著者:宮部みゆき
出版:PHP出版
初版:1997.03.17.
紹介:本所深川をあずかる、岡っ引きの茂七親分が、下っ引きの糸吉・権三とともに、江戸の下町で起こる摩訶不思議な事件に立ち向かう。茂七に事件解決のヒントを与える謎の稲荷寿司屋や超能力を持った拝み屋の少年など、個性あふれる登場人物たちと織りなす人情捕り物話の数々。
・・・・「鰹」「白魚」「柿」「桜」など、江戸の季節を彩る「初もの」を題材に、時に哀しく時に妖しく描く時代小説。(裏表紙より引用)
コメント:宮部みゆきの江戸ものは、読み始めるとスーッとその時代に入り込んでしまう。いくつかの事件をたどりながら、またこの先の作品に続く登場人物が顔を見せている。
「初ものがたり」というので「お初」ちゃんが登場するのかと期待していたのだが、それとはまた違うようです。
江戸ものの色々な作品がどこかでつながっていると思うと、それを見つけるのも面白い。
著者:茅田砂胡
出版:中央公論新社
初版:2000.08.25.
紹介:この作品はもうひとつのデルフィニアかと、何度か言われたことがありますが、それは違います。もう一つのという言い方は正しくありません。むしろ、かつて存在したものの、今ではなくなってしまったデルフィニアの世界であるといえば一番近いかもしれません。(表紙扉より引用)
コメント:
著者:宮部みゆき
出版:毎日新聞社
初版:1996.10.10.
紹介:大学受験を失敗した孝史は、予備校の試験のために東京のホテルに泊まった。そこで出会った、暗い、影の薄い男・・・ホテルに飾れれた蒲生邸の写真・・・蒲生大将の肖像・・。場所はまさに.2.26事件に縁の地だった。テレビでは2.26事件の解雇番組を中継している。
そんなとき、ホテルが火災にあった。孝史を助けてくれたのは?そしてその場所はどこだったのか?
コメント:想像していたのとまったく違ったけど、ちょうど時節柄ピッタリの本でした。
「個々の細かい事象は変わっても、歴史の大きな流れは変わらない。」
「偽物の神」未来を見てみたい気もするけど、未来が分かっちゃったら、なんだか努力もしなくなっちゃいそうで・・・やっぱり個々の未来は不確定だからいいんだなぁ。
著者:重松清
出版:新潮社
初版:2000.08.20.
紹介:・ゲンコツ:カラオケに行くと「仮面ライダー」に変身する。自動販売機をイタズラする、息子と同じ年の近所の不良少年。勇気を振り絞って注意・・。サラリーマンと、親父の悲哀を背中にしょって。今日も心の中で変身する。
・はずれくじ:母親の入院、息子とふたりだけの食事、イジメ・・。自分の父親が買っていたたった一枚の宝くじ・・・はずれくじ・・・。父と息子が向き合うとき。
・パンドラ:娘の万引き、セックス・・・。子供と向き合う母と父はいつしかお互いの過去にもどる。そこには開けては行けないパンドラの箱が・・
・せっちゃん:娘の学校に転校してきた「せっちゃん」はいじめられている。毎日せっちゃんの話をする娘だが、体育大会に来なくていいという・・・
・なぎさホテルにて:二十歳の誕生日を過ごしたホテルから17年後に招待状が届いた。17年前に来たふたりは、それぞれの生活をもち、今ひとつの夫婦は離婚の時を迎えている。そこには「未来ポスト」からの手紙が・・
・かさぶたまぶた:完璧なはずだった・・・父親としても、夫としても、社会人としても・・だけど。
・母帰る:ある日、父を置いて母はでていった。その母が1人になったときに、父が起こした行動とは?
コメント:これは家族の話で、実は男の話です。父であり、夫であり、その前に男である。男の悲哀が何となく伝わってくるのはなんなんだろう。
著者:江國香織
出版:集英社
初版:2000.04.30.
紹介:陶子・草子・エミ子・道子・れいこ・あや・桜子・えり・まりえ・・9人の女の恋愛事情。恋と愛と結婚と、その後延々と続く日常生活の中で様々な思いが交錯する。主に30代の女たち・・・。
コメント:檸檬の木は、誰のお庭だったの?なんだか読み落としちゃったのかな?
9人の女性がでてくるの。30代の女性の気持ちって、わかるんだけど、何となくすっきりしないって言うか・・・だから、何が言いたいんだ?と言う感じなのよね。私もうおばさんになっちゃったのかしら?
