ざけんなよ

著者:東京母の会連合会
出版:集英社
初版:2000.04.30.
紹介: 「非行に走った少年の寂しさを、あなたは理解できますか」警察に逮捕された「非行少年」からのメッセージ。
自らは選択しようのない環境(親.家庭)の中で、子供達が寂しさを訴えている。不良仲間や、悪い大人達に助けを求め、さらに自分を傷つけていく。親は子供達にとって、取替えのきかないものだ。
「逮捕時の少年の顔は、目のつり上がった猛々しいものです。しかし罪を認め、反省すると、すっかり子供らしい顔に戻り捜査官を信頼して色々と話すようになる子供が出てきます。これらのメッセージはそんな子供達のものです。身につまされる話がたくさんあります。」少年達と接した、少年課の捜査官たちの暖かいメッセージとともに、多くの人に送るメッセージ。
コメント:この本を読んだ日、ちょっと悪夢を見ちゃった。
私は、ぱりっとしたスーツを着こなしたキャリアウーマン風。自分の息子(小学校低学年)が、裸で保護されたと、連絡が入って、引き取りに行く情景・・・。うー!かなりショックだったんだわ。
大人が子供について書いた本は山ほどあるけど、少年達の生の声や、吐露されたものって、なかなか触れる機会がないですね。こういう本を読むと、どうもやっぱり、我が身と子供達を照らし合わせてしまう。ここに登場する子供達に幸せになって欲しいと、心から願います。

不登校の贈りもの

著者:前田祥子
出版:風媒社
初版:2000.03.01.
紹介:子供達が学校へ行くようになって、3年になる。ようやくあの時のことを、振り返って語ることができるようになった。それは私にとっても、自分の生きてきた道を、見つめ直すことであった。それは苦しいことに決まっている。でも、その作業の中で見つけ出してきたものを、それがたとえ私の弱さと傷口を人前にさらし出すことであったとしても、私は伝えていきたい。
 弱さを抱えて生きることが、恥ずかしいことだとは思わない。でも、弱さを隠して生きることは見苦しいことだと思う。弱さの奥にある優しさと真の強さを、私は信じていたい。「おわりに」より抜粋
コメント:3人の子供の不登校を、前向きに捉えてがんばってきた母親。子供が不登校から脱却したとき、そこに残された母は・・・私はてっきり、「不登校の子供」の話を書いたのだと思って読んでいました。だけど、本当はそうじゃなかったんですね。思わず我が身を振り返ってしまいました。

「少年A」14歳の肖像

著者:高山文彦
出版:新潮社
初版:1998.12.05.
紹介:私は新たに知りえた少年Aの両親の証言などをもとに、少年Aと彼の家族の姿を資料に従って忠実に再現してみようと思う。また、精神鑑定や審判を通じて得られた彼の内的世界を関係者の証言とともに奥深く巡ってみようと思う。そこには、今までわれわれがまったく知り得なかった新しい像が、おのずと結ばれてくるはずである。
 現行の少年法では、わが子がなぜ殺されなければならなかったのか、遺族は知ることができない。いま、あえて私が書こうとしているのは、それがこの事件に少なからずかかわってきたものの責務だと信じるからだ。序章「池のほとり」より
コメント:被害者の親でも、加害者の親でもない、中立の立場から書かれた本です。3冊を読んで、この事件の持つ本当の問題点が始めてよく分かりました。うまく感想が言えないけど、機会があったら読んでみてください。そう、「14歳・・・」なんだかね、あの少年が、ちょっと可哀想にも思えてきます。生きていくのって、難しいなぁ。

女優志願 母と娘の歩いた道

著者:忍足亜希子
出版:ひくまの出版
初版:1999.11.18.
紹介:映画「アイ・ラブ・ユー」主演女優。
ろう者である著者への、母親、家族からの愛。
成長期、ろう者としての自覚と悩み。そして今彼女は主張する。(解説より抜粋)
コメント:ろう者というハンディを持ちながら、健常者に媚びることなくろう者としての誇りを持った、一人格として生きていける。そんなバリアフリーの社会を目指す。そこには、強い姿・主張が見られた。
五体不満足の乙武さんと相通じる思いが伝わってきた。

著者:土師 守
出版:新潮社
初版:1998.09.15.
紹介:「神戸連続児童殺傷事件」の被害者の父による手記。
息子「淳」くんの生い立ちと、家族の生活。そして事件。犯人逮捕からマスコミによる、被害者へのプライバシー侵害。「少年法」の問題点などをつづる。
今、被害者側の当事者として、事件に対する真実の声を『私たち、被害者の遺族の心の軌跡』をここに表した。
コメント:この事件に関する本は去年「少年A・この子を生んで」という加害者の家族が出した本を読みましたが、とても納得して読むことができる者ではありませんでした。まさにこの親にしてこういう子が産まれたと思わざるを得ない、自己本位なものでした。
今回、「淳」を被害者側からの手記として読んで、こういった事件の陰に隠れてしまいがちな、マスコミの報道などによる、被害者の人権やプライバシーが侵害されるという二重の精神的被害。
また、「少年法」:単なる非行(万引きとか)と、重大な非行を同列に扱い、非行少年を保護しようとする法律によって手厚く保護される加害者など、多くの問題点があるということがわかった。被害者の家族の二重三重の苦しみ・悲しみを思うと、本当にやり場のない憤りを覚える。

