「老い方」革命

著者:大田仁史
出版:講談社
初版:2004.07.20.
紹介:外科医でもある著者が、自らの「老い」と母親の「介護」を通して、これからの「老いと介護」を考える。
1部.「老いのあり方を考えよう」
「痛みの共感」は、言葉に出して、思いやりを伝える→「言葉の持つ力」
自身のオムツ体験→「トイレで排泄すること」は基本的な尊厳
2部.「介護のあり方を考えるよう」
「ヘルパー3級取得運動」3つの利点
・自分が受ける介護サービスの質がわかる。
・人の世話をすることで他人への配慮やボランティア精神を培う
・介護予防への気配りができる
脳梗塞「寝たきりは寝かせ切りがつくる」「寝たきり防止は三日が勝負」
手厚い看護が、仇になる。
コメント:筆者も書いて書いているとおり、1部と2部で重なっている部分も多く、ちょっと話が回りくどい気もする。けれど、それを差し引いたとしても、勉強になることも多い。
「ヘルパー3級」勉強した方がいいのかな?

残虐記

著者:桐野夏生
出版:新潮社
初版:2004.02.25.
紹介:世間の好奇の目にさらされる、少女誘拐・監禁事件の被害者。失踪した作家が書き残した原稿には、被害者としての事実が書かれていた。誰にもわかってもらえない・封印された記憶。犯人との意思の交流、ひたすら助けを待った隣人。
解放後「性的被害者」としてさらされる好奇の目。崩壊して元には戻らない家族。
作家として書き綴る「毒の夢」「男の性」原稿の中に潜まされる「あったかもしれないもう一つの話」原稿の中の事実と虚構。誰にも話さなかった彼女の「真実」とはなにか?
コメント:新潟の誘拐監禁事件を思い出させる。引き込まれて短時間で読み終えてしまった。
少女期に体験する「男の性」は、女性に多大なトラウマを植え付ける。
そして、それは親にも誰にもいえない、審の奥にしまいこまれ、彼女自身を形成してしまうのだ。こういう心理はわかるような気がする。

痴呆性高齢者ケア(グループホームで立ち直る人々)

著者:小宮英美
出版:中公新書
初版:1999.10.15.
紹介:痴呆がおきてしまうのは仕方がない。家族が介護しきれなくなったときに、お年寄りを受け入れてくれるのはどこなんだろう?
多くの痴呆老人が病院を3ヶ月ことに転々とかわり、そのたびに新しい環境を受け入れられなくなって、痴呆がよりひどい状況に追い込まれていく。
お年寄りを管理する画一的な病院ではなくて、長期的に、ふだんの家庭での生活に近い状態で、お年寄りの持つ能力を引き出しながら、人間らしく生活を送る。それが可能になるのが少人数の「グループホーム」だ。
この本では、多くの痴呆老人のたどるケース・ケアの実態をもとに報告されている。
コメント:特に内臓疾患などを持たない、身体的には健康な高齢者が、痴呆という状態に陥ったときどういうケアが望ましいのか、考えさせられる。
いくつかの痴呆のケースが紹介されていて、本人の混乱・困惑ぶりが手に取るようにわかる。自分の居場所がないと感じる不安。
お年寄りが安心して生活できるようにするには、どうしたらいいのか?いろいろと考えさえられた。

介護にんげん模様(少子高齢化社会の「家族」を生きる)

著者:春日キスヨ
出版:朝日新聞社
初版:2000.08.05.
紹介:美しい介護体験記ではなくて、巷にあふれる、介護をめぐる「家族」の喜怒哀楽をたくさんのケースから紹介。
その多くは娘の立場、嫁の立場で親の介護をする女性である。
しかし、公的介護保険制度を含め、これからの日本の高齢者福祉を考えるとき「嫁が看る、娘が看る」「家族、特に女性が看る」という、「家族幻想」頼っていたのでは、根本的な問題は解決されない。
コメント:様々な家族の、「家族介護」が紹介されている。介護する側の見方だけではなく、介護される側の気持ち。また周りを取り巻く親戚、ヘルパーとの関係。介護保険制度が導入されて、一人が介護を抱え込むことは少なくなったかもしれないが、介護が必要なのに放置されている一人暮らしの高齢者も存在する。高齢者社会になり、介護を必要とする人が増え、それと共に、いろんな問題点も出てきた。
娘として、嫁として避けて通ることのできない問題であるだけに、この本は「介護」ということを客観的に見ることができて、とても参考になる。

