著者:セシリア=スベドベリ
出版:偕成社
初版:1978.10.01.
紹介:わたしたちの弟のトビアスは、ふつうの子ではありません。トビアスはすこしちがっています。彼は障害児です。パパとママは障害児とはどういうものかを説明してくれました。 そこでわたしたちはこの本を作りました。わたしたちと同じように、ふつうでない兄弟がいるほかの子どもたちのために・・・・・。そして、どんな子もいっしょに遊び、わかりあえるようになるといいなと思うから・・・。そうすれば、ずいぶん楽になるでしょう。(表紙カバーより引用)
コメント:「天の瞳」成長編Ⅱで倫太郎が紹介していたほんの一冊。
ダウン症の赤ちゃんを迎えた、母親と、その兄弟の様子が書かれているの子供向けの本なのだけど、ちょっと気になって図書館で探してみた。
お母さんが書いたこの本は、トビアスが彼の兄弟たちからとても愛されていることが、しっかりと伝わってくる。
難しい理屈じゃない。心から、そうなんだと思える、普通の人も特別な人も、ともに支え合いながらお互いを知り合う事が大切なんだね。
理屈よりも、まず読んで欲しい一冊。
著者:天童荒太
出版:集英社
初版:2000.11.10.
紹介:「とりあえず愛」
「わたし、なつみを殺しちゃう」妻の口からこぼれた言葉は、武史に不安と苛立ちを覚えさせた。仕事に追われ、安らぎの場であるはずの家庭で苛立ち・・・。
「うつろな恋人」
ストレスケアセンターに入所した彰二が出会った清楚なイメージの少女。彼女の恋人は、現実には存在しない。実体のない恋人によって支えられた少女、と真実を知らせようとする男。2人の急速な接近が、何を引き起こすのか?
「やすらぎの香り」
自分の気持ちを出すことの出来ない女と、姉の死を事故の責任と思いこんでいた男。
社会の中から取り残され気味だった2人。1人ではやっていけないけど、2人なら支え合っていけるのか・・・。
「喪われゆく君に」
コンビニでバイトしている俺の目の前で、突然倒れた男。彼の死に、俺の責任はあるのか?ないよな・・・。男は妻の姿を恋人の上に重ねる、その繰り返しの中で、それぞれが失い、それぞれが見つけた現在。死んだ男に自分のイメージを重ね、死を迎えた1人の男の存在を俺は確認する。
コメント:心身の健康や、願っていた夢や理想。またかけがえのない大切な人を失ったとき、私はどうするだろう?今ある平穏な生活のすぐ下に隠れる不安定な社会。そんな中でなんとか自分を見失わないように、ギリギリでがんばっている現実。決して他人事ではない、身近な問題として感じてしまう。それでも、出来れば、思いやりを持って生きてゆけたらと思うのだが・・・。
著者:石田衣良
出版:文藝春秋
初版:2000.06.20.
紹介:池袋西口公園を中心に、活動するマコト。果物屋で、コラムニストで、そして裏では頼まれた仕事をこなす・・・。
ネットの中の女の子をストーキングする男・・・「妖精の庭」
目につくものを端からすべて数えるという少年。彼はまわりに心を閉ざしている。少年が誘拐されたとき・・・「少年計数機」
連続通り魔事件の被害者のために立ち上がる老戦士2人。マコトに犯人探しを月賦プで依頼する。犯人の腕にあった「銀十字」のブレスネットを手がかりに、犯人を追い込む。「銀十字」
大人のパーティ潰し・・・裏の世界から犯人探しを依頼されたマコトがたどり着いた意外な犯人像。そして、その裏に隠された、真の犯人は?「水のなかの目」
テレビ化された「ウエストゲートバーク」の続き?
