蛇を踏む

著者:川上弘美
出版:文藝春秋
初版:1996.09.01.
紹介:「蛇を踏む」蛇を踏んでしまったら、蛇がニセの母となって部屋に住みついてしまうという話。
「消える」その家族事によって違う血筋。ある家は家族が存在するののに姿が消え、またある家族はからだがちぢむ。家族・家のもつふしぎな因習・・・そんなことはあり得ないと思いつつ、知らないところには何があるかわからないと言う不安な気持ちを呼び覚ます。
「惜夜記」夜の始まりからの2つのお話。奇数章は生き物にまつわる話。偶数章は、私と少女の再生と老化。そして、夜が明ける。第115回芥川賞受賞作
コメント:日常の不条理を描いているわけではないのだけど、何だろうこれは?作者によればすべて「うそばなし」なんだそうだ。

物語が始まる

著者:川上弘美
出版:中央公論社
初版:1996.08.10.
紹介:公園で男の雛形を拾った。生きている。育てていくうちに次第に成長しているらしい。時折、中くらいの人間になり、また、雛形に戻る。その雛形と恋人の間の微妙な関係。雛形との恋・・・。そして、終わりは唐突にやってきた。
他・「トカゲ」幸運の座敷トカゲ「婆」「墓を探す」短編集4つ
コメント:川上弘美の作品は初めてである。なんだろう?このふしぎな空間・・・ありそうでなさそうな、でもどこか心の片隅に隠れているブラックボックスを覗かれてしまったようだ。「物語が始まる」は、ちょっと面白かった。

翡翠の城

著者:篠田真由美
出版:講談社
初版:1995.11.05.
紹介:明治時代以来、創業者の巨椋一族で固められてきたオグラ・ホテルに内紛が持ち上がった。創業者の娘で95歳になる老女が住む別邸・碧水閣の取り壊しを巡って一族の意見が対立、次期社長の座もからんだ骨肉の争いが勃発したのだ。沼のほとりに建つ異形の館を訪れた桜井京介は、一族の血塗られた歴史に迫っていく。(裏表紙より引用)
コメント:幼い子供の記憶に残る、その映像に隠された真の姿は・・・?
この3作目で、ちょっとだけ気になる蒼くんの過去が顔を覗かせた。これが読者の気をひくのよね・・・。推理小説そのものはそんなに魅力的とは思えないのに、どうも作者の思うつぼにはまってしまう。

上弦の月を喰べる獅子

著者:夢枕獏
出版:早川書房
初版:1989.08.20.
紹介:夢枕獏氏によれば、「これは、天についての物語である。」
宮沢賢治の詩をひとつの螺旋にして、賢治ととし子、写真家と涼子の2つの人格を内包した、アーガタ。「縁と業」・「問いと答え」。めぐりめぐった輪廻のなかで混沌とした時と空間がそこにあり、またそこにない。
その時代、またあるときある場所で、それぞれの終焉と誕生が生まれる。
コメント:夢枕 獏の作品を読んだのは初めてだったのですが、
ウーン、けっこう面白かったですね。最初はどういう構成になっているのか
よく分からなかったので、混乱しました。
ラストが、また不思議なのですが、これこそ、時間が空間であるという、あの問いと答えに呼応しているのですね。

冷静と情熱のあいだ Rosso

著者:江國香織
出版:角川書店
初版:1999.09.30.
紹介:あとがきより一部抜粋
どんな恋もひとりの持ち分は1/2。これはあおいの物語です。
人生というものは、その人のいる場所にできるものだ、という単純な事実と、心というのは、その人のいたいと思う場所につねにいるのだ、というもうひとつの単純な事実が、こういう小説になりました。
コメント:どちらかというと、辻仁成の方が好きです。なんで江國さんのがあんまり好きじゃないのか、イライラするのか、不思議なのですが・・・。
もしかしたら、同じ女性ゆえに、素直じゃない・人に頼りすぎた・女のずるさと弱さが、鼻についたのかもしれない・・・・。なんて思ったりしています。

