著者:京極夏彦
出版:角川書店
初版:2003.11.30.
紹介:赤えいの魚:「恵比寿像の顔が赤くなるときは、恐ろしい厄災が襲う」霧の中にあると言われる、人には行けない戎島に、ひっそり建つ朱塗りの御殿。一白翁が語るのは。
天火:顔が光ると言う怪火。その火を収めた霊験ある六部の正体は?
手負蛇:蛇に祟られたのか?その家の者は不幸に命を落とす。塚に収められているのは蛇なのか?宝なのか?真相を知っているのは百介。
山男:山男は、獣なのか?人なのか?娘の姿が消えて、後、子どもを抱いて姿を現した。五位の光:抱かれた女の手から男の手へと渡された記憶。飛び立つ青鷺・・・。
風の神:百介の遠縁の娘小夜の母が殺されたのは?一晩のうちに百物語を語ると、怪事が起きるという。そこで仕組まれたのは・・・
コメント:維新後。怪しい話真相を聞こうと集まった山岡百介の庵で、百介が語ったのは・・・
世の中に怪しい話などないのだ。そこには必ず、理がある・・・。
短編が集まって、最期に大きな仕掛けが飛び出す。庵に住む百介も小夜も、かなり魅力的だ。
著者:宮部みゆき
出版:実業之日本社
初版:2003.11.25.
紹介:自転車に撥ねられ死んでしまった運転手の梶田氏。なかなかみつからない犯人を捜すために、娘が父のことを本にするという。
積極的に関わる妹と何故か過去を知らせたくない姉。梶田氏の過去に何があったのか?姉娘の記憶にある怖い記憶の真相は?
コメント:読んでいくうちに、「ああ・・・宮部みゆきだ!」長編とは言えない作品なので、そう深く入り組んだ話にはなっていない。かなりストレートだ。
年の離れた姉妹が何とも痛ましい。
著者:重松清
出版:光文社
初版:2003.08.25.
紹介:これが-、僕が出会い、見送ってきた「東京」。生きる哀しみを引き受けたおとなのための「絵のない絵本」。(帯より引用)
・マジックミラーの国のアリス:社会的に成功したヒーローは、実は転落を目前にしていた。学生の頃ひそかに通った「のぞき部屋」のアリスに会いたい・・・
・遊園地円舞曲:閉園間近の遊園地、ピエロから手紙が届いた。
・鋼のようにガラスの如く:世紀末のアイドル。子どもでもなく大人でもなく、男でも女でもない。彼女の魅力は一瞬の輝き・・・
・メモリー・モーテル:投稿された写真は何故掲載されなかったのか?
・虹の見つけ方:昭和を代表する売れっ子作詞家。彼の引退は・・・
・魔法を信じるかい?:疲れた、寂しい女たちが集まるバーには、マジシャンがいた。
・ボウ:企業の中で次第に自分をすり減らし、自分を見失っていく男。「ボウ」という漢字を思い浮かべてください・・・
・女王陛下の墓標:もうすぐ50歳の寂しい女王様。
・哀愁的東京:ホームレスが結婚するその新しい門出に・・
絵本が描けなくなった、元絵本作家が描いた「パパといっしょ」に関わってくる人達。
そして、離れていった家族。僕が描きたい絵本は・・・
コメント:悲しいねぇ。年代が近いせいもあるけど、なんとなく気持ちが分かってしまうのです。
著者:森博嗣
出版:講談社
初版:2001.09.05.
紹介:六人の科学者が集う土井超音波研究所。そこに通じる唯一の橋が爆破され、山中深くに築かれた研究所は陸の孤島となった。
仮面の博士が主催する、所内でのパーティの最中に死体が発見される。招待されていた瀬在丸紅子たちは真相の究明に乗り出すが・・・。
森ミステリィの怜悧な論理が冴えるVシリーズ第7弾。
コメント:今回は、まあなるほどと納得。ある程度の予測は付いたけど、例によって張られた、いくつもの伏線には、全く感心させられる。
だから、また次を読みたくなっちゃうのね。
著者:乃南アサ
出版:双葉社
初版:2003.05.20.
紹介:事件を追いかけた新聞記者が、偶然出会った加害者の家族。
事件の当事者ではないのに、その家族は世間の目にさらされ、普通の生活を送ることが出来なくなる。事件は風化し忘れ去られても、その家族はいつまでもその影響を深く引きずって生きていく。
風化した事件のその後。使命感に燃え取材し記事を作ることにより、それまでの思いから救い出されるものもいるが、記憶を掘り起こすことにより、ひっそりと生きてきた者から、生きる力を奪い取ってしまうこともある。そして、隠されていた真実をその記事によって知ってしまう者がいる。記事にすることが、意義のあることだったのか?報道の意味。そして、想像もしなかった記事の影響。建部は・・・・
コメント
大輔がどう変化していくのか、それがひたすら怖かった。真実を知ったとき彼が選んだ道はあまりにも辛く、悲しい。窓の向こう側の本当の家族になれたらいいのに。
そして建部は、一生心に重荷を背負って生き続け
コメント:
著者:乃南アサ
出版:双葉社
初版:2003.05.20.
