著者:梨木香歩
出版:理論社
初版:2005.05.01.
紹介:ある朝 つばきが目を覚ますと、机の上に手紙がおいてありました。
「まじょもりへ ごしょうたい」
道路を渡って、つばきは森の奥深くに進み始めました。
そこには女の人がすわっていて…
時と場所を越えた不思議なまじょもりのお茶会が始まります。
コメント:絵本でしょうか?子供の頃の気持ちを思い出させてくれる、一冊です。
こういう世界を忘れないおとなでいたいし、子供たちにも大切にして欲しい時間ですね。
著者:青山やすし
出版:かんき出版
初版:2004.0カ.28.
紹介:・老いた親あるいは配偶者をどこに入院させるか?
・リハビリはどこでしてもらうか?
・療養ならどこがいいか?
・痴呆はどこで面倒を見てもらうか?
患者の立場で選んだ50の病院
99~2003年まで東京都の副知事を務めた青山氏が高齢福祉部長時代に、高齢者の病院や老人ホームを見て歩き、そのときに感じたいい病院の選び方。
コメント:義父が介護保険申請をする段になって、困ったことがある。「主治医」の欄に誰の名を書けばいいのか?某総合病院の内科にかかってもう数年。定期的に見てもらっていたが、先日けいれんで救急車による搬送は、「満床」を理由に断られてしまった。新たな搬送先は脳神経外科のある救急病院。しかしその先生は痴呆を扱うものの週2回しかこない。
しかも脳神経外科では「脳血管性の痴呆」の診断や予防には有効だが、痴呆の程度レベルの診断となると、精神科を受診することになる。
精神科で痴呆の進行を遅らせる薬…の処方箋をもらって薬局に行った。
ところが驚くべきことに、もう2年も前から某総合病院の内科で「同じ薬」を処方してもらい飲み続けていたのだ。
高齢者にとっての主治医。主治医となるべき医師のいる病院は、どこを選んだらよいのだろう?ほとほと困ってしまう。
本書は、緊急の救急病院の、その先の病院探しであるが、私にとっては人事ではない。少なくとも、今かかっているどの病院も痴呆対応入院は望めない。かろうじて精神科の医師が本書に紹介されている病院とのつながりがあるので、そこかな…?しかし、いくらこちらが気に入っても、空きがなければ、入院は受け入れられないのだし。
「家で面倒見れなくなったら、病院に入れてしまえばいい」と簡単に言う人もいるが、いろんなことを考えれば考えるほど、そうそう簡単にはかないことがわかってきた。
著者:梨木香歩
出版:新潮社
初版:2004.01.30.
紹介:池・庭・電灯・二階屋。友人の実家の家守をする、売れない学士・綿貫と草・木・花・獣また、仔竜・河童・人魚・竹精・桜鬼という、なかなかお目にかかれないものたちとの交歓。ふと出没する亡くなった友人・高堂との関係が、なんともいい。
ほんの百年ほど前の設定だが、こんな風景はまだ私が生まれた頃はその名残がまだわずかに残っていたような気がする。心を研ぎ澄ませれば、まだこういうものたちとのかかわるがもてたような…
コメント:目次に並ぶ、植物の名前。名前を見ただけですぐにわかるものも多い。サルスベリ・都わすれ・ダリヤ・ドクダミ・カラスウリ・竹の花・白木蓮・むくげ・紅葉・萩・ススキ・野菊・サザンカ・リュウノヒゲ・檸檬・南天・ふきのとう・山椒・桜・葡萄
けれど、名前は聞いたことがあっても、どんな植物なのかすぐには思い浮かばないものも多い。ヒツジグサ・ツリガネニンジン・南蛮ギセル・ホトトギス・ネズ・セツブンソウ・貝母。これは、検索してみました。ヒツジグサって睡蓮のことだったのね。
読み進むうちに、隣のおかみさんも、和尚も後輩の山内も長虫屋もダリヤの君もみーんな霧と共に消えてしまいそうなそんな不思議な気持ちになってくる。
全く違う話だが、夢枕獏「陰陽師」での清明と博雅が清明の座敷で庭を見ながら酒を酌み交わしている構図が目に浮かびました。
本の装丁もいいですねぇ。紬なのか?細い縦縞。手元に置きたくなってしまう一冊。
著者:横山秀夫
出版:講談社
初版:2003.08.15.
