六人の超音波科学者

著者:森博嗣
出版:講談社
初版:2001.09.05.
紹介:六人の科学者が集う土井超音波研究所。そこに通じる唯一の橋が爆破され、山中深くに築かれた研究所は陸の孤島となった。
仮面の博士が主催する、所内でのパーティの最中に死体が発見される。招待されていた瀬在丸紅子たちは真相の究明に乗り出すが・・・。
森ミステリィの怜悧な論理が冴えるVシリーズ第7弾。
コメント:今回は、まあなるほどと納得。ある程度の予測は付いたけど、例によって張られた、いくつもの伏線には、全く感心させられる。
だから、また次を読みたくなっちゃうのね。

晩鐘 下

著者:乃南アサ
出版:双葉社
初版:2003.05.20.
紹介:事件を追いかけた新聞記者が、偶然出会った加害者の家族。
事件の当事者ではないのに、その家族は世間の目にさらされ、普通の生活を送ることが出来なくなる。事件は風化し忘れ去られても、その家族はいつまでもその影響を深く引きずって生きていく。
風化した事件のその後。使命感に燃え取材し記事を作ることにより、それまでの思いから救い出されるものもいるが、記憶を掘り起こすことにより、ひっそりと生きてきた者から、生きる力を奪い取ってしまうこともある。そして、隠されていた真実をその記事によって知ってしまう者がいる。記事にすることが、意義のあることだったのか?報道の意味。そして、想像もしなかった記事の影響。建部は・・・・
コメント
大輔がどう変化していくのか、それがひたすら怖かった。真実を知ったとき彼が選んだ道はあまりにも辛く、悲しい。窓の向こう側の本当の家族になれたらいいのに。
そして建部は、一生心に重荷を背負って生き続け
コメント:

晩鐘 上

著者:乃南アサ
出版:双葉社
初版:2003.05.20.
紹介:殺人事件の被害者家族と加害者家族の苦悩を描いた小説「風紋」の続編。事件から7年後、悲劇の連鎖は終焉を告げているのだろうか。高校生だった少女は24歳になり、父や姉がそれぞれ新しい家族を作り事件を忘れていくことを許せない。信じては裏切られ自棄になり、ひとりぼっちのさびしさから逃れるために自分自身をすり減らしていく。
両親の顔も覚えていない幼子たちも成長するに付け、自分たちの置かれる境遇が普通とは違うことに気付く。心に癒しがたい傷を負った人々の物語。
コメント:分厚い本なのに、先が気になってどんどん読み進んでしまう。
家庭内で誰にも助けを求めることが出来なかった母親。母親を追い込んだ父と姉を、許すことが出来ない真裕子。誰も頼ることが出来なくて、誰にも必要とされていない孤独な気持ちは、彼女の生活をすさんだものにさせていく。
被害者の家族と加害者の家族。どちらも、悲惨だ。

レインレイン・ボウ

著者:加納朋子
出版:集英社
初版:2003.11.30.
紹介:高校時代のソフトボール部の仲間が死んだ。連絡をくれた人が葬儀に姿をあらわさないのは、なぜ?卒業後、7年が経ち、久しく連絡を取らなくなった部員たち。それぞれの心の中で、思い描く部員たちの姿から、あの頃見えなかったことが見えてくる。
姿を消した仲間はどこは消えた?そして、その理由は・・・。
コメント:ひとつの方向から見ただけでは、けして全体がわからない。卒業してバラバラになった部員たちの「今」が集まって、初めてそこに現れるのは?加納朋子らしいお話。
一人ひとりのお話が、独立した話のようで、それがひとつのものに集約されていくのが、なかなか面白かった。

世界の中心で、愛をさけぶ

著者:片山恭一
出版:小学館
初版:2001.04.20.
紹介:十数年前。初めての恋、大切な人が病気に犯されていく。恋人と結ばれることなく失ってしまったその喪失感の大きさ
コメント:映画にもなり話題になったので、読んでみたいと思っていました。
期待が大きかったので、ちょっと??違和感。
会話の端はしにでる、今は使わない言葉づかい。十数年前と言うよりも、二十数年前ではないか?
確かに「純愛もの」には違いないんだけど、それよりも、おじさんの懐古趣味的青春恋愛小説に見えてくる。時代的には、私自身とほぼ重なってくるのだが、それよりももっと古いセピア色の写真を見ている感じ。
現代の子どもたちが現実に接している今どきの恋愛事情を思うと、確かに「純愛」といえなくもないのだが・・・そのあたりが「憧れ」になるのかも。
泣けたのは、死んだところではなくて、おじいさんにお金を借りるシーン。
読んでいて思い出したのは「ある愛の詩」なんとなくイメージがかぶるのよね。

