著者:浅田次郎
出版:文藝春秋
初版:1997.10.30.
紹介:*「月のしずく」工場の荷役をやっているしがない独身男の前に現れたのは、ベンツから降りた怒った女だった。その夜から、男と女の奇妙な時間が過ぎた。女は前の男からもらったコルムの時計をはずして、六千八百円の時計を腕にはめるようになるのだろうか・・・
*「聖夜の肖像」クリスマスの夜には出かけない・・・・・・。それは過去の思い出が今も忘れられないからだ。だけどその年のクリスマス。街で出会ったのは、モンマルトルで別れた似顔絵描きだった。夫の愛と、似顔絵書きの男・・・。彼女の心を縛り付けていたものがその時ほどけはじめた。そして20年間心を開けなかった夫と今の幸せをやっと愛することができるようになった。
*「銀色の雨」住み込みの新聞配達を飛び出して、転がり込んだ先は知り合いの女の部屋だった。姉弟と偽って暮らす女に、警察に追われたヤクザとの生活が始まった。「いつも迷惑をかけてしまうんだ・・・」男の言葉に、彼は・・・
*「瑠璃想」自分の生まれ故郷の街をカメラマンとふたり訪れた。紅林・・・。その土地に隠された自分の子供の頃の記憶がよみがえる。妻・愛人・その結婚相手・・・。今自分があるべき姿を考える。
*「花や今宵」30歳の誕生日。誠意のない上司との不倫に疲れた女と、キャリアウーマンの婚約者が実は常務の女だった男がであった。酔って寝過ごした終電車の駅。降り立ったそこは、携帯電話の電波も届かない場所だった。「うそつき・・・・」
*「ふくちゃんのジャックナイフ」ブラジル移民の夢を持つふくちゃん。ポケットにジャックナイフを忍ばせ気分は石原裕次郎。彼が助けた家出娘すみ子。ブラジルへの旅立ちのときふくちゃんはどうしたか?そして、彼のジャックナイフは、40年もたった今僕の机の引き出しの中にある。
*「ピエタ」幼い頃母に捨てられたのに「ずっといい子にしていれば、迎えにきてくれる」と信じ続けた私。ずっといい子にしていたのに、幸せの目前で逃げ出した私。みて!今、私はちっとも幸福なんかじゃないのよ・・・・・。屈折した少女の心の継母を求め続ける女と、そんな女をそっと見守る男「リー」。母と別れるときわに渡された手紙の束は、遙か昔日本から送り返された、手紙だった。少女の心は今とけはじめた。(これは私の忘備禄的メモです)
コメント:「月のしずく」「聖夜の肖像」「ピエタ」は身勝手な女とバカ正直な人の好い男のお話しね。こんな男が世の中にいるのかしら?なんて思ってしまう。どのお話しも哀愁があるけど、「花と今宵」の男と女の突っ張り合いがなかなか好きだったわ。
著者:北村薫
出版:東京創元社
初版:1998.04.20.
紹介:ご存じ「円紫さんと私」シリーズ。卒業を間近に控えた私が気になる小さな謎。小学校の校長先生がなぜエロ本をいっぱい買い込んだか?「山眠る・・・・」
大学を卒業し、出版社に勤めるようになった私。曾祖父の日記の中に見つけた文字列の意味するものは?そして、私にもそろそろ気になるヒトが登場する気配も感じられる。
コメント:俳句・落語・・・・忠臣蔵。
数多くの文学や芸能をひも解くようにして話が進む。本好きにはたまらないストーリーだ。私の時間が経過するに連れて、その友人達もそれぞれの道を歩み出す。その道のりも読者の関心のひとつだ。
ちょっと見逃してしまいそうな小さな不思議が、円紫さんの目を通せば、たちまち霧が晴れるように、そこに真実の姿を現す。また次の作品が楽しみです。
著者:北村弥枝
出版:星雲社
初版:1998.12.08.