これを読んだ、30代の女性は、すごーく共感するところがあるのかなぁ。誰か解説してー!
著者:浅田次郎
出版:文藝春秋
初版:2000.04.30.
紹介:幕末から明治への大きなうねりの中で、生まれ育った、新撰組の巨大な闇が次第に明らかにされていく。
50年という年月を振り返りながら、吉村貫一郎と言う、1人の男を巡る様々な人の記憶。浮き彫りにされていく彼の姿と、あの時代。
歴史の中で彼らの存在は、果たしたどんな意味があったのだろうか。
コメント:下巻「斉藤一」に泣けました。
これは単なる新撰組の話ではなくて、
男が本当に大切にしようと思っていたものがなんなのか・・・
その吉村貫一郎の後ろ姿に、浅田次郎のロマンが感じられる。
著者:門野晴子
出版:海竜社
初版:1999.01.12.
紹介:老母と会話ができる喜びを噛みしめるときがある。
七年も介護のようなものをやってこれたのは、
彼女の耳が遠くてトンチンカンな時もあるにせよ、
会話が成り立っているおかげだろうと思う。
母は母なりに、要介護暮らしに腐らない努力をしている。
その精神力に脱帽する私でもある。(ト書きより引用)
コメント:門野さんの講演を聞いたことがある。
その時は青少年の性や教育問題がテーマであったが、
「度肝」を抜かれた記憶がある。
その人が、実の母の介護に携わり、これからは老人問題について考えて行きたいと話されていたが、その先がNHKの朝の連ドラ「天うらら」であり、最近の一連の著作である。奇しくも、同じ練馬区に住み、老いていく両親と一緒に暮らしていると、いろいろと気になってくる福祉。
友人の中にも同じような家族を抱えたり、或いは、ヘルパーのしごとをする人もいる。いよいよ、私にも近づいてくるのだ・・・。
著者:光原百合
出版:女子パウロ会
初版:1996.03.15.
紹介:読んでいるとちょっと幸せになれる、そしてちょっと悲しい小さなお話が17編。ホラ、かたくなに閉ざされたあなたの心にも小さな灯火がともる。
籐城清治の影絵が、メルヘンの世界によく合っている。
コメント:短編の童話集です。
小さな石の気持ち・何も出来ない魔法使いの話・自分を守るために全身をトゲだらけにしてしまった花木。海を夢見た樫の木・ベットの裏側の国で生きてゆくもの・散らない桜の木・大切な物を入れる袋・よけいな飾り物をサッパリ落としてくれる石鹸・飲むと願いが叶う泉の水、しかしそこには風の声。etc・・・
著者:J.D.サリンジャー
出版:白水Uブックス
初版:1984.05.20.
紹介:「子供の夢・純粋さ」と「大人の現実と欺瞞に満ちた世界」。このあいだで精神の葛藤をする17歳のホールデン。
大人へ反発し、友人を批判し、一方で他人を求め自分の存在を確認するために「電話」をかけつづける。追いつめられて、逃げ出して、救いの手を伸ばしたところが年の離れた妹だった。
「兄さんは世の中に起こることが何もかもいやなんでしょ。」
ライ麦畑でつかまえて欲しいと願っていたのは、他ならぬホールデンだったのだ。
彼を救い出したのは・・・
コメント:前半は訳が今ひとつしっくりこなかったのだが、後半になって主人公のほとんど独白に近い内容に、引き込まれていく。50年前に書かれた作品としては、なかなかおもしろい。
「大人への反逆」の一方で次第に崩れていく精神。宗教や国の違いを問わない普遍的な内容と言うが、今の自由奔放に生きている子供達には、このような葛藤があるのだろうか?どんな感想を持つのかそれも興味があります。
著者:飯田穣治 梓河人
出版:角川書店
初版:2000.01.31.
紹介:自殺を考えているホームレスの流は、寒いある日、裸の赤ん坊を拾う。
その赤ん坊のお尻に貼りついていた新聞紙の記事から「アナン」と名前をつけ、ホームレス仲間と育てる事に。その赤ん坊は、実は他人の悲しみを聞いて、それを解き放つという不思議な力を持っていた・・・その力をいつしか、芸術に高めていくアナン。
彼とその育ての父がたどる運命はどこに繋がっていくのか?
コメント:先が気になってどんどん読んでしまいました。アナンの魅力はすごいですね。ラストはどうなるんだろうって、すごく気になったけど、なるほどと納得のいく結末でした。