いつかパラソルの下で

itukaparasoru.jpg著者:森絵都
出版:角川出版
初版:2005.04.30.
紹介:厳格な父の元で育てられた3人の兄妹。社会人となって父の元から逃げ出した兄と私。その父が突然亡くなって、そのあとに残された母の様子がおかしくなってきた。一周忌を前に、父の生前に女の影。「暗い血」とは?決して語ろうとしなかった父の生い立ちを知るために佐渡へ渡った3人の兄妹を待っていたのは?
がんじがらめに縛られたことで、自分でも気づかないうちに、いろんなことを父のせいにしてきた子供たち。父の突然の死によって、生身の父に対面し、そのことで自分自身を見つめる事も出来るようになる。皮肉なことに、父の死が残された家族に思いがけない団欒をもたらすようになったのだ。父に反発していた子も従順に振舞っているふりをした子も、少しずつバリヤをのりこえ、少しずつ成長したのだ。
しかし…主人公野々の性に対するわだかまりや、恋愛や仕事に対するいい加減にも見える姿勢。こういうのはいまどきに同年代の人にとって、ちょっと共感できるようなポイントなのかな?まあ、家族とか、自分の生き方が問題になってくるわけね。

大逆転の痴呆ケア

tihoukea.jpg著者:和田行男 宮崎和加子
出版:中央法規
初版:2003.09.20.
お年寄りを大切にして、なんでもお世話してあげることが果たして、その人のためになっているのか?至れり尽くせりの介護をすることは本人が持つ能力さえも奪っている。
そのとき食べたいものをみんなで考え、自分たちで買い物に出かけ、食事の支度をする。洗濯をすれば、干して取り込んでたたむ。部屋が汚れれば掃除をする。玄関に鍵はかかっていない。2階の部屋には気をつけて上る。階段の昇降は生活の中に取り込んだ運動になる。機能訓練よりも、まずは日々の生活を大切にしよう。
グループホームの玄関を開けて、外にでよう。ホームの中に人を呼ぶのではなく。家から町に出て行こう。
だけど、長く生きた人たちが何人も一緒に暮らしていれば、それぞれの思い、やりたいことやりたくないことがあり、その思いが衝突することがある。それは、どんな集団においても起こりうることだけど、そういうときに、その間を取り持つ人が必要になる。それが、グループホーム「こもれび」の仕事人だ。
認知症を身近に抱えている身としては、目からうろこ、正に逆転の発想かもしれない。
かといって、それを全て家に取り込むことはきびしい。常に気を配り、その動向を把握しつつ、自由を制限しないで、なおかつ安全に。でも、そういうグループホームがあるのだとしたら、少しでも人間らしく暮らしていけるのなら、かなり魅力的には違いない。
確かに、デイサービスや老健でのサービスを受けるようになると、誰かに何かしてもらうことがあたりまえになり、だんだん「依頼心」が強くなってくる。座って口をあけて待っているような状態になってしまう。これはよくないとは感じている。
だけど、そのサービスを拒否するようになったら、これもまた大変。
これからの介護のありかたは、まだ少しずつ姿を変えて行くんだろうか?

かんじき飛脚

kanjikihikyak.jpg著者:山本一力
出版:新潮社
初版:2005.10.25.
加賀藩と土佐藩に届けられた、正月」初潮の儀の招待。
老中の意図は?内儀の病が知れたか?
加賀藩の内情をさぐりだした老中御庭番と、藩を守るために走る、浅田屋の三度飛脚たち。豪雪と難所の中、命をかけた三度飛脚たちにハラハラドキドキ、そしてその周りの人々の人情に降れ、とても心が温まる。
今なら妻が病気がちで公務に出られないとしても、なぜまずいのか?と思ってしまった私。江戸時代、将軍家は大名が力を持たないように、参勤交替をさせ、財力を使わせた。内儀は都の人質だったのか?その点がいまいちピンと来なかったかな。

ナラタージュ

narataju.jpg著者:島本理生
出版:角川書店
初版:2005.02.25.
回想…恋の記憶は忘れようとして、忘れられるものではない。時がたつにつれて良いところだけが残って行く。それはそれで悪いことではないと思う。そのことを含めて、丸ごと受け入れてくれる人が現れるのなら、それは幸せなこと。
だとしても、葉山先生の弱さ、そして小野君の行動も男にありがちで、受け入れがたい。女の身勝手さを棚に上げていると分かっているけど、きれい事じゃいかないんだな。

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

tokyotawa.jpg著者:リリー・フランキー
出版:扶桑社
初版:2005.06.30.
 著者の、初めての長編小説とは言うものの、かなり自伝的で、エッセイに近い印象。ただ時代が私の子供時代と重なるところがちょっと面白かったかな。
 母・家庭・自立、それにしてもこんなにまで「オカン」にこだわるのはやはり両親の関係がうまく行っていなかったためなのか?迫り来るその時に、逃げ出すことの出来ない「オカン」との別れを前にして、それでもこんなにたくさん自分のことを思い出し、書いてもらった「オカン」は幸せな人生だったな。
そうそう、岡田君と松潤がでていた同名の映画があって、しばらくその原作かと思っていたのですが、サブタイトルを見るとどうも違っている。その上、リリー・フランキーと言う人も実はよく知らないのでした。

レタス・フライ

retasuhurai.jpg著者:森博嗣
出版:講談社
初版:2006.01.11.
紹介:西之園萌絵が叔母らと訪れた白刀島の診療所をめぐる怪しい噂に迫る(刀之津診療所の怪)
長期の海外出張で訪れた某国の美術館で、僕が遭遇した不可思議な事件とは……?(ラジオの似合う夜)
ショートショート五編を含む、透明感にあふれた九編収録。
中に、VやGシリーズの登場人物が出てくるのだが…今までの作品を読んでないと、あれ?と思うのがあるらしい。「今夜はパラシュート博物館へ」読んでなかった~
レタス・フライって Let’s fly のことか?