恋恋蓮歩の演習

著者:森博嗣
出版:講談社
初版:2001.05.05.
紹介:世界一周中の豪華客船ヒミコ号。乗客の持ち込んだ、天才画家・関根朔太の自画像を盗み出すのが怪盗に課せられた今回の任務であった。許された時間は那古野から宮崎までの一日半だけ。何故か小鳥遊練無たちも無賃乗船したまま航海は続いたが、突然の銃声の後、男性客の消失事件が発生。楽しい旅行は意外な方向へ。(裏表紙より引用)
コメント:

蹴りたい背中

著者:綿矢りさ
出版:河出書房新社
初版:2003.08.30.
紹介:「適当に班をつくって・・・」班に入れなかった余り者・孤独・さびしさ・・・
だけど、自分を偽って意に添わないグループに合わせて、無理して笑っているのはもっと嫌。自分の存在を消し去りたい、だけど本当に存在が消えてしまうのは怖い・・・。
アイドル「オリチャン」のかけらをひたすら集める、もう1人の余り物「にな川」と
自分の姿を重ね合わせ、またその異様さを嫌悪しながら、自分でもどうしていいかわからない衝動をもてあましている。
蹴っている背中は、実はにな川の背中であり、自分の背中なのかもしれない。
コメント:最年少芥川賞受賞作品と、話題になったのでちょっと楽しみにしていました。
自分と、その周囲・社会とうまく折り合いを付けていくことを偽善的に感じてしまう若さ。純粋と言ったら、妙に居心地の悪い気がするだろうか。
取りあえず、自分を偽り、周りに合わせ、周囲を味方に付けてから、自分の思う方向に動かそう・・・。用意周到・計算と打算・策略をめぐらせる者にとっては、あまり共感は出来ないだろうなぁ。

星の音が聴こえますか

著者:松森果林
出版:筑摩書房
初版:2003.10.10.
紹介:ある朝起きたら、音がなくなっていた・・・
十代での失聴、手話との出会い、聞こえない母親としての育児。
かけがえのない〈音〉の記憶と〈伝え合う〉ことの喜びを瑞々しく綴った処女エッセイ。目次/音が、消えた/手話の世界/聞こえない母親/泣き声が聞こえない/「ママ電車!」/ユニバーサルデザイン/他
コメント:自分の耳が聞こえなくなっていることに気付いたら・・・子ども心に沸き上がる不安。
突きつけられる現実・・・。心を閉ざしてしまいそうな現実を乗り越えて、手話や人と出会うことで、自分の世界をどんどん開いていった作者のパワーに圧倒される。
母親となり、子供とともに成長しながら、この人でなければ出来ない仕事もこなしていく。前向きに生きていく姿勢に力をもらえる気がする。

四季 秋

著者:森博嗣
出版:講談社
初版:2004.01.08.
紹介:手がかりは孤島の研究所の事件ですでに提示されていた!大学院生となった西之園萌絵と、彼女の指導教官、犀川創平は、真賀田四季博士が残したメッセージをついに読み解き、未だ姿を消したままの四季の真意を探ろうとする。彼らが辿り着いた天才の真実とは?『すべてがFになる』の真の動機を語る衝撃作!(裏表紙より引用)
コメント:犀川シリーズと、瀬在丸シリーズがいよいよ合体!?犀川先生って・・・!
いったいいつが現在で、過去なのか?
登場人物の相関関係と、年表をつくらないと・・どこかにないかしら?
それにしても、真賀田博士の死んでしまった娘の細胞はどうなっているのか?
そして、四季の存在は?
萌絵ちゃんと、紅子さんの対話が、なかなか興味深かったです。
その人が「扇風機」なのか?それとも「太陽」なのか?それは自分の認識。

魔剣天翔

著者:森 博嗣
出版:講談社
初版:2000.09.05.
紹介:航空ショーでアクロバット演技中のパイロットが撃たれ、死んだ。航空機は二人乗り。パイロットが座っていたのは後部座席。しかし、撃たれたのは背中から。犯人は一緒に登場していた女性記者なのか?衆人環視の中、成立した空中の完全密室。シリーズ最高何度の謎を、没落した名家の令嬢・瀬在丸紅子が解き明かす。(裏表紙より引用)
コメント:でた!「エンジェル・マヌーバ」これが「ねじれ屋敷の利潤」に出てくる魔剣の出所だったのだ。やっぱり、シリーズは順番に読まないと・・・
今回も、小さな謎がいっぱい。「暗号に隠された、名前はどこに?」「消化器でどうやってざる蕎麦をつくるのか?」「紫子さんの部屋を密室にしたカギの動きって?」
小さな謎に翻弄されてしまうと、大きな謎を見失ってしまう・・・。