冷静と情熱のあいだ Blu

著者:辻仁成
出版:角川書店
初版:1999.09.30.
紹介:「あおいの30才の誕生日にフィレンツェのドゥオモに一緒にのぼろう。」
順正にとってのあおい、裏切り、忘れられない恋人。誤解が解けたときにそれまで閉じこめて置いた思いが流れ出す・・・。
同じイタリアという国で、それぞれの生活を営むあおいと順正の、長い恋の物語。
あとがきより抜粋
冷静と情熱のあいだには何があるのだろう。愛と孤独のあいだには何が横たわっているのだろう。読者の皆さんがこの作品を通してそれぞれの感情のあいだに流れる小さいが決して途絶えることのない川を発見してくださることを希望しています。
コメント:イタリア、歴史をそのままに残すフィレンツェの町で、絵画の修復をする順正。
古い絵の汚れを落とし、その絵の持つ真の姿を見つける・・・。彼のその仕事と、閉じこめられた恋の修復がダブって見えてくる。何故だろう、純正は自分に正直で誠実に見えてくる。

グイン・サーガ外伝①七人の魔道師

著者:栗本薫
出版:早川書房
初版:1981.02.15.
紹介:幾多の冒険をへた後、今はケイロニア王となった豹頭の戦士グイン。だが、数奇なる運命の糸に導かれる彼には、平穏な日々の訪れることはなかった。邪悪なるものの影は、まず恐るべき悪疫の姿をとって七つの丘なすケイロニアの都サイロンを襲った。そしてグインは、その危機を打開すべく魔道師イェライシャのもとを訪れたが───天空をかける幻の馬、夜空に浮かぶ巨大な顔、そして妖魔の結界での人知を超えた死闘───さしもの英雄グインも、凶々しい力の前に絶体絶命の危機に陥る!全百巻におよぶグイン・サーガ中の一エピソード、ここに登場!(裏表紙より引用)
コメント:最初は、訳わからず、おどおどと読んでいましたが、3分の1を過ぎたあたりからあの異界の雰囲気に慣れてきました。実は、途中で最後の部分をちょっと覗いちゃったのだ。
それで、安心して読んでたわけです(笑)。
後半は、面白くて一気に読めました。グインの世界をちょっとだけ見せてもらいました。

デルフィニア戦記1「放浪の戦士」

著者:茅田砂胡
出版:中央公論社C★NOVELS
初版:1993.10.25.
紹介:刺客に追われる漂泊の戦士ウォルと異界からの迷子リィ。剣戟のさなか、孤独な二人の戦士の偶然の出会いが、デルフィニア王国の未来を、アベルドルン大陸の運命を大きく変えていく。
やがて「獅子王」と「姫将軍」と呼ばれることになる二人の冒険はここからはじまる。
(裏表紙より引用)
コメント:こういうお話を「ファンタジー」と呼んでいいのだろうか?
ジャンルはともかく、思わず引き込まれ、その先が気になってしまうシリーズです。
少女向け青少年向けの本なのかもしれないが、たまにはこういう世界にどっぷりハマルのも悪くないな。全18巻だそうです。楽しみ楽しみ。

ぼんくら

著者:宮部みゆき
出版:講談社
初版:2000.04.20.
紹介:八丁堀の同心・井筒平四郎が受け持つ鉄瓶長屋の人々が、一軒二軒と家移りをしたり、事情でいなくなったりすることが続いた。腑に落ちない思いを抱えた平四郎、背後になにか秘密が隠されているのではないかと密かに調べると・・・。
 江戸の下町、気のいい店子たちとまじめに働く差配。隠密、大店、岡っ引き。
果たして「鉄瓶長屋」に隠されているものはなにか?
コメント:読んでいるうちに、ふとそこに江戸の街角が出現しそうなくらい違和感がない。ぐいぐい引き込んでしまう宮部さんの筆の力はすごい!取材とかベースになっているものが、たくさんあるんだろうなって思います。
事件の真相が次第に明らかになっていくのだが、最後の状況が想像するほど悲惨じゃないのがいいです。
弓之助くんとおでこのコンビがこれまた面白い。このキャラの組み合わせでまた別の作品が出ないかなぁ・・・期待しちゃいます。

射手座の殺人手鞠唄

著者:日向章一郎
出版:集英社コバルト文庫
初版:1999.12.10.
紹介:現役高校生作家・連城龍希に頼まれたノリミは、私立P高の生徒になりすまして校内に潜入した。連城あてに差出人不明の手紙が届いたからだ。「殺人手鞠唄を、君は知っていますか?」と始まる手紙。正体の分からない敵に対し、ノリミと連城は罠を仕掛けたのだが、裏をかかれて失敗してしまう。まるで2人の手のうちを見透かしているかのように───。そして、最初の『赤の事件』が起こって・・・?(表紙扉より引用)
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