コメント:図書館で見つけて、「あら、長瀬君だわ!」とつい手に取ってしまった本。
池袋は、よく歩く街だけど、こんな事件に遭遇することなんて、まあ皆無なのだが・・・。とは言っても、実際通り魔が出現するし、アンケート商法は未だ健在で若い女の子を狙っているし・・・。
あ!それとは無関係?まあ、かるーく読めて、おもしろい本でした。
著者:田口ランディ
出版:幻冬舎
初版:2000.06.30.
紹介:アパートの一室で衰弱死した兄は、腐乱死体となって発見された。その部屋でコンセントに差し込まれた掃除機、彼はなぜ掃除をやめてしまったのか?
兄の死因。理由。生きることを放棄した緩慢な自殺?生きていると言うこと・・・。私の中で兄とコンセントのつながりが大きくなっていく。コンセントとはいったいなんだろう?
コメント:兄の死・生き方について考えていくうちに突き当たったのは、結局自分自身の存在証明のようだった。
カウンセリング・夢・幻覚・精神分析・シャーマン。
コンセント・・・意外に当たり前な発想だったなぁ。
著者:ダニエル・キイス
出版:早川書房
初版:1998.02.28.
紹介:病院のベッドで、もう何日も眠り続けているキャロル・クレイ。31歳になる彼女は幼い頃から「眠り姫」と呼ばれていた。それは彼女が、いつ、どこで、何をしていても突然眠ってしまう原因不明の奇病、睡眠障害にかかっていたからである。その発作によって、彼女は今深い眠りの底にいた。
キャロルが眠っているあいだに、彼女のまわりでは恐ろしい事件が起きていた。娘のエレナが、ボーイフレンドとともに死体で発見されたのだ。その数日後、キャロルは突然、眠ったまま驚くべき物語りを語りはじめる。「二人を殺したのは夫ノロジャーだ」と。
だが、優秀な精神科医アイリーンは、キャロルの言葉に疑いをもつ。精神療法家としての技術を駆使して、アイリーンはキャロルの心に隠された真実を探りはじめたが・・・・・・やがて明らかになる、想像を絶する真相とは?(表紙扉より引用)
コメント:睡眠障害・催眠療法・臨死体験・輪廻転生思想・・・
最初、ノンフィクションかと思っていたら、小説でした。
睡眠障害で記憶を閉じこめられた「眠り姫」キャロルと、夫のロジャー。
彼女を取り巻く4人の騎士たち。
殺人の罪で死刑を言い渡されたロジャーを電気椅子から取り戻すことは出来るのか?
企まれた犯罪、証拠の隠滅、職権乱用・・・。
信じている物が実は虚偽だとしたら・・?我々は、いったい何を信じればいいのだろう?
著者:北村薫
出版:新潮社
初版:2001.01.20.
紹介:「スキップ」「ターン」に続く「時と人」をテーマにした3作目。
33年に一度やって来るという「獅子座流星群」。
戦争に向かっていく日本を内側から見つめている少女。はかない想いは無惨にも目の前でうち砕かれる。自分だけ生き残ってしまったという負い目。なかったはずの未来が広がっていく。
時を経て、出逢うものは?石川啄木・かるた・・・・呼び覚まされる記憶。
輪廻・転生・そして、僕は君と初めてのそして最後の「獅子座流星群」をみたのだった。
コメント:第1部を読んだときには、北村氏お得意の文学作品ををベースにしたもう一つの「子供が見た太平洋戦争」かと思ったのです。妹尾河童の「少年H」をちょっと思い出してしまった。ところが違った。なんか、いいねぇ・・・今みたいに即物的直接的な表現じゃなくて、本の中の一説とか歌詞の一部とか・・・そいうところにちょっと自分の気持ちを閉じこめて送るそういうのってステキだわ。
2部はガラッと変わって、病院に入院している男の日記を元にした問わず語りだ。1部2部の関連がしばらくわからないのだが、読み進めていくうちにとぎれていた糸が繋がっていくのがわかる。
物語の最初にでてきた「獅子座流星群」が最後に一本の柱になる。
著者:渡辺淳一
出版:角川文庫
初版:1982.09.10.
