著者:図子慧
出版:角川書店
初版:1997.09.30.
紹介:女教師の忘れたい過去。昔の恋人とその友人が、人工知能を介して再会する。研究の内容を知らされぬうちに人工知能との学習交流をはじめるのだが、人工知能がその制作者とだぶりはじめる。
次々と与えられた課題をこなす人工知能が果たした、最後の課題は・・・・・
3人の男女のもろくせつない愛を描いた意欲作。
コメント:ストレートに表現されない愛。硬質な愛の表現にいつも女は翻弄される。愛はいつも何か別のものに姿を変えて存在するのか?
「図子 慧」の名はずっと前に講談社のコバルトで読んだ記憶があり、すごく印象的でした。特に彼女の描く「男の子」はちょっと硬派で異質な感じがしていました。それで今回思わず手が伸びた1冊です。
[innocent]は、「純真な」とか「罪のない」という意味でした。
著者:鈴木光司
出版:新潮社
初版:1990.12.10.
紹介:古代に離ればなれになったひとつの種族が、精霊に守られて再びひとつになろうとする。長い年月、様々な世代を超えて受け継がれていくふたりの思いが、現代によみがえる。
精霊に導かれ、守られ、太古の思いが今再びひとつになる。
コメント:壮大なロマン。「りんぐ」「らせん」とは趣が異なるが、作者の根底に流れる「子ども」と「妻」への思いがそこかしこに見える。
それと、生命が再生するイメージとして「暗い穴の中の水からはい上がる。」という情景が共通しているのが興味深い。作者に何かトラウマでもあるのか?
著者:鈴木光司
出版:角川書店
初版:1995.07.31.
紹介:観察医の安藤が解剖した、友人高山竜治の死体から根絶したはずの「天然痘ウィルス」が発見された。竜治の腹から飛び出した数字はなにかの暗号なのか?同じ症例で死んだ人々に共通するものは何か?調べるうちに「見たら一週間後に死亡する」というビデオの存在を知る。ビデオテープはどこへ行ったのか?見えないウィルスが姿を変え増殖する。気付かぬうちに安藤にも・・・・。
コメント:リングの続編。次から次へと押し寄せる思いがけないストーリー展開にワクワクする。「らせん」を読んで改めて「リング」の不気味さがひたひたと押し寄せる。
「やられた!」読み終えて、作者の策略にまんまとはまった自分がおかしくなる。
この話は怖くない。「ホラー」じゃないと思う。鈴木光司という人は、自分よりも「子ども」「妻」を大切に思っている人のような気がします。
著者:山田詠美
出版:講談社
初版:1997.05.25.
紹介:山田詠美のエッセイ。姪のかなちゃん、夫のCD、それぞれの家族の愉快なエピソードの中には、作品には見えない素顔のポンちゃんが見え隠れする?
(「小説現代」95年8月号~97年3月号に掲載されたものです。)
コメント:楽しい、なんと言っても、山田詠美の人間の見方がいい。好きなものは好き、嫌なものはいや。あんまり他人にこびたりしないところは読んでて気持ちがいいです。
この本を読んで、先月読んだ「4U」の中の一編が記憶の中にでてきました。「子どもを永遠にちっちゃな子どもだと思っているマミィ」というのは、ダンナ様のお母さんのことだったのです。どうもこの話だけが、他の話とは違和感があって気になっていたはずです。
著者:川端裕人
出版:文藝春秋
初版:1998.10.10.
紹介:マンションの一室での爆発事故。それはテロを目的とする小型ミサイルの爆発なのか?宇宙担当記者の高野は事件の写真の中からロケットの姿を見いだす。この事件のウラにあるものは何か・・・・それは高校時代の記憶を思い出させた。高野が追いかけたその先に彼を待ち受けていたものは・・・・
かつての宇宙少年たちの夢とロマンス。それぞれの思惑をのせてマーズ18号は宇宙へ飛び立った。
コメント:第15回サントリーミステリー対象優秀作品賞受賞作。
これってミステリーなの?どちらかというとSF?読後は明るい気持ちになれます。「単なるノーテンキな道楽者の記者」となった主人公の高野君は、いまいち自分が見えてないなーと笑えます。まあ人のことは笑えないけど。
個人的には序盤のロケット開発史や技術説明は、全体としてみれば下地として必要なんだけど、ちょっと読むペースが鈍りました。
それとただひとりの女の子「純子」の書き方には、存在感が感じられない。
著者:鈴木光司
出版:角川ホラー
初版:1991.06.