紹介:「人間としての正しい生き方」とはどんなものだろう?10歳の頃から強い興味を抱き、心の問題に関する話を熱心に聞いた。結婚後、妻が夫を「主人」をして尊ぶことで、子どもがよい方向へ変わることを自ら体験し、これをきっかけに心の問題についての考察を深めていく。
「妊娠中の母親の思いが、子どもの人生に大きく影響する───」といった心を中心とした視点で、いじめや不登校・正しい夫婦のあり方などを語る。
高校の教員として教育現場にしばらくいたころ、予想外の行動をとる生徒達の姿に何度も接しました。同時、わたしはその原因を生徒の中に見つけようとして袋小路に入っていました。
本書を読んで、幼い頃から子どもの無意識のレベルにインプットされてきた母親の想い(エネルギー)に大きな原因があったことを知り納得しました。著者はエネルギーと言う言葉を独特の意味で使われていますが、母親が持つ想いによって、夫や子どもにプラスにもマイナスにもエネルギーが流れ出て、様々な影響を与えていることが分かりました。(表紙カバーより、「推薦の言葉」驫木裕子)
コメント:いま子どもや家族のことで悩んでいる人にとって、この本は福音書になるかもしれない。
またある人にとっては、どこか納得のいかないものであるかもしれない。
私個人としては、チョット抵抗のある部分もあるが、根本的なところで共通理解ができるかもしれない。
「自分が変わらずに、相手を思いどおりに変えようとすることは出来ない。変えることができるのは、自分自身だけだ。相手を変えようと思ったら、まず自分自身が変わる努力をしよう。」
著者:大石静
出版:飛鳥新社
初版:1992.08.09.
紹介:脚本家・大石静さんのエッセイ集である。
彼女の女子校時代。恋愛観、仕事・生き方。教育問題!?主婦恋愛・・・男友達から嫁事情まで・・・
NHKの「ふたりっ子」をはじめ「バンサンカン・結婚」「おとなの選択」など、のどラマの脚本を手がけた、彼女の素顔が見えて面白い。
コメント:立場はまったく違うんですけど、何となく共感しちゃう部分も多くて、嬉しくなっちゃいました。
第4話の「別れた男」のとこなんか、ウン、分かる分かる・・・って。
第17話「言葉をつくせ!」も、最後のところがそうそう!って思いました。何もいわずにわかってくれるなんてある分けないよね。やっぱり言葉を尽くして相手に伝えなきゃわかりっこないって!
こっちの本は、中3の娘が読んだら結構面白いかも・・・受験勉強の気分転換にどうかな?早すぎ?
著者:椎名誠
出版:集英社
初版:1989.04.25.
紹介:多分昭和30年代の懐かしい時代。
貧しい時代・珍しかったテレビ・そろばん塾・ハーモニカ・病気の少女・そして輝かしい少年達の黄金時代・・・・。少年の小学校5年のひとこまのお話しです。
コメント:なんだか懐かしい時代を彷彿とさせて、ホッとしますね。少年の小学生時代がチョットよみがえる。私もこの中の「白い手」のところが良かったです。
夏休みに。小6の娘にすすめてみようかなって思いました。
著者:スティーブン・キング
出版:新潮文庫
初版:1997.07.01.
紹介:ジョージア州の老人ホームで余生を送るポールが、生涯の中でもっとも忘れがたい1932年の出来事を回想しながら書いているこの物語も、そろそろ終わり───ジョン・コーフィの処刑が目前に迫った時、ポールは恐るべき真実を知った。そして・・・・・・。死刑囚舎房で繰り広げられた恐怖と救いと癒しの物語もいよいよ完結。分冊形式ならではの幾重にも張られた伏線と構成が導く感動の最終巻。(裏表紙より引用)
コメント:いよいよ完結編!
明らかにされる真実。コーフィの手による悪い奴への処刑?
真実は、グリーンマイルの中だけにある。
ジョン・コーフィは・・・J.C・・・そうだったのか?
キングのホラー・刑務所という設定で、ドキドキしながら読んだのですが、これはまたチョット違った趣で、私にも充分楽しめました。せっかくのこの本ぜひ、一冊ずつ期間を開けて読むのをおすすめします。
著者:スティーブン・キング
出版:新潮文庫
初版:1997.06.01.
