:角川文庫
初版:1982.09.10.
紹介:フィラディルフィアでの野口英世は、フフキスナー教授の下で悪条件と戦いながらも、徐々に頭角を現わす。人々はこの小柄な東洋人の猛烈な研究態度に驚嘆した。異境での超人的な研究と活躍。そして白人女性メリーとの結婚。世界的な名声に包まれた英世の、日本への凱旋帰国。
その栄光に影がさしはじめた晩年、アフリカへ黄熱病研究のため、英世は飛ぶ。自らの研究の犠牲となって、53歳の生涯を、遠くアクラの地で果てるまでの後半生を描く。
英世の劇的な生涯を、医学と人間性の両面から鋭く照射、その真実の姿を迫真の筆で描破した、吉川英治賞受賞の傑作。(裏表紙より引用)
コメント:野口英世の意外な人間性。はっきり言って、普通じゃないなぁ・・・。
そのあまりにも人間くさい、偉人とはかけ離れた英世の素顔と、黄熱病を初めとした細菌研究への情熱には目を見張る物がある。
時代の流れといってしまえばひとたまりもないが、研究に生涯を費やした野口英世の姿は、結果的には研究成果は得られなかったのだが、「遠き落日」によって、彼が確かに生きてきたというところが伝わってくる。だけど、何とも言えない人生だ・・・。
著者:渡辺淳一
出版:角川文庫
初版:1982.09.10.
紹介:野口英世は、日本人にもっとも知られた伝記中の偉人でありながら、虚飾に彩られた偶像であった。
医師出身の渡辺淳一が、国内はもとより、アメリカ・メキシコ・アフリカでの現地取材と、膨大な資料を駆使して、八年の歳月と情熱を傾けて完成した、野口英世の伝記的小説が本書である。
1876(明治9)年、猪苗代湖畔の貧農の家に生まれ、周囲の援助で困苦の中から上京、次第に医学への階段を登り、やがて単身アメリカへ出発するに至るまでの、若き無名時代の苦闘の日々・・・・・・。
人間・野口英世の破天荒な魅力と生命力にあふれる半生を、赤裸に描く力作。(裏表紙より引用)
コメント:猪苗代湖畔の「野口英世記念館」を訪れたことがある。貧しい生活ぶりと、母の苦労。不自由な手で勉強を続け医学をめざしたという、そんな印象だった。
子供向けの伝記は、確か読んだような記憶があるのだが・・・
本当の、野口英世って、こんなとんでもない男だったのか?!
イヤー、ビックリ。
著者:若竹七海
出版:中公文庫
初版:1998.12.18.
紹介:ルーム・クリーナー、電話相談、興信所。トラブルメイカーのフリーター・葉村晶と娘に借りたピンクの子供用自転車で現場に駆けつける小林警部補。二人が巻き込まれたハードボイルドで哀しい8つの事件とは。間抜けだが悪気のない隣人たちがひき起こす騒動はいつも危険すぎる!(裏表紙より引用)
コメント:若竹七海、初挑戦。あちこちで結構ファンの方が多いので、どんな作風かと思いましたが、これはけっこう初期の作品なのかな?軽く読めて面白いです。ちょっと赤川次郎風でもあるかな・・・葉村晶と、小林警部はいっしょには登場しないんだけど、少しずつすれ違っている?最後の「トラブルメイカー」で両者が遭遇するって言うのは、この先の展開が何か続くのか?という期待を誘う。暇つぶしにいい1冊。
著者:茅田砂胡
出版:中央公論新社
初版:2000.11.25.
紹介:低脳海賊がケリーを本気で起こらせた。触れてはいけない男の過去を、土足で踏みにじったのだ。
彼は左目を琥珀色に過輝かせ、口元には薄く微笑みをはいた。もう誰にも止められない。この空域の船は残らず消滅する────!
リミッター解除!!
私───ダイアナ・イレヴンスは白い閃光となって跳躍した。(裏表紙より引用)
コメント:
著者:茅田砂胡
出版:中央公論新社
初版:2000.07.25.
紹介:ジャスミンの出産を控えて、ケリーが総帥代理の任についたとたん、無人車は暴走し強化硝子が落下し、重役達の露骨な抱え込み工作が始まった。
でもね、こんなのは余興に過ぎない。あの気障で自信過剰ではた迷惑な銀髪のあいつが現れたのだから。
私は瞬時にリミッターを解除した。ダイアナ・イレヴンス───発進!(裏表紙より引用)
コメント:
著者:茅田砂胡
出版:中央公論新社
初版:1999.11.25.
紹介:一匹狼のこの俺が、あろう事か巨大財閥の副総帥におさまった。
総帥のジャスミンと結婚したからだ。
おまけにこの女王には物騒な敵がいて、町中でコマンド部隊に襲われるは、探査宇宙船は消失するは当分退屈だけはしそうにないが、こんどはニンシン?だと!?
海賊なんだぞ、これでも俺は・・・・・・(裏表紙より引用)
コメント:
著者:茅田砂胡
出版:中央公論新社
初版:1999.07.15.