紹介:フィラディルフィアでの野口英世は、フフキスナー教授の下で悪条件と戦いながらも、徐々に頭角を現わす。人々はこの小柄な東洋人の猛烈な研究態度に驚嘆した。異境での超人的な研究と活躍。そして白人女性メリーとの結婚。世界的な名声に包まれた英世の、日本への凱旋帰国。
その栄光に影がさしはじめた晩年、アフリカへ黄熱病研究のため、英世は飛ぶ。自らの研究の犠牲となって、53歳の生涯を、遠くアクラの地で果てるまでの後半生を描く。
英世の劇的な生涯を、医学と人間性の両面から鋭く照射、その真実の姿を迫真の筆で描破した、吉川英治賞受賞の傑作。(裏表紙より引用)
コメント:野口英世の意外な人間性。はっきり言って、普通じゃないなぁ・・・。
そのあまりにも人間くさい、偉人とはかけ離れた英世の素顔と、黄熱病を初めとした細菌研究への情熱には目を見張る物がある。
時代の流れといってしまえばひとたまりもないが、研究に生涯を費やした野口英世の姿は、結果的には研究成果は得られなかったのだが、「遠き落日」によって、彼が確かに生きてきたというところが伝わってくる。だけど、何とも言えない人生だ・・・。
著者:渡辺淳一
出版:角川文庫
初版:1982.09.10.
紹介:野口英世は、日本人にもっとも知られた伝記中の偉人でありながら、虚飾に彩られた偶像であった。
医師出身の渡辺淳一が、国内はもとより、アメリカ・メキシコ・アフリカでの現地取材と、膨大な資料を駆使して、八年の歳月と情熱を傾けて完成した、野口英世の伝記的小説が本書である。
1876(明治9)年、猪苗代湖畔の貧農の家に生まれ、周囲の援助で困苦の中から上京、次第に医学への階段を登り、やがて単身アメリカへ出発するに至るまでの、若き無名時代の苦闘の日々・・・・・・。
人間・野口英世の破天荒な魅力と生命力にあふれる半生を、赤裸に描く力作。(裏表紙より引用)
コメント:猪苗代湖畔の「野口英世記念館」を訪れたことがある。貧しい生活ぶりと、母の苦労。不自由な手で勉強を続け医学をめざしたという、そんな印象だった。
子供向けの伝記は、確か読んだような記憶があるのだが・・・
本当の、野口英世って、こんなとんでもない男だったのか?!
イヤー、ビックリ。
著者:若竹七海
出版:中公文庫
初版:1998.12.18.
紹介:ルーム・クリーナー、電話相談、興信所。トラブルメイカーのフリーター・葉村晶と娘に借りたピンクの子供用自転車で現場に駆けつける小林警部補。二人が巻き込まれたハードボイルドで哀しい8つの事件とは。間抜けだが悪気のない隣人たちがひき起こす騒動はいつも危険すぎる!(裏表紙より引用)
コメント:若竹七海、初挑戦。あちこちで結構ファンの方が多いので、どんな作風かと思いましたが、これはけっこう初期の作品なのかな?軽く読めて面白いです。ちょっと赤川次郎風でもあるかな・・・葉村晶と、小林警部はいっしょには登場しないんだけど、少しずつすれ違っている?最後の「トラブルメイカー」で両者が遭遇するって言うのは、この先の展開が何か続くのか?という期待を誘う。暇つぶしにいい1冊。
著者:茅田砂胡
出版:中央公論新社
初版:2000.11.25.
紹介:低脳海賊がケリーを本気で起こらせた。触れてはいけない男の過去を、土足で踏みにじったのだ。
彼は左目を琥珀色に過輝かせ、口元には薄く微笑みをはいた。もう誰にも止められない。この空域の船は残らず消滅する────!
リミッター解除!!
私───ダイアナ・イレヴンスは白い閃光となって跳躍した。(裏表紙より引用)
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