空中ブランコ

著者:奥田英朗
出版:文藝春秋
初版:2004.04.25.
紹介:精神科医伊良部のもとを訪れた患者は、伊良部の子供のような稚気に、あきれ驚かされる。
変人どころの騒ぎではない。常識の枠外で生きているのだ。
サーカスでは空中ブランコに挑戦(空中ブランコ)
先端恐怖症のやくざと、ブランケット症候群のやくざ(ハリネズミ)
教授のカツラをはずしたい!破壊衝動に耐える婿養子(義父のヅラ)
一塁送球ができない三塁手を相手に、キャッチボール(ホットコーナー)
脅迫症と嘔吐症に襲われる作家(女流作家)
コメント:なに!?この精神科医?伊良部の言動は想像を裏切るものばかり。
およそ医者らしくもなく、子供のように、無心に無邪気に?まっすぐ生きることができるのか?・・・振り回されているあいだに、なぜか癒され、不安や迷いを断ち切ることができる患者たち。伊良部先生に拍手!
「金王神社→金玉神社」「王子税務署→玉子税務署」「東大前→東犬前」「大井一丁目→天丼一丁目」いたずら書き万歳!
読んでいて楽しくなる。「イン・ザ・プール」も精神科医伊良部が登場する作品集らしい。読んでみよう!

恋火 天国の本屋

著者:松久淳 田中渉
出版:小学館
初版:2002.10.10.
紹介:10年経ったら、いっしょになろう―。若き女性ピアニストと花火師の恋は突然終りを迎えた。
それから十余年。ピアノを弾く意味を見失いリストラされたピアニスト健太。伝説の花火復活に奔走する香夏子。完成されることなく別々の場所に離れてしまった「恋する花火」と「恋するピアノ曲」は、新たな二人によって、一つのハーモニーを奏でることができた。
コメント:映画化されたラブストーリー。ロマンチックで、まあいいですねぇ。

Φは壊れたね

著者:森博嗣
出版:講談社
初版:2004.09.05.
紹介:(裏表紙より引用)おもちゃ箱のように過剰に装飾されたマンションの一室に芸大生の宙吊り死体が!
現場は密室状態。死体発見の一部始終は、室内に仕掛けられたビデオで録画されていた。
タイトルは『Φは壊れたね』。
D2大学院生、西之園萌絵が学生たちと事件の謎を追究する。
森ミステリィ、新シリーズいよいよ開幕!!
コメント:わー!萌絵ちゃんだ~。新しい登場人物・加部谷恵美・海月及介・山吹早月が加わった。
犀川創平とよく似た思考回路を持つ海月及介はまた不思議。
「Φってなんだ~?」状態の文型人間にとっては、タイトルからして煙に巻かれた感じ。
「Φ現象」ヴェルトハイマーは、2本のスリットの向こう側から2個のライトを照らすというという、簡単な実験装置を作った。それぞれのライトのスイッチを、すばやく(0.06秒ごとの間隔で)入れたり切ったりすることによって、たった一つのライトが前後に動いているという錯覚が生まれた。これが「Φ現象」である。(マンガ心理学入門p103より引用)
これって、森博嗣の「Φは壊れたね」のΦじゃないかな?

東電OL殺人事件

著者:佐野眞一
出版:新潮社
初版:2000.05.10.
紹介:1997.3.8.深夜。渋谷区円山町のアパートの一室で東電OL渡辺泰子が絞殺された。彼女はエリートOLと売春という、ふたつの生活を持っていた。
この本は、事件の発端から判決までを追った記録である。事件の背景・被害者の素顔・ネパール人の容疑者。事件の真相を追ううちに、警察による冤罪のにおいが・・・
コメント:「ダブル・フェイス」という小説にもなったこの事件。意外にも、私はこの事件についてほとんど印象も記憶もないのだ。
本書を読んで、被害者が私と同年であることに驚いた。「慶応女子→慶応大学→東電OL」彼女の一見恵まれた、エリート人生が、いつから、どこでその道が曲がってしまったのか?
イヤ、まっすぐ歩いたその結果が、現在なのか・・・私にはわからない。

ハルシオン・デイズ

著者:鴻上尚史
出版:白水社
初版:2004.11.20.
紹介:自分は人間の盾であると信じる男。多額の借金をかかえこんだゲイのサラリーマン。自殺を止めたいカウンセラーの女。そんな、インターネットの自殺系サイトで知り合った3人が、自殺をめぐり妄想にとりつかれてゆく。多重人格らしい幻の男が、「地球照」の影の部分と重なる。
コメント:うーむ、生きていることは絶望なのか?それとも救いがあるのか?

魔法飛行

著者:加納朋子
出版:創元推理文庫
初版:2000.02.25.
紹介:もっと気楽に考えればいいじゃないか。手紙で近況報告するくらいの気持ちでね─という言葉に後押しされ、物語を書き始めた駒子。
妙な振る舞いをする〈茜さん〉のこと、噂の幽霊を実地検証した顛末、受付譲に売り子に奮闘した学園祭、クリスマスイブの迷える子羊・・・・・・
身近な出来事を掬い上げていく駒子の許へ届いた便りには、感想と共に、物語が投げかける「?」への明快な答えが!
(裏表紙より引用)
コメント:こちらも再読。しかし、悲しいかな、断片的に思い出すだけで、もうすっかり忘れてしまっていた。けれども、加納さんの一連のシリーズは、好きだなぁ。