紹介:奇妙な仕事が舞い込んだ。一年間だけ結婚してくれ、だと?お相手はあのクーア財閥の女王だ。殺しても死なない男がご希望だとか、理由や事情は知らないが、宇宙切ってのお尋ね者『海賊達の王』向きの仕事じゃない。
一匹狼の海賊のほこりをかけて、決着を宙でつけることになったが・・・。かなり異色な宇宙恋愛物語。(裏表紙より引用)
コメント:
著者:高見広春
出版:太田出版
初版:1999.04.15.
紹介:●西暦1997年、東洋の全体主義国家、大東亜共和国。この国では毎年、全国の中学3年生を対象に任意の50クラスを選び、国防上必要な先頭シュミレーションと称する殺人ゲーム、“プログラム”を行っていた。ゲームはクラス事に実施、生徒たちは与えられた武器で互いに殺し合い、最後に残ったひとりだけは家に帰ることができる。
●香川県城岩町立中学校3年B組の七原秋也ら生徒42人は、夜のうちに修学旅行のバスごと政府に拉致され、高松市沖の小さな島に連行された。催眠ガスによる眠りから覚めた秋也たちに、坂持金発と名乗る政府の役人が、“プログラム”の開始を告げる。
●ゲームの中に投げ込まれた少年、少女たちは、さまざまに行動する。殺す者、殺せない者、自殺を図る者、狂う者、仲間を作る者、孤独になる者。信じることができない者、なお信じようとする者。愛する気持ちと不信の交錯、そして流血・・・・・・。
●ギリギリの状況における少年、少女たちの絶望的な青春を描いた問答無用、凶悪無比のデッド&ポップなデスゲーム小説!(裏表紙より引用)
コメント:映画化され、15Rとなった話題作。映画のように残虐なシーンが映像化されないので読めたけど、映画は・・・??
ストーリーは悲惨だけど、最後にちょっと救われた感じでした。
気になっていたから、読んでみて良かった一冊です。
著者:山本文緒
出版:文藝春秋
初版:2000.10.30.
紹介:「プラナリア」自分の体が半分になってもそれぞれが再生するという・・・乳ガンで乳房を喪った私もプラナリアになれば再生できるのだが・・・。
「ネイキッド」がむしゃらに仕事をしてきた、だけどそれが2人の距離を離していった。離婚と同時に仕事を失いひとりになったとき、編みぐるみにハマリ、マンガ喫茶で時間をつぶす私の前に現れた、優しい男・・・。
「どこかじゃないここ」夫のリストラ、子供の学費、夜のパートにでる私。家族のために一生懸命働いているのに、子供は父を避け、家庭を避け、私から離れようとしていく・・「囚人のジレンマ」7年のつきあい。セックスレス。ラブリングをもらっても嬉しくない男との結婚は考えられるか?
「あいあるあした」
仕事ばかりして、妻に浮気された男。仕事を辞めて始めた居酒屋。転がり込んできた手相見の女。11歳になる娘の髪を切るときは父親の顔に戻る。
コメント:女、或いは男のものがたり。
決して自堕落だったつもりもない、精一杯がんばって家族や自分のためにできるだけのことをしてきたのに、かえってそれが仇になってしまう。置き去りにされた自分の居場所を見回して、小さなため息をつく。私は一体何をしているんだ?
同時に直木賞を受賞した「ビタミンF」と妙に対をなしているような作品だ。「ビタミンF」は男の、おやじの物語であったのに対し、「プラナリア」は取り残されて、自分の思惑とは違った方向に流れていく時の中で、ただ立ちつくす女の姿が見える。
著者:宮部みゆき
出版:新潮社
初版:1998.09.01.
紹介:盆市で大工が拾った迷子の男の子。迷子札を頼りに家を訪ねると、父親は火事ですでに亡く、そこにいた子は母と共に行方知れずだが、迷子の子とは違うという・・・・・・(「まひごのしるべ」)
不器量で大女のお信が、評判の美男子に見そめられた。その理由とは、あなおそろしや・・・(「器量のぞみ」)
下町の人情を怪異を四季折々にたどる12編。切なく、心温まるミヤベ・ワールドの新境地!(裏表紙より引用)
コメント:「鬼子母火」娘を置いて死んだ母の思いが髪に宿り・・・
「紅の玉」華美の禁令のおかげで高価なかんざしが作れなくなった佐吉に、注文が・・・「春花秋燈」蔵の奥深くしまってある古物の行灯には曰くがあった・・・
「庄助の夜着」着物には様々な思いがとりついている。庄助が買った夜着に憑いていたのは?
「だるま猫」臆病者の文次は火消しになりたかった。だるま猫の頭巾をかぶると空勇気が出てくると言う・・・
「小袖の手」ものには、それぞれ魂が憑いて来るという。九十九神・・・
「首吊りご本尊」辛い奉公に命を絶とうとするとそこにでてくるのは・・・?
「神無月」娘の治療費には、大金がいる。その金を作るのは年に一度、神無月の夜。
「侘助の花」看板屋の所に、娘だと名乗り出た女の真意は?
「紙吹雪」因業な金貸しと女中。彼らの間にはどんな事情があったのか?屋根からまいた紙吹雪はあの日の雪のようだった。
なもない町の人々の悲しみ。昼と夜。心の中にひそむ思いがひっそりと姿を現す。
ちょっと不気味で哀しいお話。中で気になったのは「だるま猫」と「侘助の花」です。