豊饒の地 上下

著者:フェイ・ケラーマン
出版:創元推理文庫
初版:1995.09.29.
紹介:(上)深夜。丘陵地帯を車で流していたデッカーは、不振な動きに目をとめた。甲高い泣き声に導かれ、彼が行き着いたのは深閑とした新興団地で一人でシーソーに乗って遊ぶ、幼子の姿。性別は女、身につけたパジャマは血まみれだったが、虐待を受けた形跡はなく、翌日行われた聞き込みでも、身元を知る者は現れない。これはいったい・・・・?
(下)発見された団地でないとしたら、赤ん坊はどこに住んでいたのか。試行錯誤を経て、デッカー達はついに一軒の家に到達したが、そこに待ち受けていたのは凄惨な四重殺人の現場だった。粘り強い捜査活動の果てに焙りだされた歪んだ心の形とは・・・?奥深い謎を追いながらも、愛するリナの身を気づかう刑事デッカー。エモーショナルかつ猥雑に語られる。(裏表紙より引用)
コメント:この話の中には、3つのお話しが同時進行している。
・ひとつは身元不明の女の子と4重殺人事件。
・ふたつ目は、デッカーの旧友のレイプ傷害疑惑事件
・そして3つ目が、デッカーとリナの一連のラブストーリー。
一番のメインになる「殺人事件をめぐる警察小説としてのおもしろさはもちろんだが、やはり一番の基にあるのは、リナとデッカーの関係がどう進展していくかということだ。
私たちにはなかなかわかりづらい、アメリカが抱える様々な思想や宗教、戦争そして社会問題。しかしそこがまたこの本の面白さのひとつなのだと思う。

微笑みがえし

著者:乃南アサ
出版:KKベストセラーズ
初版:1991.08.05.
紹介:中高時代からの友達だった4人組。10年後、それぞれの夢や希望は、様々な形に変わっていった。女たちの見栄・嫉妬・裏切り・背徳・ねたみ・・・・。笑顔の裏にかくされた心は絶対に人には見せられない。
アイドルとしてデビュー。結婚引退して、再度テレビに復活する友人のまわりで仕組まれる、様々な策略・・・・。彼女の運はつきたのか?
コメント:怖い話ですねぇ・・・。学生時代の友達と連絡を取りたいと思っていたのですが、この本を読んでちょっと手が止まってしまいました。女の友情なんて、やっぱり無いのかなぁ?

空飛ぶおばあさんしあわせぼけの話

著者:草川八重子 え:草川倫子
出版:本の泉社
初版:2000.01.20.
紹介:母のことをこんなかたちで書く日が来るとは夢にも思わなかった。自分の母が痴呆になるなど、思ったこともないから当然だろう。「なにかおかしいわ」といってトイレにいき、でてきたときには脚がたたなかったという。幸い妹の出勤前で、救急車を呼んで病院にかつぎ込んだ。その後はここにしるした通りである。「あとがき」より
コメント:こういった、痴呆や介護の問題は色々と大変なことがたくさんあると思うのですが、こんな風な気持ちで、接することが出来たらいいなぁっておもいました。
気持ちの持ち方、受け止め方も重要ポイントですね。確かに、実際の問題となれば、こんな優しい気持ちだけではいられない様々な問題が発生してくるでしょうね。
だけど、少しでも、その人の気持ちに添ってあげられるようでいたいと思います。少なくとも、今のうちはね。重いテーマを扱っているはずなのに、なぜか幸せな気分になってしまうのは、とても不思議です。

小さい犬の生活

著者:津田直美
出版:中央公論新社
初版:1999,11.18.
紹介:人間と暮らす犬必読!犬の食生活、犬の鼻道楽、犬の旅、人間の習性など、家庭犬の毎日に必要なすべてがわかる『犬の生活』、より豊かで充実した犬生への手引き『犬の学問』。ふたつの名著が一冊で楽しめる、小さな犬による犬たちのための小さな絵本。文庫判のみの「おまけ」も収録。(裏表紙より引用)
コメント:つまり、犬から見た「犬の生活」人間観なんですね。
犬を飼ったことのない私が読むと、「へーそうなんだ?」ってビックリすることもいっぱいだけど、かわいい挿し絵がたくさんあって、思わず犬を飼ってみたくなりますね。
もちろん犬好きの方にとっては、何とも嬉しい本なんじゃないでしょうか?ちょっと幸せな、優しい気分になれる一冊でした。

続岳物語

著者:椎名誠
出版:集英社文庫
初版:1989.11.15.
紹介:シーナ家の長男、岳少年。オトコの自立の季節を迎えている。父子の濃密で優しい時代は終わろうとしていた。ある日、エキサイティングなプロレスごっこで、ついに岳は父の体を持ち上げたのだ。ローバイしつつも、息子の成長に一人うなずくシーナおとう。カゲキな親子に新しく始まった、キビシクも温かい男の友情物語。(裏表紙より引用)
コメント:ヒト岳と犬ガク。小学生から中学生へ自立した少年と、それを頼もしくまた少し寂しげに見守る父の姿。家族の形。そして何よりヒト岳を取り巻く、様々な人々との友情とオヤバカのお話。
なかなかフツーの親子関係からみるとかなりぶっ飛んだ親子だが、岳少年が成長して自立していく様を読んでいて、我が子の自立を阻んでは行けないなぁ・・・と、深く反省したりしています。しかし、岳くんは思いっきり逞しい野生児ですね。今はどんな大人になっていらっしゃるのかしら?