紹介:同日の同時刻に苦悩と驚愕の表情を残して死亡した四人の少年少女。雑誌記者の浅川は姪の死に不審を抱き調査を始めた。
そして今、浅川は一本のビデオテープを手にしている。少年たちは、これを見た一週間後に死亡している。浅川は、震える手でビデオをデッキに送り込む。期待と恐怖に顔を歪めながら。画面に光が入る。しずかにビデオがはじまった・・・・。
恐怖とともに、未知なる世界へと導くホラー小説の金字塔。
コメント:ホラー小説初体験!なんとなく敬遠していたのですが、ついに読むことにしました。とぎれとぎれに読むよりも、一気に読んだ方が怖くないみたいです。
ストーリーとしては、思いがけないどんでん返しもあって、おもしろく読めました。
でも、やっぱりホラーは苦手みたい(笑)
著者:山田詠美
出版:角川書店
初版:1987.05.06.
紹介:ある時、街ですれ違った男の上着の中の匂いを嗅いで、私は昔の男を思いだして道の真ん中で泣きたくなる。ある時、バーで流れる黒人音楽は特定の男を思い出たせて私を泣かせる。嗅覚があってよかった。五感が正常でよかったと、神様に感謝するのはこんな時。そして、恋物語を泣かずに書ける自分の理性にも感謝する。【著者のあとがきより】
コメント:これも短編集。やっぱり山田詠美の感性はいいなあと思います。女を愛する男たちがとっても素敵に描かれている。彼女がそれだけ男たちを愛していたってことの裏付けなのかもしれない。もっとはやく山田詠美を読めばよかった。
著者:辺見庸
出版:共同通信社
初版:1994.06.08.
紹介:人々は今、どこで、何を、どんな顔をして食っているのか。あるいは、どれほど食えないのか。ひもじさをどうしのぎ、耐えているのだろうか。日々ものを食べるという当たり前を、果たして人はどう意識しているのか、いないのか。食べる営みをめぐり、世界にどんな変化が兆しているのか。うちつづく地域戦争は、食べるという行為をどう押しつぶしているか・・・・それらにふれるために、私はこれから長旅に出かけようと思う。
コメント:読み終えるのに1週間かかりました。ひとつひとつの話が重く心にかかってくるものが多く、次から次へと読み進むことができなかったのです。日々当たり前のように無感動に食事をする私にとっては、かなり衝撃的なことも多かったし、知らないこと、考えたこともないことも多く、色々と考えさせられました。
この本は「丸山リスト.2位」※「丸山リスト」は中1の娘の担任(国語科)の先生が98年に読んだ本のベスト10です。
著者:小林深雪
出版:講談社X文庫
初版:1992.03.05.
紹介:通学途中の電車で見つけた、自分の理想にぴったりの素敵な男のコ。幼なじみでケンカ友達のクラスメート。ふたりの間で心が揺れる主人公・優恵の前に、なんと「好き」って言ってくれる別の男の子まで現れて・・・!?
さあ恋のゆくえは、どうなるの?
涙と笑いがいっぱい!ときめきの1年間の恋の記録を、優恵ちゃんの日記形式でお届けします。あなたと同じように恋に悩む女の子のダイアリー。いっしょに覗いてみませんか?、
コメント:小林深雪さんの本は、乙女チックな少女小説。たまにはこんなほのかな恋心も可愛くていいなぁ・・・
著者:日向章一郎
出版:集英社コバルト
初版:1992.10.10.
紹介:慎吾は中学2年生。野球部のエースだったが肩を壊し、当分活躍できそうにない。むしゃくしゃして多摩川べりをさまよううちに慎吾は同じくクラスの菜摘と出会い、つき合うようになった。そんなとき、二人の前に頼朝が現れた。川に潜って懸命に何かを探す頼朝は、去年の夏に起こった女子高校生の自殺事件に何か関係がありそうで・・・・!?
実は菜摘みも去年の夏に、奇妙な恋を体験していたのだ!?
コメント:これも再読。ラブ・コメ・ミステリー。
日向章一郎の本を読んでいると、その時は10代の頃に気持ちがタイムスリップしてしまいます。