聖母の深き淵

著者:柴田よしき
出版:角川文庫
初版:1998.03.25.
紹介:一児の母となった村上緑子は下町の所轄書に異動になり、穏やかに刑事生活を続けていた。その彼女の前に、男の体と女の心を持つ美女が現れる。彼女の失踪した親友の捜索を緑子に頼むのだった。
そんな時、緑子は4年前に起きた未解決の乳幼児誘拐事件の話を聞く。そして、所轄の廃工場からは主婦の惨殺死体が・・・・・・。
保母失踪、乳幼児誘拐、主婦惨殺。互いに関連が見えない事件たち、だが、そこには恐るべきひとつの真実が隠されていた・・・・。
ジェンダーと母性の神話に鋭く切り込む新警察小説、第2弾!
(裏表紙より引用)
コメント:村上緑子の刑事姿もかっこいいけど、女性としての生き方や、思いがテーマになっていて読み応えがあります。
先に、「月神の浅き夢」を読んじゃったので、山内練や、麻生との関わりをじっくり読みました。

夏のレプリカ

著者:森博嗣
出版:講談社
初版:1998.01.07.
紹介:那古野市の実家に帰省したT大大学院生の前に現れた仮面の誘拐者。そこには血のつながらない詩人の兄が住んでいた。
誘拐が奇妙な結末を迎えたとき、詩人は外から施錠されていたはずの部屋から消え去っていた。
朦朧とするような夏の日に起きた事件の裏に隠された過去とは!?事件は前作と表裏をなし進展する!
(裏表紙より引用)
コメント:ガーン!途中までは何となく分かったんだけど、結果は・・・見事にはずれちゃった。
犯人も、それからラストのところも、エエッ!?って言う感じだった。
悔しいなぁ・・・
今思うと殺人の動機が今ひとつ分からないのよね。もっとも、森さんのミステリーはいつも動機が常軌を逸してる様な気がするけど・・・もう一回読み返さないと読み落としたかな?
それにしても、犀川先生と萌絵ちゃんの関係は、ようわからん・・・。

えりも岬の母さん医師

著者:鈴木陽子
出版:集英社文庫
初版:1998.06.25.
紹介:子育てが終わったら、何を生きがいにしたらいいだろう・・・。
ある日、辺地で働く老医師の姿をテレビでみて、医者になりたいと思った著者。一念発起、36歳で医学部合格。
42歳で医者に。北海道えりも町の診療所に単身赴任。家族と離れた日、大声で泣き、大阪に住む息子の入院に心痛める著者。
しかし、女赤ひげ先生として孤軍奮闘。女性医師の姿を描く、感動の書。
(裏表紙より引用)
コメント:これはノンフィクションである。辺境医療の苦労の話かと思って読み始めたのだが、それはほんの一部でしかなかった。結婚して、子供を産んでからはじめた医師への勉強。「子育て後の生きがい探し」は、誰でも思うことだが、まず医師をめざそうなんて言う人はいないだろう。まして、夫が応援してくれるなど考えられない。彼女が自分の人生をイキイキと生きている間に、問題なく育っていたはずの子どもに気付かなかった一面が見えてきた。
長男の病気のことは別にしても、母として、子育てに一度も後悔の思いがなかっただろうか?家にいて、子どもを育てていたとしても、怜の人生は同じだったかもしれない・・・でも・・・と、私は思わずにはいられない。彼女の生き方は私にはまねできないし、真似したいとも思わないのだ。

巨人たちの星

著者:J.P.ホーガン
出版:創元推理文庫
初版:1997.03.01.
紹介:冥王星の彼方から<巨人たちの星>のガニメアンの通信が再び届きはじめた。地球を知っているガニメアンとは接触していないにもかかわらず、相手は地球人の言葉のみならず、データ伝送コードを知り尽くしている。ということは、この地球をいう惑星そのものが、どこかから監視されているに違いない・・・・・・それも、もうかなり以前から・・・!
五万年前月面で死んだ男たちの謎、月が地球の衛星になった謎、ミネルヴァを離れたガニメアンたちの謎など、絡まったすべての謎の糸玉が、見事に解きほぐされる。
ホーガン入魂の3部作、ここに堂々完成!(扉より引用)
コメント:なるほどガニメデ3部作というだけあって、これで完結ですね。
地球と太陽系をめぐる歴史の流れに、思わず引き込まれてしまいます。
ガニメアン・・・の気持ちを見習いたいくらいです。

りかさん

著者:梨木香歩
出版:偕成社
初版:1999.12.
紹介:ようこは友達が持っているリカちゃん人形が欲しかった。しかし雛祭りにおばあさんがくれたのはなんと、市松人形の「りかさん」だった。
りかさんがやってきた朝からようこの生活は一変した。ようこにはりかさんの声が聞こえるのだ。人形たちの声を聞きその心の奥に潜むものを救い出す。人形たちとその持ち主は深く関わっているのだ。
コメント:人形が、語りはじめるなどというと、ちょっと気味が悪い気もするのだが、このりかさんは気だてのいいお人形だった。
りかさんと暮らすうちに今まで知らなかった家庭のこと、おばあさんのこと色々なことが見えるようになっていく。