となり町戦争

著者:三崎亜記
出版:集英社
初版:2005.01.10.
紹介:「となり町との戦争のお知らせ」(総務課となり町戦争係)
それは、町の広報誌に載せられた小さな記事だった。
9月1日迫り来る戦争に、何の緊迫感もなく、心の準備もないままその日は訪れた。何のための戦争なのか?どのような戦いが行われているのか?具体的なことが全く分からないままに、偵察員となった僕に見えてきたものは…?
行政の一環としての戦争事業、戦争コンサルタント。戦いを感じることがないにもかかわらず、確実に町民の戦死者がでる。
いったい、「戦争」ってなんだろう?
コメント:もちろんありえない話なのだが、現実の戦争というものも、私にとってはこれと同じような感覚でしかとらえられていないのかもしれない。どこかで、誰かが戦わされているが、その痕跡を全く実感できずにいる。そんな私の状況が、描き出されているのかもしれない。

ストローバー

歩くための、足にいい靴が欲しいと思って、デパートまで出かけた。
健康のためにバイト先までの20~25分を歩こうと思っているのだ。ちなみに今週は月・火と歩いていった。パンプスでも歩けるのだが、ウォーキングシューズを買おう!
スポーツシューズ売り場にあるだろうと思ったので、その前に、普通の婦人靴売り場を覗き、どんな靴があるか、参考にすることにした。
ウォーキングシューズ・・・あったあった・・・???けっこういいお値段が付いてる。
お店の人に勧められて、はいてみると、これがなかなか履き心地がいい。
初めて足の大きさを測ってもらったら、右が21.9 左が21.5大きさが違う!
しかも、足に幅と厚みがない!
選んだサイズは22cmのEだった。かかとがしっかりと靴に合って、足先は締め付けは少ないが、前にすべるようなことがない。
うーん。いい靴だけど、ちょっとなぁ・・・?
他の靴売り場を覗いて、履き心地を試すことにする。
まず、スポーツシューズのコーナーに行くと。22cmはあれど、みんな3Eなのだ。実際にはいてみても、かかとが浮く。でも、ファスナーが付いてるから、着脱は楽そうだ。完全防水と言うのも気になるけど…けれどやっぱり、かかとが気になる。
再度、婦人靴売り場で他の靴を試すが・・・どうも、最初に履いた靴が気になる。
結局、ストローバーのブーツタイプを買うことにした。色も、ワインというかチョコと言うか。なかなかいい色だ。最初に対応したおじさんのセールス手腕が良かったのかもしれない。
みると、パンプスもあるじゃないの・・・またの機会にパンプスも履いてみよう。
ちょうどセール中で1割引だし・・・
というわけで、時々、とんでもないものに一目ぼれしてしまう私なのだった。

わたしスタイルの暮らし

著者:青柳啓子
出版:筑摩書房
初版:2005.03.25.
紹介:リネン・麻紐・自然素材・手作り・野の草花。ページをめくるとそこには居心地のよい空間が広がっている。家族のために?自分のために?主婦は「ライフクリエーター」
コメント:時間の1/3を子供のために。1/3を主人のために。1/3を自分のために。自分を見失わず、そして家庭も大切にしながら、暮らしていく日々の様々なヒントやアドバイスがさりげなくちりばめられている。そんなふうに出来たら、いいよねぇ。

バスジャック

著者:三崎亜記
出版:集英社
初版:2005.11.30.
紹介:タイトルを見たときに、九州で起きた少年によるバスジャック事件を思い出した。そんなイメージを持って読み始めたのだが…まったく違った。
「二階扉をつけてください」:妻の留守中に、訳も分からずに「二階扉」をつけたのだが、その使い方は?
「しあわせな光」:街を見下ろす丘の上から見た自分の部屋の中には、昔の自分の姿が見えた…
「二人の記憶」:二人が話す記憶の食い違い。僕の知らない二人の過去・歴史。正しいのは彼女の語ることだろうか?でたらめなのは僕の記憶?
「バスジャック」:国民の「バスジャックをする権利」「バスジャック規正法」バスジャックはひとつの流行となり、失敗した暁には「バスジャック失敗者」「バスジャック棄民」としてその後の人生を送ることになる。シロウト集団のバスジャックが横行する中で、我々新・黒い旅団は「真のバスジャック」を遂行する。
「雨降る夜に」:見知らぬ若い女性が僕の部屋を訪れたのは雨の降る夜だった。「お借りした本だけは濡らさないようにと思っていましたから…」
「動物園」:動物のイメージを膨らまし、そのイメージに融合する。それが私の仕事だった。
「送りの夏」:老人はマネキンのように動かない老婆を車椅子に乗せ、静かに語りかける。別れる心の準備ができるまで…。
コメント:予想したのとは、だいぶイメージが違ったけど、この非現実的な状況の中で、主人公たちが、あまりあたふたと戸惑わないところが、今風でしたたかなのかもしれない。たとえば、阿部公房の作品の中では、その非現実的な日常の中におかれた主人公たちが、かなり疲労困憊していきながら、だんだんその異常さの中に取り込まれていく姿があったような気がするんだけど。