紹介:殺人事件の被害者家族と加害者家族の苦悩を描いた小説「風紋」の続編。事件から7年後、悲劇の連鎖は終焉を告げているのだろうか。高校生だった少女は24歳になり、父や姉がそれぞれ新しい家族を作り事件を忘れていくことを許せない。信じては裏切られ自棄になり、ひとりぼっちのさびしさから逃れるために自分自身をすり減らしていく。
両親の顔も覚えていない幼子たちも成長するに付け、自分たちの置かれる境遇が普通とは違うことに気付く。心に癒しがたい傷を負った人々の物語。
コメント:分厚い本なのに、先が気になってどんどん読み進んでしまう。
家庭内で誰にも助けを求めることが出来なかった母親。母親を追い込んだ父と姉を、許すことが出来ない真裕子。誰も頼ることが出来なくて、誰にも必要とされていない孤独な気持ちは、彼女の生活をすさんだものにさせていく。
被害者の家族と加害者の家族。どちらも、悲惨だ。
著者:加納朋子
出版:集英社
初版:2003.11.30.
紹介:高校時代のソフトボール部の仲間が死んだ。連絡をくれた人が葬儀に姿をあらわさないのは、なぜ?卒業後、7年が経ち、久しく連絡を取らなくなった部員たち。それぞれの心の中で、思い描く部員たちの姿から、あの頃見えなかったことが見えてくる。
姿を消した仲間はどこは消えた?そして、その理由は・・・。
コメント:ひとつの方向から見ただけでは、けして全体がわからない。卒業してバラバラになった部員たちの「今」が集まって、初めてそこに現れるのは?加納朋子らしいお話。
一人ひとりのお話が、独立した話のようで、それがひとつのものに集約されていくのが、なかなか面白かった。
著者:片山恭一
出版:小学館
初版:2001.04.20.
紹介:十数年前。初めての恋、大切な人が病気に犯されていく。恋人と結ばれることなく失ってしまったその喪失感の大きさ
コメント:映画にもなり話題になったので、読んでみたいと思っていました。
期待が大きかったので、ちょっと??違和感。
会話の端はしにでる、今は使わない言葉づかい。十数年前と言うよりも、二十数年前ではないか?
確かに「純愛もの」には違いないんだけど、それよりも、おじさんの懐古趣味的青春恋愛小説に見えてくる。時代的には、私自身とほぼ重なってくるのだが、それよりももっと古いセピア色の写真を見ている感じ。
現代の子どもたちが現実に接している今どきの恋愛事情を思うと、確かに「純愛」といえなくもないのだが・・・そのあたりが「憧れ」になるのかも。
泣けたのは、死んだところではなくて、おじいさんにお金を借りるシーン。
読んでいて思い出したのは「ある愛の詩」なんとなくイメージがかぶるのよね。
著者:森博嗣
出版:講談社
初版:2001.05.05.
紹介:世界一周中の豪華客船ヒミコ号。乗客の持ち込んだ、天才画家・関根朔太の自画像を盗み出すのが怪盗に課せられた今回の任務であった。許された時間は那古野から宮崎までの一日半だけ。何故か小鳥遊練無たちも無賃乗船したまま航海は続いたが、突然の銃声の後、男性客の消失事件が発生。楽しい旅行は意外な方向へ。(裏表紙より引用)
コメント:
著者:綿矢りさ
出版:河出書房新社
初版:2003.08.30.
紹介:「適当に班をつくって・・・」班に入れなかった余り者・孤独・さびしさ・・・
だけど、自分を偽って意に添わないグループに合わせて、無理して笑っているのはもっと嫌。自分の存在を消し去りたい、だけど本当に存在が消えてしまうのは怖い・・・。
アイドル「オリチャン」のかけらをひたすら集める、もう1人の余り物「にな川」と
自分の姿を重ね合わせ、またその異様さを嫌悪しながら、自分でもどうしていいかわからない衝動をもてあましている。
蹴っている背中は、実はにな川の背中であり、自分の背中なのかもしれない。
コメント:最年少芥川賞受賞作品と、話題になったのでちょっと楽しみにしていました。
自分と、その周囲・社会とうまく折り合いを付けていくことを偽善的に感じてしまう若さ。純粋と言ったら、妙に居心地の悪い気がするだろうか。
取りあえず、自分を偽り、周りに合わせ、周囲を味方に付けてから、自分の思う方向に動かそう・・・。用意周到・計算と打算・策略をめぐらせる者にとっては、あまり共感は出来ないだろうなぁ。