月神の浅き夢

著者:柴田よしき
出版:角川書店
初版:1998.01.30.
紹介:RIKOシリーズ第3弾
美男子の独身刑事ばかりを狙う連続猟奇殺人。
首を吊して、電動ノコギリで手足を切断するという残忍な手口。犯人は?犯行の動機は?子供を持つ刑事緑子が、警察内での差別、偏見の中で事件に迫る。仕事と家庭・刑事と育児・緑子にとってかけがえのない物とは?女性なら誰しも悩む問題にはたして緑子の出す結論は?
コメント:・警察内部での女性の立場・女としての生き方・これがこの本のおもしろさだ。
もちろん事件の解明、誤認逮捕により狂わされる、罪なき人々の人生。そして刑事の苦悩。RIKOにますます磨きがかかってきた。

孤独の歌声

著者:天童荒太
出版:新潮文庫
初版:1997.03.01.
紹介:凄惨な連続殺人が発生した。一人暮らしの女性たちが監禁され、全身を刺されているがレイプの痕はない。
被害者の一人が通っていたコンビニでの強盗事件を担当した女性刑事は、現場に居合わせた不審な男を追うが、突然彼女の友人が行方不明に・・・・・・。
孤独を抱える男と女のせつない愛と暴力が渦巻く旋律のサイコホラー。
(裏表紙より引用)
コメント:最初は、なんて荒涼とした精神なんだろう・・・この心の奥に何が隠されているのだろうと、不気味な感じがしました。
主な登場人物は、3人。コンビニ強盗犯を追う女性刑事、朝山風希。コンビニでバイトをしながら、自分の歌を歌い続ける、潤平。そして、連続殺人犯。それぞれが抱える、過去の生い立ち、心の傷。
とても辛い話だけど、最後は、ちょっと救われる気分でした。今は、潤平の歌を聴いてみたい気分。

水の戒律

著者:フェイ・ケラーマン
出版:創元推理文庫
初版:1993.04.23.
紹介:夏の闇をついて一件のレイプ事件が発生した。現場は、地元民が殆ど足を踏み入れることのないユダヤ人コミュニティ。
厳格な戒律に従って敬虔な毎日を送っていたはずの彼らが、なぜこのような事件を引き起こしたのか?
立ちはだかる宗教の壁を前に、未成年犯罪担当のデッカーは困難な捜査を強いられるが・・・・。
マカヴィティ賞最優秀処女長編賞に輝く、スリリングなデビュー作。(裏表紙より引用)
コメント:最初、ユダヤの・・・・とあったので、ちょっと二の足を踏んだのですが、ユダヤの人の生活や信仰。それと彼らが受けている迫害を、わかりやすく描きながら、事件が進んでいくのね。事件の解決や、ラブストーリーも面白かったけど、私にとっては未知の世界だった「ユダヤの生活風習」が一番興味深かった。
カタカナは苦手!と思っていたけど、これは全然そんなことはなかったです。

ガニメデの優しい巨人

著者:ジェイムズ・P・ホーガン
出版:創元推理文庫
初版:1981.07.31.
紹介:木星最大の衛星ガニメデで発見された2500万年前の宇宙船。その正体を突き止めるべく総力をあげて調査中の木星探査隊に向かって、宇宙の一角から未確認物体が急速に接近してきた。
隊員たちが緊張して見守るうち、ほんの5マイル先まで近づいたそれは、小型の飛行体をくり出して探査隊の宇宙船とドッキング。やがて中から姿を現したのは、2500万年前に出発し、相対論的時差のため現代のガニメデに戻ってきたガニメアンたちだった。
前作「星を継ぐもの」の続編として数々の謎が明快に解明される。(扉より引用)
コメント:争い、競争、という意識を持たないガニメアン。彼らと地球人との過去の接触はいかなるものだったのか?
殺伐とした話が多い中で、ちょっと物足りないくらいに、心の優しい人類・ガニメアンに心ひかれます。
自分が地球人であることがちょっと恥ずかしい感じになってきた。(笑)続きの「巨人たちの星」も予約中です。

天国までの百マイル

著者:浅田次郎
出版:朝日新聞社
初版:1998.12.01.
紹介:羽振りのよい不動産屋の社長から一気に破産者となった主人公が家庭も失い、希望もなくしていた。幼い頃の貧乏暮らし、社会の中で成功者となっている兄姉。生活の面倒を見てくれる気のいいホステス「マリ」。そんなある日、母親の心臓が危なくなった。母親を救うために、百マイル離れた遠くの病院に希望を託す・・・。自分のすべての力を持って。
夢のような病院と、そこの医師団。彼を支えてくれた「マリ」の愛情。そして、離ればなれになった家庭は?母は助かるのだろうか?
懐かしのPPMの「500マイル」のメロディが聞こえてきます。
コメント:いかにも浅田次郎さんぽい雰囲気ですね。
とってもいいお話で、桃源郷?のような病院。主人公を助けてくれる友達、心臓の内科医、別れた妻、ホステス「マリ」こんな幸せがつづくはずがないじゃないか・・・とちょっとひがんだりして。
でもね、ここに出てくる「マリ」さんて、男の人(浅田次郎?)にとっては、理想の都合のよい存在なんじゃないかなぁ・・・女の立場としては、ちょっと辛すぎるなぁと思ったのでした。