紹介:地方紙の新聞記者悠木は、最古参の「遊軍」。組織にも家族にも自分の心を開けない。自分が傷つくのを恐れているからだ。
登山仲間の安斉と切り立った衝立岩を登る約束をしたその日、あの未曾有の「日航ジャンボ墜落事故」が起きた。全権デスクを任された悠木は、山から逃げるように、事故記事と紙面の争奪戦に巻き込まれる。現場の若い記者たちと、社内の古参たちの間で思うように動くことができない。
一方安斉もその日、路上で倒れ意識をなくしていた。なぜ悠木を山に誘ったのか?なぜ山ではなく夜の街中で倒れたのか?
他人に触れられたくない生い立ちを持つがゆえに、温かい家庭を夢見て、家族を持ったのに、今や家の中に居場所はない。息子との壁を感じてしまう。
コメント:新聞記者としての経歴を持つ作者ならではの、臨場感がたまらない。
衝立岩に登っている今と、17年前のあの時が見事に交錯してラストはすがすがしい。
「クライマーズ・ハイ」=「興奮が乗じて恐怖心がマヒしてしまうこと」
そして、恐ろしいのはそのクライマーズ・ハイがとけたとき。心の中に溜め込んだ恐怖心が、一気に噴き出してくる。
著者:伊澤次男
出版:講談社
初版:2004.01.15.
紹介:老後は自宅を売って有料老人ホームに入ろう!と、多くの資料を調べ、考え抜いて入居した。「有料老人ホームを選ぶ生き方」
ところが、中に入ってみると、外側からはわからない様々な問題が出てきた「後悔しない有料老人ホームの選び方」
いろいろ考え、行動も起こしたが、結局3年4ヶ月で、老人ホームを退去した「早すぎた老い支度」
コメント:老後を考えるにあたって、どのように暮らしていくか?筆者の奮闘ぶりがうかがえる。
老後といっても、年齢や病気・ハンディなど、それぞれのおかれた状況によってベストは違ってくる。
老後の生活のために、どんなことを準備して心構えをしておいたらいいのか?いろいろと勉強になります。
著者:阿部和重
出版:朝日新聞社
初版:2003.10.30.
紹介:背の高い男は一人の農夫を殺した、母と祖母の恨みを晴らすために。それは「神町」とその住民への怨憎でもあった。
「神町」という名前にはそぐわない歴史が、その町にはあった。アメリカ軍の占領下「パンパン町」と称され、自宅を娼婦に貸し出す地元民。その中で勢力を伸ばした、田宮家と麻生家。それは戦後も独占的営業をする「パンの田宮」とラブホテルや娯楽施設の「麻生興業」として勢力を持ち続けていた。
2000年7月。処分場反対派の教師の自殺・自動車の事故死・一人の行方不明者。立て続けに3件の事件がおきた。しかしこれは、これから一ヵ月半の間に起きる悲劇的祭典の幕開けに過ぎなかった。
コメント:数多くの登場人物たちのそれぞれの視点から描き出された「神町」は、権力の癒着と横行・麻薬・盗撮・暴力に満ちている。親・子それぞれの世代に繰り広げられ、伝えられていく構図。その中で生活していく人々の悩み・崩壊していく家族の様子など、かなり厳しい。
上下2巻にわたる長編。しかも字が小さめ。巻頭の「主な登場人物」に並ぶのは総勢60名。これだけでもめげる。お願いだから「相関図」を付けて!という気分。途中、何度か放り出しそうになったが、読み終えてみれば、いろいろと考えさせられることの多い内容だった。普通に生きて生活していることが、ちょっと恐ろしい気分になってくる。
著者:小川洋子
出版:新潮社
初版:2003.08.30.