紹介:死刑囚ジョン・コーフィは、少女殺しの犯人ではないかもしれない。それにコーフィには奇跡を起こす不思議な力がある───ドラクロアの鼠を生き返らせたのを目撃していた同僚の看守達は、ポールの説明を信じた。そして脳腫瘍で死に瀕している刑務所長の妻を、コーフィに治療させるという計画を実行に移した。だが、その癒しの手が効力を表した夜が、悪夢の始まりだったのだ・・・・・・。
(裏表紙より引用)
コメント:いよいよクライマックスが近づいてきた。
コーフィの奇跡・・・彼はなぜすべてのことが説明される前から分かっているのだろう?
真実は、彼の中にあるのか?
あー!このあとコーフィは?ポール達の運命は!?
著者:新保裕一
出版:集英社
初版:1999.09.10.
紹介:調査員サムが依頼された仕事は、一人の日本人を捜しその居所をつかむことだった。手がかりは2枚の写真。しかしその男は、にこやかに微笑みながら握手をするように、平然と人を殺すむじゃきな犯罪者だったのだ。
「突然姿を消した同居人は、なぜ連絡をくれないのか?」
「幼い子どもを殺された親は、その後どのように暮らしていたか?」
依頼主は誰か?その真意は?
親が子どもを殺そうと思うとき・・・・
コメント:ボーダーラインって・・・なんだったのだろう?
人種のるつぼ・アメリカ社会で生きる様々な人たち。あらゆる犯罪・・・
しかし、なぜサムはサニーを殺さなかったのだろう?
著者:天童荒太
出版:新潮ミステリー倶楽部
初版:1995.11.20.
紹介:常軌を逸した連続大量猟奇殺人。犯人は崩壊した家族の子どもなのか?
父親の愛を得ることなく大人になった刑事は、気づかないままに自分の家族を同じ道に導いていた。人との深い関わりを避け家族を持つことにおそれをいだく美術教師。
他人の悩みのために、自分の子供を犠牲にしてしまった教育者。
そして、病んでいく家庭。傷つけられているのは子供なのだ・・・。
コメント:家庭ってなんだ?家族のありかたってなんだろう?
親が子に繰り返す児童虐待や、トラウマが引き越す家族の遺伝。
誰もが自分のうちだけは大丈夫、きちんとさせようと思うのだが、気づかないうちに蓄積された心の闇が、子供達の精神をむしばみはじめる。私の子育ては、大丈夫だったろうか?
家族の崩壊・こんな本を子供に読ませたら、将来を悲観してしまいそうでとてもすすめられない。
事件は最悪のところまで進むが、地獄の向こう側に、訪れた幸福が心地よい。
ラストはかなり不気味ですが・・・・
この話の舞台が実は近所なのです。土地勘があるからけっこう恐ろしいですね。「シロアリの駆除」はちょっとパスしたい気分です。
著者:貴志祐介
出版:角川書店
初版:1999.12.25.
紹介:阪神大震災の被災地で、ボランティアをしていた由香里は相手の感情を読みとる能力を持っていた。そこで出会った少女千尋は、心の中に13人もの人格を持つ多重人格だったのだ。
臨死体験を持つ千尋は、そのころから様々な人格を持つことで自分を保ってきた。
両親との死別、叔父夫婦の虐待。
千尋が大切にしている、漢和辞典と「雨月物語・春雨物語」、13人の名前との関連は・・・「ISOLA」とは?
千尋のまわりで起きる、突然死。その謎に迫る。
コメント:由香里自身の人との関わり合い。さらに千尋の多重人格・・・
ストーリーのおもしろさに、思わず引き込まれて一気に読み上げてしまった。
最後は、「ISOLA」が愛によって救われることで、なかなかの終わり方だと思ったのだが、その後が・・・・ホラーなんですね。
私としては、その部分がちょっと気になった。うーん、だって千尋が救われないんだもの・・・・。
鈴木光司のホラー系と、ちょっと似ているような気がするけど、彼のは救いや、底辺に流れる父性愛があるから好きなんだよね。