紹介:交通事故によって、それ以降の記憶を80分しかとどめることができなくなった「数学者」と、その数学者の家に派遣された「家政婦」と、その息子の「√(ルート)」
新しいことをまったくとどめない博士の頭の中には、膨大な数え切れない数学の知識が詰まっている。博士との会話は「数字」との対話だ。
他人との交流を結びにくい博士と家政婦親子が、「数字」の持つ魅力によって、新たな人間関係を紡ぎだしていく。その幸せな時間がかけがえのないものになっていく、たとえそれが明日の朝には、忘れ去られているとしても。
コメント:なんともいえない、暖かい、幸せな気持ちにさせてくれる本です。
このまま、博士との生活が永遠に続いて欲しいと思うほどでした、それだけに、中盤を過ぎるとそのあまりにも幸せな気分が、ふと不安になり、心騒ぐほどです。
こんなふうに、こころを紡ぐことができたら、どんなに幸せだろう・・・
「数字」の持つ魅力に、私までもが引き込まれてしまいそうだ。
巻末の参考文献(数学)をメモ(抜粋)
「はじめまして数学1.2」吉田武/幻冬舎
「数の悪魔」エンツェンスベルガー/丘沢静也訳/晶文社
「天才の栄光と挫折 数学者列伝」藤原正彦/新潮社
「数学者の言葉では」藤原正彦/新潮社
「フェルマーの最終定理」サイモン・シン/青木薫訳/新潮社
「放浪の天才数学者エルデシュ」ポール・ホフマン/平石律子訳/草思社
著者:大田仁史
出版:講談社
初版:2004.07.20.
紹介:外科医でもある著者が、自らの「老い」と母親の「介護」を通して、これからの「老いと介護」を考える。
1部.「老いのあり方を考えよう」
「痛みの共感」は、言葉に出して、思いやりを伝える→「言葉の持つ力」
自身のオムツ体験→「トイレで排泄すること」は基本的な尊厳
2部.「介護のあり方を考えるよう」
「ヘルパー3級取得運動」3つの利点
・自分が受ける介護サービスの質がわかる。
・人の世話をすることで他人への配慮やボランティア精神を培う
・介護予防への気配りができる
脳梗塞「寝たきりは寝かせ切りがつくる」「寝たきり防止は三日が勝負」
手厚い看護が、仇になる。
コメント:筆者も書いて書いているとおり、1部と2部で重なっている部分も多く、ちょっと話が回りくどい気もする。けれど、それを差し引いたとしても、勉強になることも多い。
「ヘルパー3級」勉強した方がいいのかな?
著者:桐野夏生
出版:新潮社
初版:2004.02.25.
紹介:世間の好奇の目にさらされる、少女誘拐・監禁事件の被害者。失踪した作家が書き残した原稿には、被害者としての事実が書かれていた。誰にもわかってもらえない・封印された記憶。犯人との意思の交流、ひたすら助けを待った隣人。
解放後「性的被害者」としてさらされる好奇の目。崩壊して元には戻らない家族。
作家として書き綴る「毒の夢」「男の性」原稿の中に潜まされる「あったかもしれないもう一つの話」原稿の中の事実と虚構。誰にも話さなかった彼女の「真実」とはなにか?
コメント:新潟の誘拐監禁事件を思い出させる。引き込まれて短時間で読み終えてしまった。
少女期に体験する「男の性」は、女性に多大なトラウマを植え付ける。
そして、それは親にも誰にもいえない、審の奥にしまいこまれ、彼女自身を形成してしまうのだ。こういう心理はわかるような気がする。
著者:小宮英美
出版:中公新書
初版:1999.10.15.
紹介:痴呆がおきてしまうのは仕方がない。家族が介護しきれなくなったときに、お年寄りを受け入れてくれるのはどこなんだろう?
多くの痴呆老人が病院を3ヶ月ことに転々とかわり、そのたびに新しい環境を受け入れられなくなって、痴呆がよりひどい状況に追い込まれていく。
お年寄りを管理する画一的な病院ではなくて、長期的に、ふだんの家庭での生活に近い状態で、お年寄りの持つ能力を引き出しながら、人間らしく生活を送る。それが可能になるのが少人数の「グループホーム」だ。
この本では、多くの痴呆老人のたどるケース・ケアの実態をもとに報告されている。
コメント:特に内臓疾患などを持たない、身体的には健康な高齢者が、痴呆という状態に陥ったときどういうケアが望ましいのか、考えさせられる。
いくつかの痴呆のケースが紹介されていて、本人の混乱・困惑ぶりが手に取るようにわかる。自分の居場所がないと感じる不安。
お年寄りが安心して生活できるようにするには、どうしたらいいのか?いろいろと考えさえられた。